備前焼伝統産業会館は、岡山県備前市に位置する陶芸美術館です。 備前焼に関する展示や販売、体験活動が行われる施設であり、地元の文化や伝統工芸を伝える拠点となっています。
備前焼伝統産業会館は、1階に東備観光情報センターを備え、2階と3階が本会館の展示スペースとなっています。この建物は1987年(昭和62年)4月15日に開館し、2009年に2階の展示即売場がリニューアルされました。特徴的なのは、建物全体が登り窯の形を模して設計されている点です。
開館当初は協同組合岡山県備前焼陶友会が管理していましたが、2024年4月からは「備前市立備前焼ミュージアム」の別館として、備前市が管理を引き継いでいます。
備前焼伝統産業会館は、備前焼の里への玄関口として、訪れる観光客に観光情報を提供するとともに、本物の備前焼に触れる機会を提供しています。JR伊部駅舎を含むこの施設では、2階で協同組合の会員である備前焼作家や窯元の作品が展示・販売されています。また、土日祝日には、備前焼作家の指導を受けながら土ひねり体験を楽しむことができ、特に予約が必要です。
館内では約4,000点の備前焼作品が展示・販売されており、土ひねり体験や毎年10月に開催される「備前焼まつり」の会場としても活用されています。入館は無料ですが、土ひねり体験には料金がかかります。営業時間は9:30から17:30までで、土ひねり体験は10:00から15:00まで行われています。火曜日(祝日の場合は翌日)と年末年始(12月29日から1月3日)は休業となります。
備前焼(びぜんやき)は、岡山県備前市周辺を産地とする日本の伝統的な陶磁器です。 日本六古窯の一つに数えられ、特に備前市伊部地区で盛んに生産されています。この地域では、古墳時代から平安時代にかけて須恵器の窯跡が点在しており、これらが現在の備前焼のルーツとされています。
8世紀頃から備前市佐山に窯が築かれ、12世紀には伊部地区に本格的な窯が建設されました。この時期から備前焼は独自の発展を遂げ、鎌倉時代には還元焔焼成による焼き締め陶が焼かれるようになり、鎌倉時代後期には現在の茶褐色の陶器が生まれました。
鎌倉時代には水瓶や擂鉢などの実用品が主力製品となり、「落としても壊れない」と評判を呼びました。これらの作品は「古備前」と呼ばれ、今日でも珍重されています。室町時代から桃山時代にかけては、茶道の発展とともに茶陶としての人気が高まりましたが、江戸時代には茶道の衰退とともに、再び実用品の生産に戻りました。
明治から大正にかけてもこの傾向は続きましたが、昭和に入ると金重陶陽らの努力により、備前焼の芸術性が再評価され、再び人気を取り戻しました。陶陽は重要無形文化財「備前焼」の保持者(人間国宝)に認定され、その弟子たちもまた人間国宝として備前焼の伝統を受け継いでいます。
備前焼の特徴は、釉薬を一切使用せず、「酸化焔焼成」によって赤みを帯びた堅固な焼き締めが行われる点にあります。さらに、窯変によって生み出される模様は一つとして同じものがなく、茶器や酒器、皿などが多く生産されています。
備前焼の茶褐色の地肌は、「田土(ひよせ)」と呼ばれる田んぼの底から掘り起こした土と山土、黒土を混ぜ合わせて焼くことによって現れます。土の配合比率や寝かせる期間、土の採取場所によって成分が異なるため、作るには熟練の技が必要です。
これらの窯変によって、備前焼は個性的で唯一無二の作品が生まれます。特に青備前や黒備前は生産が困難なため、非常に珍重されています。