林原美術館は、岡山県岡山市北区の岡山城址に位置する岡山県の登録博物館です。一般財団法人林原美術館によって運営されており、2024年現在、長瀬玲二が代表理事を、谷一尚が館長を務めています。
林原美術館は、実業家である林原一郎氏(1908年 - 1961年)が蒐集した刀剣を中心とした古美術コレクションをもとに、彼の死去後の1961年に財団法人として設立され、1964年に「岡山美術館」として開館しました。その後、岡山県立美術館の設立に伴い、1986年に現在の「林原美術館」に改称されました。
林原美術館は、林原コレクションに加え、旧岡山藩主である池田家から伝わる品々も収蔵しています。特に能装束や狂言装束など、能・狂言に関係する優品が多く、国宝「太刀 銘吉房」や「洛中洛外図」(池田本)などが代表的な収蔵品として知られています。また、当館に収蔵されている「平家物語絵巻」(越前松平家伝来)は、国内で唯一現存する完本であり、その重要性は非常に高いものです。
林原美術館には、国宝に指定されている文化財がいくつかあります。特に「太刀 銘吉房」や「太刀 銘備前国長船住左近将監長光造」、そして「短刀 無銘正宗(名物九鬼正宗)」などが収蔵されています。これらの刀剣は、時代を超えてその美しさと技術を伝えています。
重要文化財としては、以下のような品々があります。
また、綾杉地獅子牡丹蒔絵婚礼調度 19種やアジア航海図(羊皮紙着色)など、特異な歴史的価値を持つ品々も所蔵されています。
林原美術館が所在する場所は、かつて岡山城二の丸屋敷の対面所が存在していた歴史的な場所です。この建物は明治維新後に取り壊されましたが、その跡地に旧藩主池田家の事務所として使用されていた建物が移築されました。1945年の岡山空襲で焼失したものの、長屋門と土蔵が奇跡的に残り、美術館建設時にそれらが保存され、美術館の一部として活用されています。
林原美術館は、岡山の実業家であった故林原一郎氏が蒐集した古美術品と、旧岡山藩主池田家の大名調度品を基に設立されました。林原氏は学生時代から刀剣の鑑賞と研究に没頭し、戦後には日本最大級の水飴工場を設立する一方で、名刀をはじめとする数々の古美術品を蒐集しました。彼のコレクションがこの美術館の基盤となり、その遺志を継いだ遺族と友人たちが協力して財団を設立しました。
美術館の建築は前川国男建築設計事務所によって設計され、岡山城周辺の景観に調和するような近代建築として完成しました。敷地面積は6,382平方メートル、床面積は1,919平方メートルで、展示室面積は450平方メートルです。また、敷地内には土蔵が3棟あり、これらは展示室としても利用されています。
林原美術館は、林原一郎氏が蒐集した絵画や工芸品、そして旧岡山藩主池田家の大名調度品を中心に構成されています。現在、約9,000点の刀剣、甲冑、絵画、書跡、能面、能装束、陶磁器、金工品、漆工品などを所蔵しており、企画展や特別展において順次展示されています。
林原美術館は、時折開催される企画展や特別展で、これらの収蔵品を入れ替えて展示しています。これにより、訪れるたびに新しい発見があり、岡山の歴史と文化を深く学ぶことができます。
2011年、林原美術館の母体である林原が経営破綻し、その後長瀬産業の子会社となりました。その際、美術館の移管が検討されましたが、引き受け先が見つからず、最終的に長瀬産業傘下の林原が引き続き美術館の支援を行うことになりました。2015年には、財政健全化に向けた所蔵品の整理が発表され、一部の収蔵品が手放される可能性も示唆されましたが、美術館の運営は今も続いています。
林原美術館は、岡山の歴史と文化を後世に伝える重要な役割を担い続けています。今後も多くの人々に愛され、貴重な文化財を保存し公開していくための努力が続けられることでしょう。