瀬戸内近海は国内でも有数の味の宝庫。その中で昔ながらの独特な製法で作られているのが塩むし桜鯛だ。まず漁場より直送された天然の真鯛を藁を編んでつくった菰(こも)に桜鯛を包み込む。塩を敷き詰めた塩竃に100度以上に熱された塩水を注ぎ、全体を一気に熱してうまみをギュッと閉じ込める。塩水は流され、真鯛の上に残るのは100度の塩のみ。その後、一度温めると冷めにくいという塩の性質をいかし、約2時間、塩の余熱のみで蒸し焼きにされるのだ。鱗がついているので、塩に埋めても身の中に入る塩味はわずか。じわじわと熱が伝わることで繊維質を壊さず、フワッとした身の柔らかさとシコシコとした歯ごたえを楽しむことができる。鱗で塩分がさえぎられるので塩加減も丁度よい。