アンコウは食通にも人気の魚だが、深海魚ゆえに捕獲が難しく、水圧の変化で死んでしまうため、鮮度の良いものはなかなか見かけられない。そのアンコウの漁場として恵まれているのが青森の風間浦。漁場は餌が豊富な津軽海峡に面しており、潮の流れが早く、荒波で育まれた鮟鱇の身は、甘く引き締まっていて味も抜群。鮟鱇は小さいときは鰯や甲殻類などを食べて成長し、大きくなると白身の魚を餌にすることで美味しくなるため、風間浦では2㎏に満たない場合は再放流している。大きいものでは30kg以上にまで育つ。全国でも珍しい鮟鱇の刺身を食べることができる。この地のアンコウ漁法は刺し網漁と空(から)縄釣り漁、特に100年以上の歴史を持つ空縄釣りという漁法は風間浦独自の漁法で、水揚げされるアンコウの殆どは活きたまま水揚げされるため鮮度の良さは抜群。言い伝えでは、明治時代に北陸地方の漁師が風間浦を訪れた際に漁場が空縄釣り漁にむいているかもと教えたことで、ヒラメが釣れるかと試したところ、アンコウが大漁に水揚げされた。このことから他では類を見ない、アンコウの空縄釣り漁が確立された。刺し網漁は鮟鱇の通り道に網を仕掛け、その網に鮟鱇がかかり水揚げされる。空縄釣りは針のついた100mもある縄を海底に沈め、餌を付けずに潮の流れで移動した仕掛けに鮟鱇が引っかかったところを釣り上る。風間浦村で水揚げされる鮟鱇はきあんこうという種類。港から2~3kmほどで水深70mの地点に到達するという漁場の近さが、活あんこうの水揚げを可能にしている。「西のとらふぐ、東のあんこう」 と言われるほど美味。様々な調理法がある中でのイチオシが”アンコウのとも和え”。昔ながらの郷土料理で、肝や身、皮を余すことなく使い、そのすべてが味わえる。定番料理である鮟鱇鍋は体を温めてくれて寒い冬にぴったり。風間浦鮟鱇の漁期は12月~3月。1月から3月頃のあんこうが最も美味しい。
旬 11月 12月 1月 2月 3月