海遊館の概要
「リング・オブ・ファイア(環太平洋火山帯)」と「リング・オブ・ライフ(環太平洋生命帯)」をテーマに、海洋生物を展示する施設として世界的にも評価を受けています。館内では、14の大型水槽を使用し、ジンベエザメやイトマキエイといった迫力ある海洋生物を間近で鑑賞することができます。その規模は世界でも上位5つに入ります。飼育展示されている生き物の数は580種、30,000点にのぼります。
トンネル型の水槽「魚の通り抜け・アクアゲート」、ペンギンたちのいる「南極大陸」、カピバラ、ピラルクなどがいる「エクアドル熱帯雨林」、コツメカワウソ、オオサンショウウオがいる「日本の森」など、趣向が異なる多彩な水槽があります。「ふあふあクラゲ館」というクラゲだけを展示した施設も人気があります。
また、施設は「株式会社 海遊館」によって運営されており、隣接する「天保山マーケットプレース」や「天保山大観覧車」とともに大阪港の観光名所の中心となっています。
海遊館の建築と設計
海遊館の外観は、「地」「水」「火」の要素を反映した三色のデザインが特徴です。建物全体の設計は、アメリカの建築家ピーター・シャーメイエフが手がけ、外壁には魚の壁画が描かれています。この壁画は、彼の父であるサージ・アイヴァン・シャーメイエフによる作品です。
海遊館の設計には最新技術が活用されており、巨大なアクリルガラスを使用することで、大型水槽の実現が可能となりました。特に「太平洋水槽」では、世界でも希少なジンベエザメが悠々と泳ぐ姿が楽しめます。
海遊館の建物全体が『環太平洋生命帯』を表現していると言われ、見学者は8階まで上がり、スロープを下りながら10の地域に生息する様々な魚や海の表情を間近で見ることができます。
海遊館では、来場者が8階からエスカレーターで上がり、回廊型の通路を通って4階まで降りながら鑑賞する構造になっています。水槽ごとに上層と下層から異なる視点で生物を観察できるため、来館者は何度も同じ生物を異なる角度から楽しむことができます。
独自の水槽管理方法
海遊館の水槽では、一般的な水の出し入れとは異なる方法を採用しています。水槽の下部から水を入れ、上部から排出することで、水流を作り、餌の食べ残しや糞を効果的に除去しています。これにより、水槽内の透明度を保ちながら快適な飼育環境を維持しています。また、酸素の供給は人工の滝を利用しており、一部の滝は来場者にも見える形で設置されています。
ジンベエザメとイトマキエイ
海遊館の目玉展示である「太平洋水槽」では、世界初のジンベエザメとイトマキエイの飼育を成功させました。1990年の開館時、ジンベエザメを飼育する水族館は世界でも海遊館だけでした。さらに、2008年にはイトマキエイの展示を世界で初めて実現し、現在も国内でこの種を飼育するのは海遊館と沖縄美ら海水族館だけです。
「太平洋」水槽の概要
「太平洋」水槽は最大長34m、深さ9m、水量5,400m³の巨大な水槽です。この水槽の壁面には約100枚のアクリルパネルが使われ、三菱レイヨンや住友化学など国内外の企業が製造を担当しました。この展示では、ジンベエザメやイトマキエイの他、アカシュモクザメやマダラトビエイなど、多種多様な海洋生物を見ることができます。
各展示エリアと代表的な生物
魚のとおりぬけ・アクアゲート
魚が頭上を泳ぐ様子を楽しめる「アクアゲート」というトンネル型水槽も設置されています。クロガネウシバナトビエイやヒフキアイゴなどが展示されており、まるで海の中を歩いているような体験ができます。
日本の森
このエリアでは、コツメカワウソ、オオサンショウウオ、ミコアイサなど、日本の自然環境に生息する生物を展示しています。
モンタレー湾とアリューシャン列島
ゴマフアザラシやカリフォルニアアシカ、エトピリカなど、北米西海岸や寒冷地帯に生息する動物たちを観察できます。
南極大陸と北極圏
オウサマペンギンやクリオネなど、極地に生息する生物を展示しています。南極や北極の環境を再現した涼しい空間が魅力です。
エクアドル熱帯雨林
カピバラ、ピラニア、ポルカドット・スティングレイなど、南米の熱帯地域に生息する多様な生物を観察できます。
その他の展示エリア
- グレート・バリアリーフ:ナンヨウハギやスズメダイが見られます。
- タスマン海:カマイルカが展示されています。
- 深海ゾーン:オオグソクムシ、アカザエビなど深海生物を観察可能です。
- 日本海溝:タカアシガニやミズダコなど、日本近海の深海生物を展示しています。
その他の施設
海遊館には水族館以外にも魅力的な施設が用意されています。
- 企画展示室:特別展示を定期的に開催。
- 海遊館ホール:320名を収容可能なイベントスペース。
- レストランハーバービュー:海を見渡せるレストラン。
- オフィシャルショップ:お土産やグッズを販売。
ミュージアムショップの特徴
改装されたミュージアムショップでは、海外で活躍するデザイナー野津萌やCOCHAEのデザインによるオリジナルグッズが多く取り扱われています。まるで水上を散歩しているような感覚で買い物を楽しむことができます。
これまでの取り組み
開業以来の功績と記念事業
2008年2月26日、開業から約18年で海遊館の累計入館者数は5000万人を突破しました。この記録は、日本国内の水族館としては最速の達成です。また、2020年の開業30周年には、エントランスビルの改装やミュージアムショップのリニューアルが行われ、来館者に新たな体験を提供しています。
エピソードと特別な取り組み
海遊館の名称は、タレントの上沼恵美子の助言により決定されました。当初、名称の一般公募では「マリン〜」という案が多かったものの、上沼は「海遊館」という漢字の響きが印象的であると提案し、最終的にその案が採用されました。
また、俳優エドワード・ノートンの祖父ジェームズ・ラウスも、海遊館の企画に関わったことで知られています。ノートン自身も大阪に滞在し、施設の設置を手伝った経験があるそうです。
季節イベントと特別展示
海遊館では、節分の時期に「オニさんダイバー」というイベントが行われ、スタッフが鬼の衣装を着て水槽の清掃を行います。こうしたユニークなイベントは、来館者に楽しみながら学びの機会を提供します。
再入館手続きをすれば、当日何度でも入館できます。
夜5時以降に入場すれば、魚たちの夜の生態も垣間見ることができます。
過去の展示生物
海遊館ではこれまでに、ラッコ、ナンヨウマンタ、クロマグロ、スナメリ、リスザルなど、多様な生物を飼育してきました。これらの展示は、海洋や自然の多様性への理解を深める貴重な機会を提供してきました。
まとめ
海遊館は、その規模と多様な展示内容により、国内外から多くの来館者を集めています。ジンベエザメやイトマキエイなどの大型生物の展示はもちろん、ユニークなデザインのミュージアムショップや季節ごとのイベントも見どころです。家族連れやカップルにとっても魅力的な観光スポットであり、再訪するリピーターが多いことからも、その人気の高さがうかがえます。