諏訪大社 下社 春宮は、全国に約25,000社ある諏訪神社の総本社として、長い歴史を持つ神社です。旧称は「諏訪神社」とされ、「お諏訪さま」や「諏訪大明神」とも呼ばれています。日本最古の神社の一つとして、古くから地域の信仰の中心であり、信濃国の一宮でもあります。この神社は、長い歴史の中で多くの信仰を集め、地域の文化や風習にも深く根付いています。
諏訪大社 下社 春宮の社殿は、独特な配置と構造を持っています。社殿の四隅には「御柱」と呼ばれる4本のモミの木柱が建てられており、この配置が神社の神聖さを一層引き立てています。また、社殿は華美な装飾や塗装が施されておらず、全てが素木造となっています。この質素でありながらも力強い建築様式は、古代からの日本の伝統を感じさせるものであり、社殿の多くは重要文化財に指定されています。
諏訪大社は、諏訪湖を挟んで南岸に上社、北岸に下社があり、それぞれ異なる役割を担っています。上社には本宮と前宮、下社には秋宮と春宮が鎮座しています。興味深いことに、上社と下社の間には社格に序列がなく、平等な関係が保たれています。しかし、下社は上社と異なり、秋宮と春宮の二宮が古くから同格の地位にありました。下社が位置する地域は、南側が開けており、古くから農耕が盛んな土地であることから、農耕民族的な性格を持っています。
春宮は、下諏訪の町の北端に位置し、秋宮の北西約1.2kmの地点に鎮座しています。この地は、下社最初の遷座地とされ、西方には砥川が流れています。春宮という名称は、毎年2月から7月にかけて祭神が祀られることに由来しており、この時期に行われる祭事は地域の重要な行事とされています。また、春宮は古くからの信仰の中心地であり、地域の人々にとって特別な場所となっています。
春宮の境内には、いくつかの見どころが存在し、その多くが国の重要文化財に指定されています。
幣拝殿は、江戸時代の安永9年(1780年)に完成した建物で、幣殿と拝殿が一体となった二重楼門造りです。左右には片拝殿(重要文化財)が並び、重厚な雰囲気を醸し出しています。
神楽殿は、江戸時代の天和年間(1681年-1684年)頃に建てられたもので、神楽などの祭事が行われる場所です。
参道途中にある太鼓橋「下馬橋」は、室町時代に建造されたもので、下社では最も古い建造物です。この橋は、身分にかかわらず、馬から下りて渡らなければならないとされ、現在でも遷座祭においては神輿のみがこの橋を渡ります。
筒粥殿は、筒粥神事が行われる場所で、古くからの祭事の伝統を今に伝えています。
結びの杉は、先で二又に分かれる特徴的な杉の木で、縁結びや家内安全の象徴とされています。この杉の木は、訪れる人々に特別なご利益があるとされています。
春宮の境内の側にある畑には、「万治の石仏」と呼ばれる高さ2メートルほどの石仏が鎮座しています。この石仏は1660年に造られ、そのユニークな姿は地域の人々に親しまれています。石仏は「あみだ様」として敬愛され、古くから人々の信仰を集めています。この石仏の存在は、春宮が単なる神社ではなく、地域の信仰の核として機能していることを物語っています。
下社の春宮は、下諏訪の中心地に位置しており、近世には中山道・甲州街道の宿場町として発展した下諏訪宿もこの地に設けられました。この地は、農耕民族的な性格を持ちながらも、交通の要所としても栄え、地域の文化や歴史の中心地として重要な役割を果たしてきました。春宮は、その歴史と共に、地域の信仰や文化の象徴として今もなお多くの人々に親しまれています。
JR中央本線下諏訪駅から徒歩15分
岡谷ICから車で15分[4km]
諏訪ICから車で25分[10km]