船原温泉は、静岡県伊豆市上船原に位置する温泉地で、周囲を山に囲まれた自然豊かな場所にあります。 その名前は、山々の間を流れる船原川の景観が、まるで船のように見えることから名付けられました。 長い歴史を持つこの温泉地は、昔から湯治場として親しまれてきました。
船原温泉の歴史は江戸時代まで遡り、当時は「甲の湯」と「乙の湯」に分かれていたとされています。 その頃から温泉地として知られていましたが、交通の不便さから訪れる人は少なく、静かな温泉地としての時を過ごしていました。
大正時代の案内書には、「静かで費用が安く、治療を目的とする人々に人気がある」と紹介されており、 昭和初期には「自然を味わいながら静養するのに適した場所」とされていました。 1931年時点で、2軒の旅館が営業しており、戦後には4軒の宿泊施設が存在していました。
1960年代初頭、船原温泉に大きな変化が訪れました。船原ホテルが富士観光によって買収され、 広大な敷地に本館や娯楽施設が建設されました。当初は「辺ぴな場所に投資するのは無謀」と言われましたが、 その結果は大成功を収め、月に1万人もの来客を迎えるまでに発展しました。
1983年には、船原ホテルの本館で火災が発生し、施設の一部が全焼しました。 その後、ホテルは閉館し、2005年に時之栖によって日帰り温泉施設「湯冶場ほたる」として再び開業しました。
船原温泉の泉質は無色透明の単純泉や苦味泉で、弱酸性の温泉です。 泉温は32~90度と幅広く、さまざまなミネラル成分を含んでいます。 ナトリウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが主な成分です。
さまざまな効能が古くから知られており、神経痛やリウマチ、婦人病、皮膚病、関節痛などに効果があるとされています。 また、ヒステリーや慢性湿疹、胃腸病、眼病にも良いとされており、多くの湯治客が訪れています。
昔、痘瘡を患った岩さんという人物が、亡くなる前に「自分を船原の地に埋めてほしい。病に悩む人々を助けたい」と遺言しました。 その墓は「瘡岩さんの墓」として知られ、皮膚病の治癒を願う人々が訪れています。
首から上に病を患った男性が、船原の温泉で治療を試みたものの亡くなり、 「顔を見られるのは恥ずかしいので、鍋をかぶせて埋めてほしい」と願いました。 その墓は「鍋かむり塚」として残り、病気平癒を願う参拝者が訪れています。
金鉱を探していた大久保長安は、夢で鳳凰に乗った老人から「温泉の湧く場所に金が眠っている」と教えられ、 金脈を発見したと言われています。この伝説にちなみ、かつて船原ホテルには純金風呂が設置されていました。
船原温泉は、修善寺から土肥に抜ける国道136号沿いに位置しています。 修善寺駅から東海バスで約15分の場所にあり、静かな山峡の一軒宿として知られています。