資料館の設立と歴史
藤橋歴史民俗資料館は、旧藤橋村の歴史や民俗に関する資料を保存・展示することを目的に設立されました。
昭和50年代後半、徳山ダムや杉原ダムの建設計画に伴い、藤橋村では住民の移転が進み、茅葺き屋根の民家が空き家になるケースが増えていきました。そこで、地域の貴重な建築物や民具を後世に残すため、民家を移築して資料館として保存する計画が進められました。
まず、鶴見地区の民家3棟が移築され、1984年(昭和59年)7月27日に「藤橋村歴史民俗資料館」として開館しました。その後、1986年(昭和61年)には、鶴見地区から1棟、横山地区から1棟が追加で移築され、計5棟の民家がそろいました。
2005年(平成17年)には、旧揖斐川町、谷汲村、久瀬村、春日村、坂内村、藤橋村の合併によって新しい揖斐川町が発足しました。これに伴い、施設名も現在の「藤橋歴史民俗資料館」に改称されました。
江戸時代から伝わる茅葺き民家
資料館の大きな見どころは、移築・復元された5棟の茅葺き民家です。江戸時代中期から明治時代中期に建てられた建物が並び、当時の山村の住まいや建築技術を間近に見ることができます。
なかでも、3号棟は旧庄屋・宮川家の住宅です。建物には宝暦10年(1760年)の墨書が残されており、この記録から、同年以前に建てられたものと推測されています。地域の有力者の住まいの特徴を知るうえでも、貴重な建築物です。
各棟にはそれぞれ異なる特徴があり、建物の構造や配置などを見比べることで、当時の暮らしや地域の生活文化への理解を深められます。
山村の暮らしを伝える民具の展示
展示されている民具の多くは、徳山ダムや杉原ダムの建設によって水没した鶴見地区や東杉原地区の民家などから収集されたものです。山仕事や農業、養蚕、手工芸、狩猟、漁業など、山村の暮らしを支えてきた道具が幅広く保存されています。
主な展示資料は、次のとおりです。
山の仕事やものづくりに関する道具
- 山樵用具
- 木地屋用具・製品
- へぎ板打ち・茅葺き用具
- 紙すき用具・製品
- 鍛冶屋・大工用具
農業や生産活動に関する道具
- 農具
- 養蚕用具
- 紡織用具
- 手仕事用具・製品
自然とともに暮らすための道具
- 狩猟用具
- 漁撈用具
- 自然物採取用具
- 運搬用具
日常生活や信仰に関する道具
- 衣生活・食生活用具
- 出作生活用具
- 計量用具
- 信仰・儀礼用具
これらの展示を通じて、山の資源を活用した仕事や、自然環境に合わせて工夫されてきた生活の様子を学ぶことができます。実際に使われていた道具の形や素材からは、当時の人々の知恵や技術もうかがえます。
なお、一部の展示資料は、藤橋城の3階にも展示されています。
訪れる価値と見どころ
藤橋歴史民俗資料館は、単に古い民家を見学するだけでなく、建物と民具を通して、かつての山村の生活文化を具体的に知ることができる施設です。
茅葺き屋根の民家が並ぶ風景には、昔ながらの山村の面影が残されています。建物の構造や展示された道具をじっくり観察すれば、自然と向き合いながら暮らしてきた人々の生活や、地域に受け継がれてきた技術への理解が深まるでしょう。
豊かな自然に包まれた静かな環境の中で、歴史や伝統文化に触れたい方におすすめのスポットです。揖斐川町を訪れた際には、地域の記憶を伝える茅葺き民家と民具を通して、山村の暮らしに思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。