備前市歴史民俗資料館は、岡山県備前市東片上に位置する博物館です。この施設は、地域の歴史や文化、民俗に関する資料を幅広く展示し、訪れる人々に備前市の豊かな伝統と歴史を伝えています。展示内容は、「民俗」「文芸」「セラミックス」「企画」の4つのテーマに分かれており、それぞれの展示室で異なる角度から備前市を紹介しています。
民俗室では、昔の人々が日常生活で使用していた道具や器具が展示されています。行灯やランプ、石臼など、日々の生活を支えていた道具を通じて、当時の暮らしぶりを垣間見ることができます。これらの展示は、現代の私たちが忘れかけている古き良き時代の生活の知恵や工夫を再発見させてくれます。
文芸室では、備前市出身の著名な作家や文化人の業績が紹介されています。文化勲章を受章した正宗白鳥、彼の弟で国文学者の正宗敦夫、そして直木賞作家の柴田錬三郎など、備前市にゆかりのある人物の作品や写真が展示されています。これらの展示は、彼らの作品を通して、備前市が誇る文化的遺産を深く理解することができます。
セラミックス室では、備前焼を中心とした陶磁器に関する展示が行われています。備前焼の登窯の断面模型や市内で発掘された遺物、さらに備前市の産業を支えた耐火レンガなどが展示されており、備前焼の歴史とその独特の技法について学ぶことができます。備前焼は、日本六古窯の一つとしても知られており、その堅牢な焼き物の魅力が多くの来館者を引きつけます。
企画展示室では、年に数回、テーマを変えて特別展が開催されます。備前市の歴史や文化、著名な人物など、さまざまな角度から展示が行われ、地域の新しい魅力を発見することができます。
備前焼の代表的な製品の一つである大甕(おおがめ)は、全国各地で使用され、米や水、油の貯蔵、さらには酒の醸造や藍染織など多岐にわたる用途で利用されました。展示されている大甕には、肩に「二石入」と刻まれており、容量が表示されています。これらの大甕は、かつての日本の生活を支える重要な道具であったことが分かります。
これらの展示品は、4世紀後半の国指定史跡である丸山古墳から出土したもので、当時の高度な技術と文化を示しています。仿製方格規矩鏡は青銅製の鏡であり、管玉は碧玉製、勾玉は水晶製で、いずれも首飾りなどの装身具として使用されていたと考えられています。これらの品々は、古代日本の工芸技術の高さを物語っています。
直木賞作家である柴田錬三郎の手による「オール読み物新人賞」の選評原稿も展示されています。柴田錬三郎は、厳しい眼で作品を批評し、多くの作家の才能を見出したことでも知られています。この原稿は、文学史においても貴重な資料となっています。
施設内は、常設展示と企画展示がそれぞれ行われており、訪れるたびに新たな発見があります。
備前焼(びぜんやき)は、岡山県備前市周辺を産地とする陶磁器であり、日本六古窯の一つに数えられます。その歴史は古く、古墳時代から平安時代にかけての須恵器が発展したもので、備前市伊部地区で盛んに生産されています。備前焼の特徴としては、釉薬を一切使わず、酸化焔焼成によって堅く締められた赤みの強い陶器が挙げられます。この焼成法により、同じ模様が二つとない独特の風合いが生まれ、現在でも茶器や酒器、皿などが多く生産されています。
備前焼の魅力は、その素朴で飽きのこないデザインにあります。「使い込むほどに味が出る」と評されるこの陶器は、日常生活の中でその美しさを増し、長く愛用されることでしょう。
備前市歴史民俗資料館は、地域の歴史や文化を無料で学べる貴重な施設です。開館時間は午前9時から午後4時30分までで、毎週月曜日、祝日の翌日、年末年始(12月29日~1月3日)は休館日となっています。
交通アクセスも便利で、JR赤穂線備前片上駅から徒歩5分の場所に位置しています。アクセスの良さから、地元の人々だけでなく観光客も気軽に訪れることができます。