世界に誇る中国・朝鮮陶磁のコレクション
収蔵品は高麗・朝鮮時代の朝鮮陶磁と中国陶磁を中心に構成されています。朝鮮陶磁は、豊富な作品数だけでなく、時代や技法による作風の変化を幅広く見ることができる点でも大きな魅力です。
中国陶磁も質の高い作品がそろっており、特に南宋や元の時代の名品が充実しています。そのほか、ベトナムや日本の陶磁も収蔵・展示されており、東アジアに広がる陶磁文化のつながりを感じることができます。
国宝「油滴天目茶碗」
代表的な収蔵品の一つが、南宋時代に建窯で作られた「油滴天目茶碗」です。黒い釉薬の表面に油滴のような斑文が浮かび上がる独特の美しさを持ち、国宝に指定されています。光の当たり方によって表情を変える釉薬の美しさは、天目茶碗ならではの見どころです。
国宝「飛青磁花生」
もう一つの国宝が、元時代の龍泉窯で作られた「飛青磁花生」です。青磁の美しい色合いと器の造形が魅力的な作品で、東アジアの陶磁史を代表する名品の一つとして知られています。
このほか、奈良時代の奈良三彩壺をはじめとする重要文化財も収蔵されており、日本の陶磁文化を考えるうえでも貴重な作品を見ることができます。
世界的コレクションを生んだ安宅コレクション
安宅英一によって築かれたコレクション
美術館のコレクションを語るうえで欠かせないのが、実業家安宅英一氏によって築かれた安宅コレクションです。もともとは日本画の収集から始まり、戦後には安宅産業が美術品の収集を事業の一環として進めるようになりました。
その後、安宅英一氏は東洋陶磁の収集に強い情熱を注ぎ、20年以上にわたって多くの名品を集めました。そのため、現在の美術館には一つひとつの作品だけでなく、長い年月をかけて形成されたコレクションそのものの歴史も息づいています。
安宅産業の経営危機と大阪市への寄贈
安宅コレクションは、安宅産業の経営危機をきっかけに大きな転機を迎えます。1975年に安宅産業が経営危機に陥り、1977年には伊藤忠商事に吸収合併されました。
この際、貴重な東洋陶磁コレクションを文化的資産として守るため、文化庁を含む関係者から保存を求める声が上がりました。その結果、住友銀行を中心とする住友グループの協力によって、コレクションは大阪市に寄贈されることになりました。
住友グループ21社からは総額152億円が大阪市の文化振興基金に寄付され、美術館建設の原資となりました。こうして貴重な東洋陶磁のコレクションは散逸を免れ、現在の大阪市立東洋陶磁美術館へと受け継がれていきました。
新たな作品を加えて広がるコレクション
開館後もコレクションは成長を続けています。1999年には、在日韓国人実業家の李秉昌氏から作品の寄贈を受け、朝鮮陶磁の名品がさらに充実しました。
こうした寄贈や購入によって形成されたコレクションは、一般公開されるだけでなく、東洋陶磁に関する学術研究や教育活動にも活用されています。美術品を鑑賞する場所であると同時に、東洋陶磁の文化と歴史を未来へ伝える研究・文化施設としての役割も担っています。
陶磁器の魅力を引き出す展示
大阪市立東洋陶磁美術館では、企画展示室や特集展示室をはじめ、韓国陶磁室、中国陶磁室、日本陶磁室、李秉昌コレクションの展示室などが設けられています。映像ライブラリやラウンジ、喫茶サロン、ミュージアムショップもあり、作品をじっくり鑑賞した後も美術館の時間を楽しめます。
収蔵品すべてが常時展示されているわけではなく、その時々のテーマや展示方針に合わせて作品が厳選されています。そのため、訪れる時期によって異なる作品との出会いが期待できるのも魅力です。
伊藤郁太郎氏が語る安宅コレクション
初代館長を務めた伊藤郁太郎氏は、安宅コレクションの形成や管理に深く関わりました。著書『美の猟犬 安宅コレクション余聞』では、コレクションがどのように評価されていたのか、また安宅英一氏が作品の価値をどのように見つめていたのかを伝えるエピソードが紹介されています。
名品を鑑賞するだけでなく、その背景にある収集家の情熱やコレクション形成の物語を知ることで、作品をより深く楽しむことができます。
陶磁器を引き立てる美術館建築
美術館の建物も、作品鑑賞と合わせて楽しみたい見どころです。本館は1982年に竣工した地上3階・地下1階の建物で、RC・SRC構造によって造られています。1998年には新館が加わり、展示・収蔵機能がさらに充実しました。
その建築は高く評価され、1984年にはBCS賞を受賞しています。中之島公園の自然と調和した落ち着いた環境の中で、東洋陶磁の繊細な美しさをじっくり鑑賞できる空間となっています。
中之島観光と合わせて訪れたい美術館
大阪市立東洋陶磁美術館は大阪市中心部の中之島に位置し、周辺の美術館や文化施設、公園などと合わせて訪れやすい観光スポットです。季節ごとに企画展示や特集展示が行われているため、訪問する時期によって異なる東洋陶磁の魅力に出会えます。
館内のミュージアムショップでは、収蔵作品に関連するグッズや書籍なども扱われています。気に入った作品の背景をさらに知りたい人にとっても、鑑賞後の楽しみとなる場所です。
東洋陶磁の美と歴史をじっくり味わう
大阪市立東洋陶磁美術館は、中国や朝鮮を中心とする東洋陶磁の名品を通して、長い歴史の中で育まれてきた美意識と高度な技術に触れられる美術館です。
国宝の「油滴天目茶碗」や「飛青磁花生」をはじめとする貴重な作品だけでなく、安宅コレクションが築かれ、守られ、現在へ受け継がれてきた歴史にも注目すると、鑑賞の楽しみがさらに広がります。
中之島の街歩きの途中に立ち寄り、静かな展示空間で陶磁器一つひとつの色、形、釉薬、装飾をじっくり眺めてみたい場所です。東洋陶磁の奥深い世界を知ることができる、大阪を代表する文化スポットの一つです。