相楽園の歴史と背景
庭園の起源と発展
相楽園は、三田藩士であった小寺泰次郎が、幕末から明治維新の混乱期において困窮する三田藩の財政を立て直すために建設した私邸の庭園です。彼は、九鬼隆義や白洲退蔵(白洲次郎の祖父)と共に神戸で事業を興し、実業家として成功を収めました。この庭園は1885年頃から築造が始まり、1911年に完成しました。当初は「蘇鉄園」と呼ばれていましたが、1941年に神戸市が譲り受けた後、「和悦相楽」という中国易経の言葉から取った「相楽園」という名称に改められ、一般公開が開始されました。
庭園の特徴
相楽園は、池泉回遊式を基本とした庭園形式を持ちながらも、西洋文化の影響を受けた広場が設けられている点が特徴的です。戦前までは園内に小寺家本邸をはじめとする多数の建造物がありましたが、1945年6月の神戸大空襲により、旧小寺家厩舎(重要文化財)を除いて全てが焼失しました。現存する大楠や蘇鉄林、大灯篭、塀、門などから、かつての邸宅の壮大さをうかがうことができます。
戦後の再建と現在の景観
第二次世界大戦後、神戸市生田区(現・中央区)北野町から旧ハッサム住宅(重要文化財)が移築され、相楽園の一部として保存されました。この住宅は、神戸市の迎賓館としても使用されています。さらに、園内には茶室「浣心亭」が建設され、神戸市垂水区から移設された船屋形(重要文化財)もあり、現在の相楽園の景観を形成しています。
庭園の見どころ
相楽園の庭園は、池泉回遊式日本庭園として整備されており、訪れる人々に四季折々の美しさを提供しています。庭園内には大きな池があり、その周囲を巡りながら様々な風景を楽しむことができます。また、茶室「浣心亭」や船屋形といった歴史的建造物も点在しており、散策しながら日本の伝統的な美を感じることができます。
相楽園の主要施設
船屋形(ふなやかた)— 江戸時代の川御座船
歴史と概要
船屋形は、相楽園内にある歴史的建造物で、江戸時代に大名が参勤交代や遊覧に使用した「川御座船」の屋形部分です。 現存する川御座船としては唯一のもので、その希少性と歴史的文化的価値の高さから1953年(昭和28年)に 国の重要文化財に指定されました。
建造と移築の経緯
- 1682年~1704年に建造されたと推定される。
- 江戸時代、姫路藩(現在の姫路市)で使用されていた。
- 幕末には飾磨港(現在の姫路港)に存在していた。
- 明治時代に移築の際、船体部分が破棄され、大幅な改変が施された。
- 昭和14年(1939年)、神戸市垂水区舞子に復元移築。
- 1980年(昭和55年)、現在の相楽園に移築。
見どころ
当時の工芸技術の粋を集めた船屋形は、美しい彫刻や精巧な装飾が施されており、豪華な造りが特徴です。 また、時代を超えて受け継がれてきた歴史を感じることができる貴重な文化財です。
旧ハッサム住宅 — 神戸の異人館文化を伝える名建築
建築の概要
旧ハッサム住宅は、神戸市中央区にある異人館の一つで、1902年に建設されました。 設計を手がけたのは、シュエケ邸や門邸などの異人館も設計したA.N.ハンセル(Alexander N. Hansell)といわれています。
建築の特徴
- 広大な日本庭園を望む南側ベランダが特徴的。
- 1階はアーケード式、2階はコロネード式のベランダ構造。
- 明治時代の異人館の建築様式を色濃く残す。
歴史と移築の経緯
- 1902年、神戸市中央区北野町2丁目に建設。
- J.K.ハッサム(J.K.Hassam)氏の邸宅として使用された。
- 1961年、神戸回教寺院が神戸市に寄贈。
- 1963年、相楽園内に移築保存。
阪神・淡路大震災の影響と修復
1995年の阪神・淡路大震災では、煉瓦積の煙突が室内配膳室に落下するなどの被害を受けましたが、修復され現在も美しい姿を保っています。 落下した煙突は震災の記録として前庭の一角に展示されています。
ガス灯
旧ハッサム住宅の前庭には、1874年頃に旧居留地の街灯として設置された日本最古級のガス灯が2本建っています。 その歴史的価値も相楽園の見どころの一つです。
旧小寺家厩舎(きゅうこでらけきゅうしゃ)— 西洋建築の美しき厩舎
建築の概要
旧小寺家厩舎は、相楽園内にある西洋風の厩舎建築で、1910年に建築家・河合浩蔵の設計によって竣工しました。 1970年に国の重要文化財に指定されています。
建築の特徴
- 建物の平面はL字型。
- 1階左側は馬車庫、右側は馬房、2階は厩務員宿舎。
- 1階は煉瓦造、2階は木骨煉瓦造という構造。
- 外観は円形塔屋や急勾配の屋根、屋根窓、切妻飾りが特徴的。
- ドイツ民家風の重厚なデザイン。
歴史
相楽園を築いた実業家・小寺泰次郎の息子であり、元神戸市長である小寺謙吉によって建てられた厩舎です。 戦前の相楽園に残る数少ない貴重な建築物の一つです。
日本庭園と茶室
池泉回遊式日本庭園
相楽園の中心となる庭園は、池泉回遊式を基本としており、春のツツジや秋の紅葉など四季折々の美しい風景を楽しむことができます。 庭園内には大灯籠や蘇鉄林、大楠などが点在し、かつての邸宅の壮大さを偲ばせます。
茶室「浣心亭」
庭園内にある茶室「浣心亭」は、日本の伝統的な茶道文化を体験できる場所です。 風情ある静かな空間で、季節の移り変わりを感じながら、落ち着いた時間を過ごすことができます。
結婚式場・宴会場「THE SORAKUEN」
相楽園内には、結婚式や宴会が行える「THE SORAKUEN」があります。 かつての相楽園会館を改装した施設で、日本庭園を背景にした特別なイベントが開催できます。 和の美しさを活かした挙式や披露宴が人気です。
アクセス情報
交通手段
- 神戸市営地下鉄「県庁前駅」から徒歩約5分
- JR・阪神「元町駅」から徒歩約10分
- 阪急「花隈駅」から徒歩約10分
周辺情報
- 北野町山本通
- 北野工房のまち
- 神戸市水の科学博物館
- 新神戸ロープウェー 北野1丁目駅
- 神戸市立布引ハーブ園
- 北野遊歩道
- 北野天満宮
- 港みはらし台
- 布引の滝
- 神戸外国倶楽部
- トアロード
まとめ
相楽園は、歴史と自然が調和した美しい庭園で、神戸市の貴重な文化財として多くの人々に愛されています。その静謐な雰囲気と、四季折々の風景は訪れる人々に癒しと感動を与え続けています。歴史的な建造物や庭園の美しさを堪能できる相楽園は、神戸を訪れた際にはぜひ足を運んでいただきたいスポットです。