徳島藩主に献上された由緒ある祝い菓子
滝の焼き餅の歴史は、約400年前にさかのぼります。徳島城の築城に際し、祝い菓子として藩主に献上されたと伝えられ、以来、藩主御用菓子として知られてきました。長い歴史の中で受け継がれてきた製法と味わいは、徳島の食文化を今に伝える大切な存在です。
この伝統の味を守り続けているのが、徳島市の大滝山の裾野、寺町の奥に店を構える「和田の屋」です。江戸時代に開業した店の歴史と昔ながらの製法を受け継ぎ、素材の持ち味を大切にした手づくりの焼き餅を提供しています。
サクッともっちり、香ばしさが広がる薄焼き餅
滝の焼き餅は、直径約5cmほどの薄い餅菓子です。生地には徳島県産のもち米とうるち米を使用し、石臼で挽いてから練り上げます。中には北海道十勝産の小豆を使った特製のこし餡が入り、すっきりとした甘さが生地の香ばしさを引き立てます。
特徴は、注文を受けてから鉄板で一枚ずつ焼き上げること。表面は香ばしく、中はもっちりとした食感に仕上がります。焼き上げる際には菊紋の型を生地に押し当て、伝統菓子らしい美しい模様を刻みます。素朴な見た目の中に、長年培われた職人の技が息づいています。
生地には、定番のほかにゴマ入りや抹茶入りもあります。風味の違いを楽しみながら、焼きたてならではのおいしさを堪能できるのも魅力です。
名水「錦竜水」が支える、素材本来の味わい
滝の焼き餅づくりに欠かせないのが、眉山の湧水「錦竜水」です。ミネラル分を豊富に含むこの水は、歴代の徳島藩主が愛用した御用水として知られています。和田の屋では、使用する水をすべて錦竜水でまかない、自然素材を生かした伝統の味を守り続けています。
余計なものに頼らず、米や小豆、水といった素材本来のおいしさを引き出すことで生まれる、香ばしく飾り気のない味わい。焼きたてをひと口頬張れば、餅生地の風味とこし餡のやさしい甘さが口の中に広がります。時代を超えて愛されてきた理由を感じられる一品です。
歴史ある店構えと庭園で、ゆったりと味わう
和田の屋 本店は、歴史を感じさせる趣深い佇まいも見どころのひとつです。建物の一部は登録有形文化財に指定されており、徳島の歴史や文化に触れながらひと休みするのにふさわしい場所となっています。
木々に囲まれた店内では、四季折々に表情を変える景色や、水音が響く庭を眺めながら、滝の焼き餅と抹茶を楽しめます。神社仏閣が集まり、しっとりとした寺町の風情が残る大滝山の周辺を散策したあとに立ち寄れば、徳島の歴史と甘味を一緒に味わうひとときになるでしょう。
約400年にわたって受け継がれてきた滝の焼き餅は、華やかさよりも素材の味と職人の手仕事を大切にした伝統菓子です。徳島城の歴史に思いをはせながら、焼きたての香ばしさとやさしい甘さを楽しんでみてはいかがでしょうか。