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吹屋 ふるさと村

(ふきや むら)

ベンガラ色で統一されたノスタルジックな風景

吹屋は、岡山県高梁市成羽町に位置する地区で、江戸時代から明治時代にかけてベンガラ(酸化第二鉄)の生産で栄えた歴史的な町です。中国山地の山懐に抱かれたこの地域は、ベンガラ生産やその原料であるローハで巨大な富を築いた豪商たちによって作り上げられた町並みが広がります。赤銅色の石州瓦とベンガラ色の外観で統一された「赤い町並み」が特徴で、訪れる人々にノスタルジックな風景を提供しています。

歴史と伝統が息づく吹屋の町

吹屋は、江戸時代中期頃より幕領地として発展し、吹屋銅山を中心とする鉱山町としての地位を確立しました。幕末から明治にかけて、ベンガラの生産が盛んに行われ、町は繁栄の極みを迎えました。特に、銅鉱と硫化鉄鉱石を酸化・還元させて作られるベンガラは、日本国内で唯一の巨大産地として知られていました。

このベンガラは、美術工芸用の磁器の絵付けや漆器、神社仏閣の外壁塗装に広く用いられ、その赤褐色の輝きは当時の日本文化を象徴するものでした。吹屋集落に今も残るベンガラ格子や石州瓦による重厚な商家の町並みは、かつての繁栄を物語っています。

国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された町並み

吹屋地区、中野地区、坂本地区、下谷地区の町並みは、1974年(昭和49年)に岡山県の「ふるさと村」に指定され、1977年(昭和52年)には国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されました。現在もその美しい景観を保ちながら、多くの観光客を魅了しています。

吹屋の町並みは、一貫して赤銅色の石州瓦とベンガラ色で統一されており、その統一感ある風景は、江戸末期から明治にかけて吹屋の長者たちが後世に残した最大の文化遺産です。

豪商たちが築いた吹屋の町並み

全国各地で豪商が建てた豪邸は数多く存在しますが、吹屋の特異性は、個々の屋敷が豪華さを競うのではなく、町全体が統一されたコンセプトの下に建てられた点にあります。吹屋の旦那衆は相談の上で、石州(現在の島根県)から宮大工の棟梁たちを招き、町全体を統一感のあるベンガラ色で彩り、その結果、現在でも観光客を魅了する美しい町並みが残されています。

日本遺産に認定された「ジャパンレッド発祥の地」

吹屋は、令和2年(2020年)6月19日に文化庁の日本遺産として「『ジャパンレッド』発祥の地~弁柄と銅の町・備中吹屋~」に認定されました。これは、日本の歴史と文化に深く根ざしたベンガラ生産と、その象徴的な赤色が日本の伝統色として評価された結果です。

吹屋ふるさと村:ベンガラ色の町並み

標高550mの山あいに広がる「ふるさと吹屋村」は、格子や堀などすべてがベンガラ色で統一された町家が軒を連ねています。この町並みは、江戸時代から明治にかけて鉱山の地として栄えた吹屋での古き時代へとタイムスリップさせてくれる場所です。

旧片山家住宅:国の重要文化財

1759年に創業し、200年以上にわたり吹屋弁柄の製造に携わった旧片山家住宅は、その歴史的価値から国の重要文化財に指定されています。この住宅は、弁柄屋としての店構えを残す主屋と、弁柄製造に関わる付属屋が立ち並ぶ「近世弁柄商家の典型」として、その外観や内部の座敷、弁柄蔵など、多くの見どころがあります。

吹屋の代表的な家屋が見られる「郷土館」

ベンガラ窯元の片山浅次郎家が経営していた郷土館は、明治12年(1879年)に完成しました。島田網吉による入母屋型の建物で、吹屋の代表的な家屋として見学することができます。

明治時代の弁柄工場を復元した「ベンガラ館」

「ベンガラ館」は、江戸時代中期に全国で初めて吹屋で生産されたベンガラを紹介する施設です。明治時代の弁柄工場を再現し、当時の製造工程を見学することができます。

旧吹屋小学校:レトロな木造校舎

平成24年(2012年)まで使用されていた旧吹屋小学校は、現役最古の木造校舎として知られていました。この貴重な文化財建造物は、平成27年(2015年)から令和4年(2022年)にかけて全解体して保存修理が行われ、令和4年(2022年)4月21日に再公開されました。現在では、吹屋の歴史や文化、観光情報を発信する拠点施設として活用されています。

映画のロケ地にもなった「広兼邸」

広兼邸は、江戸時代後期に小泉銅山とローハ(硫酸鉄)の製造を営み、富を築き上げた大野呂の庄屋・広兼氏の邸宅です。200年以上の時を経た堂々たる石垣と、映画「八つ墓村」のロケ地としても知られています。

冒険心をそそる神秘的な「笹畝坑道」

笹畝坑道は、江戸時代から大正時代まで日本三大銅山の一つとされた吉岡銅山(吹屋)で採掘された銅鉱の坑道です。1978年に復元され、坑内を見学することができるようになっています。坑道はアップダウンが多く、ヘルメットを装着して進むことで、まるで冒険をしているかのような感覚を楽しむことができます。

ベンガラ絵の具を使った「ベンガラ染め体験」

吹屋案内所・下町ふらっとでは、ベンガラ型染めや泥染めの体験ができます。体験時間は15分程度で、当日中に持ち帰り可能な世界に一つだけのお土産が作れます。ベンガラ顔料を使った染色液で布を染め上げるこの体験は、吹屋ならではの貴重な体験として人気です。

吹屋地区とその周辺

吹屋は、岡山県高梁市成羽町に位置し、1955年(昭和30年)まで存在した川上郡吹屋町としても知られています。標高550mの高原地帯に位置するこの地区は、江戸時代中期以降、吹屋銅山を中心とした鉱山町として発展し、ベンガラの生産で一大産業を築きました。現在では、6.4ヘクタールの範囲が重要伝統的建造物群保存地区として選定され、歴史的な町並みを保ちながら、多くの観光客を迎え入れています。

建造物・施設

吹屋地区

吹屋地区には、国の重要文化財に指定されている「旧片山家住宅」をはじめ、「吹屋ふるさと村郷土館」や「吹屋資料館」など、多くの歴史的建造物が点在しています。また、バブル期に造られた「国際交流ヴィラ」や、三菱マークの玉垣が現存する「山神社」、日本最古の木造校舎であった「高梁市立吹屋小学校」など、見どころが豊富です。

坂本地区

坂本地区には、幕府代官御用所として使用された「西江邸」があり、ベンガラ産業の中心的な役割を果たしていた建物が一般公開されています。また、「吉岡銅山施設」も見学することができます。

中野地区

中野地区には、旧庄屋の邸宅「広兼邸」や「ベンガラ館」、「笹畝坑道」など、歴史的な建造物や施設が多数あります。これらの施設は、吹屋の歴史を深く理解するために訪れる価値があります。

下谷地区

下谷地区には、「田村家住宅(福岡屋)」や「延命寺」、「銅栄寺」などがあり、これらの建物や施設は、地域の歴史や文化を象徴するものとして大切に保存されています。

沿革

吹屋の歴史は古く、807年(大同2年)に吹屋銅山が開坑されたことから始まります。江戸時代には、大坂の泉屋(住友財閥の前身)や三菱財閥の岩崎家によって吉岡銅山が開発され、ベンガラの生産が盛んになりました。1901年(明治34年)には吹屋村が町制を施行し、吹屋町が発足しましたが、1931年(昭和6年)には銅山が閉山し、町は徐々に衰退しました。それでも、1974年(昭和49年)には岡山県の「ふるさと村」に指定され、1977年(昭和52年)には国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されました。2020年(令和2年)には「『ジャパンレッド』発祥の地」として日本遺産に認定され、その歴史的価値が再評価されています。

主な行事

吹屋では、毎年10月上旬に「ヒルクライムチャレンジシリーズ 高梁吹屋ふるさと村大会」が開催され、多くの参加者が集まります。このイベントは、地域の魅力を広めるための重要なイベントとなっています。

Information

名称
吹屋 ふるさと村
(ふきや むら)
Fukiya Hometown Village
エリア
岡山県の観光地 岡山市・牛窓・備前の観光地
カテゴリ
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