湯前神社は、静岡県熱海市に鎮座する神社で、式内社の「久豆弥(くづみ)神社」の論社とされています。 旧社格は村社であり、その名称と起源は、江戸時代まで熱海温泉の中心的な源泉であった「大湯間歇泉」に由来します。
湯前神社は現在、近隣の来宮神社の管理下にあり、御朱印も来宮神社で受け取ることができます。 温泉地として知られる熱海の歴史や文化と深く結びついている神社です。
湯前神社の祭神は少彦名神(すくなひこなのかみ)です。 少彦名神は日本各地で温泉の神として祀られており、湯前神社では特に「大湯」を神そのものとして信仰していたと考えられています。
社伝によると、天平勝宝元年(749年)6月、小児に神託が下り、温泉を用いることで諸病を治すようにと神教があったとされています。 これを受け、里人が祠を建てて少彦名神を祀ったのが始まりと伝えられています。
また、天平宝字年間には、万巻(満願)上人が熱海の海中に湧き出る温泉の熱湯で多くの魚介類が死んでいたことを哀れみ、 祈祷を行い湯脈を内陸部へ移したとされ、その後「湯前権現」として祀られるようになったと伝わります。
『伊豆国神階帳』に記載される「熱海の湯明神」に比定されるほか、中世には「湯前権現」として広く知られるようになりました。 鎌倉時代には、源頼朝をはじめとする歴代将軍や幕府要人が参詣する温泉信仰の中心地として栄えました。
湯前神社では、毎年春と秋に例大祭が行われます。この中で特に有名なのが「熱海湯まつり」です。
秋の例大祭の初日には、江戸時代に熱海温泉の湯を江戸城へ献上したことに由来する「湯汲み道中」が再現されます。 温泉を入れた湯おけを持ったパレードが市内を練り歩きます。
2日目には「献湯祭」が行われ、大湯の温泉を神前に献じる儀式が執り行われます。
湯前神社の境内には、熱海市指定天然記念物であるクスノキが立っています。 幹の一部が焼損していますが、樹勢は旺盛で、高さ17メートル、幹周り7.2メートルを誇ります。
安永9年(1780年)、久留米藩主・有馬頼徸によって寄進されました。 高さ3.45メートル、幅4.1メートルで、柱には寄進年が刻まれています。
宝暦8年(1758年)に同じく有馬頼徸が寄進したもので、高さ2.05メートル。 柱にも寄進年が刻まれ、歴史的価値が高いものです。
かつては源泉が流れていましたが、現在は停止しています。歴史の面影を感じられる場所です。
境内には拝殿や本殿があり、石鳥居やクスノキとともに訪れる人々を迎えます。
湯前神社の石鳥居と石燈籠は、2006年(平成18年)12月4日に熱海市指定文化財に指定されています。
クスノキは、1977年(昭和52年)4月25日に熱海市指定天然記念物となっています。
湯前神社は、静岡県熱海市の温泉文化と歴史を象徴する場所です。祭神である少彦名神や、社殿・境内の文化財に触れることで、 温泉地としての熱海の深い歴史を感じることができます。ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。