施設概要
博物館は、白壁土蔵造りの6棟の建物からなり、凧・独楽・手まり・雛人形・ちりめん細工などの日本の郷土玩具をはじめ、世界160カ国の玩具や人形など、約9万点もの資料を収蔵・展示しています。展示品の中には実際に手で触れて遊べるコーナーも設けられており、訪れる人々に楽しく学びの場を提供しています。
施設の歴史
日本玩具博物館の歴史は、1974年に山陽電気鉄道の社員であった井上重義館長が、自宅の一部を展示館とした「井上郷土玩具館」として開設したことから始まります。その後、1984年に「日本玩具博物館」と名称を改め、1998年には第20回サントリー地域文化賞を受賞しました。さらに、2007年には地域文化功労者として文部科学大臣表彰を受け、2016年にはミシュラン・グリーンガイドで二つ星に認定されるなど、文化的な貢献が高く評価されています。
現在の館長は、ちりめん細工の復興に力を注いでおり、全国各地で講座を開くなど、伝統工芸の普及にも尽力しています。
各施設の紹介
日本玩具博物館は、6つの館で構成されており、それぞれが異なるテーマを持っています。
- 1号館: 企画展・特別展示会場
- 2号館: 駄菓子屋の玩具と近代玩具の展示
- 3号館: 人形と伝承手芸の展示、遊びのコーナー
- 4号館: 1階は日本の郷土玩具、2階は世界の玩具と人形の展示
- 5号館: ランプの家
- 6号館: 企画展・特別展示会場
これらの施設では、常設展のほか、年に7~8回のテーマを変えた展示品の入れ替えが行われており、1号館では年4回、6号館では年3回の企画展・特別展が開催されています。また、館内にはミュージアムショップも併設されており、来館者は展示を楽しむだけでなく、玩具に関する書籍やグッズの購入も可能です。
豊富なコレクション
日本玩具博物館では、日本各地の郷土玩具や近代玩具、節句飾りをはじめとする日本の伝統人形や玩具、さらに世界160カ国の民族玩具などを幅広く収集・展示しています。
代表的なコレクション
- 雛人形(1,000組)
- 世界のクリスマス玩具(3,000点)
- メキシコの民芸玩具(1,500点)
- 中国の民間玩具(1,000点)
日本の郷土玩具
日本各地では、江戸時代後期から明治時代にかけて、子どもたちの健やかな成長を願い、紙・木・竹・土などを使った様々な玩具や人形が作られてきました。これらは、地域の伝説や信仰、美意識、幸福観を反映し、それぞれの土地ならではの個性を持っています。
地域別の郷土玩具
北海道・東北地方
北海道の木彫り熊やニポポ、東北地方のこけしや土人形など、寒冷地ならではの素朴で温かみのある玩具が特徴です。青森県のねぶた祭りや秋田県の竿灯祭りにちなんだ玩具もあります。
関東地方
東京の今戸土人形や犬張子、栃木県日光の木地玩具、埼玉県の船渡張子など、江戸時代からの伝統を受け継ぐ玩具が数多く存在します。
中部地方
新潟の三角だるまや金沢の八幡起き上がり、信州のあけび細工の鳩車など、山岳地帯ならではの玩具が見られます。
近畿地方
京都の伏見土人形や、大阪の神農さんの虎、兵庫県の温泉地・有馬の人形筆など、長い歴史を持つ玩具が多く残っています。
中国・四国地方
鳥取の流し雛や倉敷の素隠居、土佐の鯨船など、祭礼や漁業に関連する玩具が特徴的です。
九州・沖縄地方
博多土人形や熊本の木の葉猿、沖縄の琉球張子など、南国らしい明るい彩色とおおらかな造形が魅力です。
祈りの玩具
郷土玩具の中には、単なる遊び道具としてだけでなく、病気除けや子授け、安産祈願などの願いが込められたものもあります。特に、赤色の玩具は江戸時代から明治初期にかけて流行した疱瘡除けのために作られたものが多く見られます。
郷土の独楽(こま)
江戸時代には、日本各地で独自の形や回し方を持つ独楽が発展しました。
- 東北地方 - 雪の上で回す「ずぐりこま」や木地こま
- 関東地方 - 華やかな色彩の「江戸こま」
- 関西地方 - 音が鳴る「鳴りこま」
- 九州地方 - けんかこまや皿型の独楽
日本の近代玩具
日本の近代玩具は、明治時代以降、西洋の技術や文化の影響を受けながら発展しました。江戸時代までの手作り玩具とは異なり、工業技術の発展によって大量生産が可能になったことで、多くの子どもたちが手にできるようになりました。
主な近代玩具の種類
- ブリキ玩具 - 明治時代から昭和にかけて発展し、ゼンマイ仕掛けのロボットや車が人気を博しました。
- セルロイド人形 - 大正時代に流行し、当時の子どもたちの憧れの存在でした。
- ソフビ人形 - 昭和30年代以降、ウルトラマンや仮面ライダーなどのキャラクター玩具として広まりました。
- 超合金ロボット - 1970年代に誕生し、アニメと連動して大ヒットしました。
日本の近代玩具は、国内だけでなく海外でも高く評価され、多くのコレクターの間で人気を博しています。
日本の伝統人形
日本には、古くから様々な人形文化が育まれてきました。雛人形や市松人形などは、子どもの成長を願う意味を持ち、時代とともに進化しながら受け継がれています。
代表的な伝統人形
- 雛人形(ひなにんぎょう) - 女の子の健やかな成長を願う「ひな祭り」に飾られる人形。
- 市松人形 - 江戸時代に流行した着せ替え人形で、観賞用や子どもの遊び道具として親しまれました。
- 御所人形 - 京都の公家文化を背景に生まれた、丸みのある愛らしい姿が特徴の人形。
- 土人形 - 各地の風土や民間信仰を反映した素朴な人形で、郷土玩具の一種でもあります。
これらの人形は、時代を超えて大切にされ、日本の伝統美を今に伝えています。
世界の民族玩具
日本玩具博物館では、日本国内だけでなく、世界各国の民族玩具も豊富に収蔵・展示しています。各国の文化や歴史を反映した個性豊かな玩具は、子どもたちの遊び道具であると同時に、民族の伝統や信仰を表現する重要な民芸品でもあります。
主な収蔵品
- ロシアのマトリョーシカ - 入れ子構造の木製人形で、ロシアを代表する伝統工芸品。
- ドイツのくるみ割り人形 - クリスマスの装飾品としても有名な木製玩具。
- メキシコのアレブリヘス - 鮮やかな色彩で装飾された木彫りの幻想的な動物の玩具。
- アフリカの民族人形 - 祭祀や儀式に用いられる精霊信仰に基づいた人形。
- 中国の京劇人形 - 伝統芸能・京劇の登場人物を模した華やかな人形。
世界各国の玩具を通して、それぞれの国の文化や価値観を学ぶことができます。
訪問情報
日本玩具博物館は、館内の展示を見るだけでなく、実際に手に取って遊ぶことができるコーナーも充実しています。お子様連れのご家族はもちろん、日本の文化や郷土玩具に興味のある方にもおすすめの施設です。
兵庫県姫路市に訪れた際には、ぜひ日本玩具博物館に足を運び、懐かしさと新たな発見が詰まった玩具の世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。
利用情報
日本玩具博物館の入館料は以下の通りです。
- 一般: 600円
- 高校生・大学生: 400円
- 子ども(4歳以上): 200円
開館時間は10時から17時までで、毎週水曜日(祝日は開館)および12月28日から翌年1月2日までは休館日となっています。
所在地と交通アクセス
日本玩具博物館の所在地は、兵庫県姫路市香寺町中仁野671-3です。交通アクセスについては、以下の通りです。
- JR播但線「香呂駅」から東へ徒歩15分
- 船津ランプから西へ車で約5分
- 福崎インターチェンジから南へ車で約15分
周辺の見どころ
日本玩具博物館の周辺には、徒歩3分の距離に「香寺民俗資料館」があり、地域の歴史や文化を学ぶことができます。訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみてください。
日本玩具博物館は、兵庫県の文化や伝統を学べる場所として、多くの人々に愛され続けています。ぜひ一度足を運んで、古き良き日本の玩具文化に触れてみてはいかがでしょうか。