施設の概要と特徴
この科学館は、原子力船「むつ」の解役に伴って撤去された原子炉を密閉管理し、その展示施設としても機能しています。単なる展示だけでなく、次世代を担う子どもや青少年が科学の面白さに出会えるよう工夫された総合科学館でもあります。館内には実際に触れて体験できる装置や展示が多く、大人から子どもまで楽しめる内容になっています。
展示内容は幅広く、「自然の不思議な世界」「先端科学技術紹介コーナー」「原子炉室展示室」「むつメモリアルコーナー」などがあり、科学を多角的に学べるのが大きな特徴です。特に「むつメモリアルコーナー」では、原子力船がたどった困難な歴史や挑戦を知ることができ、日本の科学技術史の一端を深く理解できます。
館内の展示内容
本館の展示
本館1階には科学展示として、アメリカ・サンフランシスコの科学館「エクスプロラトリアム」から選ばれた33点の展示物が設置されています。自然現象や物理の仕組みを体験的に理解できるもので、実際に触れたり動かしたりすることで科学の奥深さを学べます。さらに「海洋研究開発機構紹介コーナー」では、日本の海洋研究の最前線を知ることができます。
2階には「むつ」の操縦室や操作盤が移設され、当時の船内の雰囲気を間近に体感できます。船を操縦する緊張感や技術の高さを学べる貴重な展示です。
別館の展示
別館1階には、実際に使用されていた「むつ原子炉室」が展示されています。世界でも稼働実績のある原子炉を公開している施設はここだけで、鉛ガラス越しに原子炉を見学できる点は非常に貴重です。また、船舶用原子炉の仕組みや安全性に関する解説も行われており、専門的な知識を一般の来館者にもわかりやすく伝えています。
別館2階にはシミュレーターコーナーがあり、実際の航行を模擬体験できます。子どもから大人まで楽しめる人気のコーナーで、船を操縦する感覚を身近に味わえます。
野外施設
野外には「むつ」の船尾部分が展示されており、巨大な船体の迫力を間近で体感できます。実物を目にすると、原子力船という壮大な計画のスケールを改めて感じることができます。
原子力船「むつ」の歴史
「むつ」は1963年に建造計画が決定し、1968年に着工、翌年進水した日本初の原子力船です。当初は大きな期待を背負い、「原子力船進水記念切手」が発行されるなど、国を挙げて歓迎されました。しかし1974年の試験航海中に「放射線漏れ」と呼ばれるトラブルが発生。実際には放射能漏れではなかったのですが、報道によって大きな問題として扱われ、帰港を拒否される事態に発展しました。
その後、長崎県佐世保市で大規模な修理と改修工事を行い、1988年には新母港として整備されたむつ市の関根浜港へ入港。1990年から試験運転を行い、1991年に正式に合格証を得て運航可能な状態となりました。最終的には地球2周分以上を原子力で航行する成果を残しましたが、1992年に役割を終え、解役となりました。
船体はディーゼルエンジンに換装され、現在は海洋研究開発機構(JAMSTEC)の海洋観測船「みらい」として運航されています。一方で操縦室や原子炉室はむつ科学技術館に移設され、当時の歴史を学べる展示として保存されています。
科学館の沿革
「むつ科学技術館」は、1995年に原子炉室の移送作業が行われた後、1996年7月20日に開館しました。原子力船の歴史を振り返りながら、科学や海洋研究の最前線を紹介する拠点として地域に根付いています。津軽海峡を望む立地にあり、壮大な自然の景観とともに科学を体験できる点も魅力です。
アクセス
むつ科学技術館へは車でのアクセスが便利です。むつバスターミナルから約15分、下北駅から約20分、大湊駅からは約30分ほどで到着します。最寄りのバス停は下北交通「名子平」で、公共交通機関を利用する場合も訪れることが可能です。
まとめ
むつ科学技術館は、日本の原子力船「むつ」の挑戦と苦難の歴史を伝えるだけでなく、子どもから大人まで科学の魅力を楽しめる体験型の施設です。館内には実際に使われた原子炉室や操縦室が展示され、世界的にも珍しい貴重な学びの場となっています。下北半島を訪れる際には、津軽海峡を望む美しい景色とともに、科学と歴史の重みを体感できるこの施設にぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。