松城家住宅は、静岡県沼津市戸田(へだ)に位置する歴史的建造物で、松城邸(まつしろてい)とも呼ばれます。2006年(平成18年)7月5日に、主屋や文庫蔵、門など7棟の建造物と土地が国の重要文化財に指定されました。
松城家住宅は、回船業を営んだ商家の邸宅で、明治時代の生活様式や建築様式を色濃く残しています。特に1873年(明治6年)に建築された主屋は、和風建築を基調としながらも外観にベランダを設けた擬洋風建築が特徴です。また、静岡県を代表する鏝絵師・入江長八による鏝絵が屋敷内にいくつか残されています。
2018年から2022年にかけて保存修理工事が行われ、2022年11月3日に一般公開が再開されました。この修復により、建物の保全と耐震化が図られ、建築当初の姿がよみがえりました。
松城家は江戸時代後期から廻船業を営み、戸田から江戸や瀬戸内方面への物流を担いました。1818年(文政元年)からの飢饉の際には、当時の当主が私財を投じて村を救い、この功績により松城の姓と帯刀が許されました。以降、松城家の当主は代々「松城兵作」を名乗ることとなります。
松城家は事業を米や穀物の輸送販売に拡大し、大阪や兵庫、中国地方へと交易を広げました。3代目当主は地元の発展にも尽力し、伊豆浦汽船会社の社長や静岡県議会議員などを務めています。
主屋は木造2階建てで、建築面積は266.76平方メートルです。2階の外壁には3つの窓が見られますが、そのうち2つは漆喰で描かれた装飾的な窓です。内部にはポルトガル製の幾何学模様の天井クロスが貼られ、明治期の異国情緒を感じさせます。
1999年に国の登録有形文化財に登録され、2006年に重要文化財に指定されました。指定対象には建造物7棟に加え、宅地や畑などの土地も含まれます。
2016年に修復計画が始まり、2017年から大規模修繕工事が実施されました。主屋は半解体され、蔵や塀なども全て解体・修復されました。これにより建物の耐震性が強化され、歴史的価値が守られています。
松城家住宅はかつて月2回一般公開され、訪問者にその歴史や建築の魅力を伝えてきました。修復期間中も年1回の説明会が開催され、地域住民や観光客に進捗状況が共有されました。
松城家には節分の豆まきにまつわるユニークな習慣があり、当主が「鬼は外」「福は内」と唱えると、従者が「その通り」と応じるというエピソードが伝わります。また、幕末のロシア提督プチャーチンの娘が宿泊した際、松城家の特別な部屋が利用されたとされています。
松城家住宅は、商家としての繁栄の証であると同時に、歴史的建築の重要な遺産です。修復工事を経てその価値がさらに高まり、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。