御祭神と由緒
生駒山の神々を中心に七柱を祀る
往馬大社では、生駒山の神として信仰される伊古麻都比古神と伊古麻都比賣神を中心に、七柱の神々をお祀りしています。
主な御祭神
・伊古麻都比古神
・伊古麻都比賣神
・氣長足比賣命(神功皇后)
・足仲津比古命(仲哀天皇)
・譽田別命(応神天皇)
・葛城高額姫命(神功皇后の母)
・息長宿禰王命(神功皇后の父)
古くから伝わる火の神への信仰
伊古麻都比古神と伊古麻都比賣神は、生駒山の神であるとともに、古来より火を司る神としても崇敬されてきました。往馬大社には、天皇の即位に伴う重要な儀式である大嘗祭に使用する火燧木(ひきりき)を献上する伝統があります。
明仁天皇の大嘗祭でも、当社から献上された火燧木が使用されました。この木は「波波迦(ははか)」と呼ばれ、現在では上溝桜(うわみずざくら)を指すとされています。
また、『北山抄』『元要記』『亀相記』などの文献には、当社の神が「火燧木神(ひきりきのかみ)」として記されています。こうした伝承からも、往馬大社が火に関わる祭祀において重要な役割を担ってきたことがうかがえます。
伝統行事「火神祭」
往馬大社を代表する祭礼の一つが、毎年10月の第2日曜日に行われる「火神祭」です。龍田大社の風神祭、廣瀬大社の大忌祭と並び、古くから朝廷の崇敬を受けてきた重要な祭礼とされています。
松明を担いで石段を駆け下りる勇壮な神事
火神祭では、松明を担いだ若者たちが境内の石段を駆け下り、その速さを競います。火と深い関わりを持つ神社ならではの、迫力に満ちた伝統行事です。
この行事は、地域の歴史や信仰を今に伝える貴重な文化として、奈良県指定の無形民俗文化財に認定されています。祭礼の日には、古くから受け継がれてきた神事と地域の人々の熱気を感じることができます。
往馬大社の歴史
創建年代は不詳、生駒谷の氏神として信仰される
往馬大社の創建年代は明らかになっていませんが、古くから生駒谷十七郷の氏神として、この地に鎮座してきたと伝えられています。
生駒山を御神体とする神奈備信仰に基づく古社であり、自然そのものに神聖な力を見いだす日本古来の信仰を今に伝えています。奈良県内でも、大神神社や石上神宮と並ぶ由緒ある神社として知られています。
古文献に記された往馬大社
『総国風土記』の雄略天皇3年(458年)の条には、「伊古麻都比古神社」の記述があるとされています。また、『延喜式神名帳』には、大和国平群郡の大社として「往馬坐伊古麻都比古神社二座」と記されています。
さらに、雨を降らせることを祈る祈雨の幣も賜っていたとされ、古代において国家的にも重要な神社であったことがうかがえます。
神仏習合から近代へ
平安時代には、境内や周辺に神宮寺が11か寺存在したと伝えられています。鎌倉時代になると、武家の守護神として信仰された八幡神が加わり、現在の七柱を祀る形へとつながっていきました。
明治時代の神仏分離によって神宮寺は廃止され、神社は県社に列せられました。時代の変化を経ながらも、地域の信仰の中心として受け継がれています。
境内の見どころ
七棟が並ぶ荘厳な本殿
往馬大社の本殿は、春日造の桧皮葺(ひわだぶき)の社殿が七棟連なる構成となっています。中央には伊古麻都比古神、右側には伊古麻都比賣神が祀られ、ほかの神々も左右の社殿に鎮座しています。
整然と並ぶ社殿からは、長い歴史と神々への深い信仰が感じられます。参拝の際には、建築様式や社殿の配置にも注目してみてください。
歴史を伝える境内の建造物
境内には、本殿のほかにも祭祀や参拝に関わるさまざまな施設があります。
・祝詞舎
・拝殿
・英霊殿
・観音堂
・神饌所・斎館・祭器庫
・唐門形式の楼門
・役座・高座・北座・南座・管弦楽座・禊場
・北神輿庫・南神輿庫
・社務所
英霊殿には、称徳天皇の黄金の位牌が埋められたという伝承が残っています。また、観音堂には十一面観音像が祀られており、神仏習合の歴史を感じさせます。
境内を彩る摂末社
境内には、主祭神のほかにも多くの神々を祀る摂末社が点在しています。それぞれの社に由緒ある神々が祀られ、往馬大社の幅広い信仰の歴史を伝えています。
主な摂末社
・祓戸社:瀬織津比賣神
・水神社:水分神
・稲荷社:宇迦之御魂神
・戎神社:事代主神
・大山祇社、春日社、神明社、仁徳天皇社、豊受比賣社(北末社)
・月読社、猿田彦社、住吉社、伊弉諾社(南末社)
・高良社、春日社(別院)
境内を巡りながら、それぞれの神社に祀られた神々や信仰の背景に思いを巡らせるのも、参拝の楽しみの一つです。
往馬大社に関わる文化財と自然
歴史的価値を伝える文化財
往馬大社には、神社の歴史や信仰を伝える文化財が残されています。
重要文化財
・絹本著色生駒曼荼羅図(鎌倉時代):奈良国立博物館蔵
奈良県指定文化財
・絹本著色生駒曼荼羅(室町時代):奈良国立博物館寄託
・往馬大社の火取り行事(無形民俗文化財)
・往馬大社の社叢(天然記念物)
生駒曼荼羅は、往馬大社の信仰や歴史を知るうえで貴重な資料です。また、社叢も天然記念物に指定されており、境内の自然環境が文化的価値とともに守られています。
往馬大社へのアクセス
電車・車でのアクセス
電車:近鉄生駒線の一分駅から徒歩圏内です。
車:第二阪奈有料道路の壱分ランプ・小瀬料金所が利用できます。周辺には国道168号線の一分バイパスが通っています。
生駒の歴史と信仰に触れる往馬大社
往馬大社は、生駒山への自然信仰を起源とし、火の神への崇敬や古代から続く祭祀の伝統を今に伝える神社です。歴史ある本殿や数々の摂末社、文化財に加え、勇壮な火神祭も大きな見どころとなっています。
豊かな自然に包まれた境内を巡れば、地域に根差した信仰と長い歴史を感じられるでしょう。奈良・生駒エリアで神社仏閣や日本の伝統文化に触れたい方におすすめの歴史スポットです。