現在の通天閣
現在の通天閣は1956年10月28日に完成しました。高さは避雷針を含めて108メートル(塔本体は100メートル)で、設計を手がけたのは内藤多仲氏。内藤氏は名古屋テレビ塔や東京タワーなどの設計でも知られています。
構造と設計の特徴
通天閣の低層階(1~2階)は入場ゲートや展示スペースとして利用され、高層階(3~5階)には展望台が設けられています。展望台からは、大阪の街並みを一望することができます。また、建物内には2つのエレベーターが稼働しており、2階での乗り換えが必要な構造となっています。
免震化工事が2014年から2015年にかけて実施され、地震や強風への耐性がさらに強化されました。本体の耐久性は阪神・淡路大震災級の直下型地震や風速80メートル毎秒の強風にも耐えうる設計です。
名前の由来
「通天閣」という名前は、「天に通じる高い建物」を意味し、明治時代の儒学者・藤沢南岳が命名しました。その名の通り、通天閣は大阪の空に向かってそびえ立つ存在感を放っています。
館内施設
通天閣は、地上から地下までさまざまなフロアに分かれ、多彩なアトラクションや展示が用意されています。
5階:黄金の展望台(地上87.5m)
地上87.5mの高さに位置する「黄金の展望台」では、大阪の絶景を一望できます。北西方向には今宮戎神社を望むことができ、展望台には七福神のミニチュア木像が各方角に設置されています。
- ビリケン像:展望台の中心には「ビリケン像」が配置されており、訪れる人々に幸運をもたらす存在として親しまれています。
- 写真サービス:ビリケン像周辺では記念写真の撮影サービスが行われており、最初の1枚を無料で提供しています。
4階:光の展望台(地上84.0m)
「光の展望台」では、大阪の「ヒカリモノ」文化を象徴するような派手な照明やミラーボールが日没後に点灯します。奈良県産の木材を使用した「しゃべるビリケン像」やスタンプラリー用のスタンプ台も設置されています。
3階屋上:通天閣庭苑(地上26.0m)
初代通天閣の「空中庭園」を再現した日本庭園「通天閣庭苑」は、和歌山県のタカショーがプロデュースしています。ライトアップも実施され、幻想的な雰囲気を楽しむことができます。
3階:トップフロアー/TOWER SLIDERの入口(地上22.0m)
「トップフロアー」には、ルナパークのジオラマや当時の写真が展示されています。また、グリコの直営店やマザー牧場プロデュースのレストラン「カフェ・ド・ルナパーク」もあり、家族連れで楽しむことができます。
- ポッキーの撮影スポット:ハート型に配置された「ポッキー」の空箱が人気の撮影スポットとして設置されています。
- 幸せの鐘:このスポットには「幸せの鐘」も吊り下げられており、多くの観光客が記念に鳴らしています。
2階:アンダーフロアー(地上18.0m)
展望台への乗り継ぎフロアで、「ヂャンヂャン町」という売店や、漫画『キン肉マン』のミュージアムが併設されています。新世界の文化とアートを堪能できるスポットです。
1階および地下1階:出入口と関連施設
1階には展望台の出口があり、地下1階には「TOWER SLIDER」の終点やチケット売り場があります。また、「STUDIO210」では日本各地の土産物が販売されています。
ライトアップとネオンサイン
通天閣の夜景を彩るライトアップは、多くの観光客に感動を与える要素の一つです。最新技術を駆使したLEDライトアップにより、四季折々のデザインやイベントごとのテーマカラーを表現しています。
1957年のライトアップ開始以来、何度か改修が行われており、現在では32,579個のLEDを使用しています。これにより、従来の消費電力を削減しつつ、多彩なイルミネーションが楽しめるようになりました。
日立製作所の広告掲出
1957年7月22日、通天閣の再建翌年に、総合電機企業である日立製作所が塔の側面に文字広告を掲出しました。この広告は、現在まで続く通天閣の重要なアイコンとなっています。
当初、松下電器産業(現・パナソニック)にも広告掲出が打診されましたが、当時の社長・松下幸之助氏はこれを見送りました。後年、広告が地元の名物として広く認知されるようになると、松下氏はその決断を悔やんだといわれています。
塔の構造と広告掲出エリア
通天閣の塔は8面構成で、「腕」と呼ばれる出っ張りを境に上下で形状が異なります。「腕」より下は三角形4面と四角形4面、「腕」より上は逆三角形4面と四角形4面が交互に配置されています。
広告が掲出されるのは四角形の面のみで、三角形や逆三角形の面には広告はありません。また、西面は公共性を考慮して広告が掲出されず、地域社会への貢献を目的とした標語などが表示されています。
ネオン広告のリニューアルと特別なライトアップ
通天閣では、乳がん検診を推進するピンクリボン運動の一環として、10月1日にはネオンをピンク色に点灯しています。また、阪神タイガースの球団創設80周年を記念して、チームカラーの黄色を取り入れたライトアップも行われました。
さらに、5~6年ごとに実施されるネオン広告のリニューアル工事や、ライトダウンキャンペーンへの協力を目的に、一部消灯や全面消灯が行われる日もあります。
通天閣の歴史
初代通天閣
初代通天閣は、1903年に大阪で開催された第5回内国勧業博覧会の跡地に建設されました。当時の大阪商業会議所会頭・土居通夫氏が理想の娯楽施設を目指し、エッフェル塔を模した設計で建設されました。高さは約75メートルで、日本三大望楼の一つとして知られていました。
しかし、1943年に火災で大破し、戦時中の鉄材供出のために解体されました。その後、地元住民の強い希望により再建が計画されます。
二代目通天閣の再建
1953年に再建計画が具体化し、1955年に建設が開始されました。資金調達や施工中のトラブルを乗り越え、1956年に完成しました。設計者の内藤多仲氏は、鉄骨の耐久性にこだわり、阪神・淡路大震災後の改修時にも構造の健全性が確認されています。
世界初の展望塔免震化工事
2012年に実施された耐震診断により、阪神・淡路大震災級の地震では鉄骨がゆがむ可能性があることが判明しました。これを受けて、通天閣観光は地震対策工事を進めることを決定し、複数の工法を検討しました。
免震工法が採用され、2014年10月から2015年6月まで総事業費約6億円をかけた工事が行われました。工事中も通天閣の営業を続けるために、営業時間外の夜間に資材搬入を行うなど、周到な計画が立てられました。
免震レトロフィット工法
導入した「免震レトロフィット工法」は、地震時の揺れを大幅に抑える技術です。本体の高層部の外観を損ねないよう配慮しつつ、免震装置とオイルダンパーを基壇部に埋め込みました。
この工事により、地震の振動を耐震工法の約3分の1にまで軽減することが可能となり、来場者の安全性を高めることに成功しました。
見どころ
五階展望台
五階の展望台からは大阪の街並みを一望できます。また、「幸運の神」として知られるビリケン像が設置されています。足の裏をなでると幸運が訪れると言われ、多くの観光客が訪れる人気スポットです。
ビリケン像
ビリケン像は、「全知全能の神」を意味する英語「THE GOD OF THINGS AS THEY OUGHT TO BE」と記された台座に乗っています。その愛らしい表情とユニークな存在感から、通天閣の公式キャラクターとして親しまれています。
光の天気予報装置
通天閣の頂上には丸いネオンが設置されており、「光」の天気予報装置としても機能しています。白色は晴れ、橙色は曇り、青色は雨を示しており、訪れる人々に明日の天気を知らせます。
TOWER SLIDER
2022年には新しいアトラクション「TOWER SLIDER」が導入されました。このスライダーは中間展望台(地上22メートル)から地下1階の出口まで全長約60メートルの滑り台です。斜度30度のスリリングな滑降を10秒程度で楽しむことができ、滑りながら通天閣の内部を見上げることができます。
展望台からの景色
通天閣の展望台は、大阪市内の景色を一望できる絶好のスポットです。特に夜景は美しく、カップルや家族連れにも人気があります。
アクセス
通天閣へのアクセスは、公共交通機関が便利です。最寄り駅は大阪メトロ御堂筋線・堺筋線「動物園前駅」またはJR環状線「新今宮駅」です。どちらの駅からも徒歩数分で到着します。
通天閣が位置する新世界エリアは、大阪のグルメやレトロな雰囲気を楽しめる観光地です。串カツ店や昭和レトロな商店街が並び、通天閣とともに観光客を魅了します。
通天閣はその歴史的背景や現代的な魅力を兼ね備えた、大阪を象徴する観光名所です。展望台からの絶景やビリケン像との触れ合い、光の天気予報装置、そして新設のTOWER SLIDERなど、多彩な楽しみ方があります。大阪を訪れる際はぜひ足を運んで、その魅力を堪能してください。