静岡県賀茂郡河津町を流れる河津川は、豊かな自然環境を保ちながら町を流れ、周辺地域に暮らす人々や観光客に安らぎを与えています。この川は河津桜の発祥地としても知られ、毎年早春に開催される「河津桜まつり」では美しい桜並木が観光客で賑わいます。
また、河津川の水源となっている天城山は、伊豆半島の中央に位置する壮大な連山で、日本百名山の一つに数えられる名峰です。
河津川は二級水系の河川で、全長約16.4km、流域面積は80.8平方キロメートルです。静岡県伊豆半島の中央部、天城山の西陵に位置する標高1,125mの八丁池を水源とし、天城峠の西斜面から流れる荻ノ入川が出合滝で合流します。その後、大鍋川や佐野川などの支流と合流しながら河津平野を南東方向に流れ、最終的に相模灘へ注ぎます。流域全体が河津町に属しており、町の豊かな水資源として親しまれています。
河津川の源流域には貴重な天然のブナ林が広がり、「天城山・水源の森」として水源の森百選に選ばれています。天城山の北斜面は狩野川の源流であり、南斜面が河津川の源流となっているため、このエリアは地域の水源を支える重要な森林地帯です。また、河津川は豊富な水量を保ち、自然豊かな環境の中で天然のアユが遡上することで知られ、秋から冬にかけてはズガニ(モクズガニ)の漁が行われます。
河津川沿いは、早咲きの桜で有名な河津桜の発祥地です。この河津桜は、河津町田中の河津川河原(豊泉橋付近)で発見され、その後、河津川の河口付近の谷津地区から役場付近の峰地区までに桜並木が広がりました。毎年2月から3月にかけて開催される「河津桜まつり」には、国内外から多くの観光客が訪れ、桜並木の美しさを楽しんでいます。柔らかなピンク色の花が咲き誇る光景は圧巻で、春の訪れを告げる風物詩となっています。
伊豆半島の中央部に位置する天城山(あまぎさん)は、東西に広がる連山で、通称「天城連山」や「天城山脈」とも呼ばれます。日本百名山の一つに数えられ、その中でも最高峰は標高1,406mの万三郎岳です。他にも万二郎岳(標高1,299m)、遠笠山(標高1,197m)といった山々が連なり、伊豆半島の壮大な自然景観を形成しています。この天城山一帯は「富士箱根伊豆国立公園」に指定されており、四季折々の美しい景色を楽しむことができるハイキングコースとして人気です。
天城山は第四紀の成層火山で、80万年から20万年前の火山活動によって形成されました。噴火活動が終わった後は風雨や地震による浸食が進み、現在のような複雑で美しい山並みが生まれました。また、火山学的には「伊豆東部火山群」に属し、火山活動を経てその地形が形成されたとされています。天城山の西側には約3200年前に噴火した皮子平火口があり、周囲には緩やかな斜面が広がっています。
天城山は、さまざまな植物や動物が生息する自然豊かな地域で、特にその原生林は貴重な生態系を形成しています。山麓にはスギ、モミ、ブナなどの樹木が広がり、季節ごとに美しい紅葉や新緑の景色が楽しめます。また、山中にはシカやイノシシ、さまざまな鳥類や昆虫が生息しており、自然観察やバードウォッチングにも適したエリアです。富士箱根伊豆国立公園の一部として、天城山の自然環境は保護されています。
天城山と河津川周辺は、自然観光地として訪れる人が多く、河津桜の花見シーズンや秋の紅葉シーズンには特に賑わいます。しかし、これらのエリアは貴重な自然環境が守られているため、訪れる際には自然保護に配慮した行動が求められます。天城山の登山道や河津川沿いではゴミの持ち帰りや動植物の保護が求められており、観光客は地域の自然を損なわないように心掛けることが大切です。