祭りの概要と歴史
灘のけんか祭りは、播州の秋祭りの中でも特に代表的なものとして広く知られています。この祭りは、「松原八幡神社秋季例祭風流」として、姫路市および兵庫県の重要無形民俗文化財に指定されています。また、旧松原村の獅子屋台の太鼓の音は「日本の音風景100選」にも選ばれています。
祭神と神事の流れ
祭りの中心に祀られているのは、品陀和気命(応神天皇)、息長足姫命(神功皇后)、そして比咩大神(比咩三神)です。これらの神々を讃えるために、壮大な神輿が奉納され、その後、3基の神輿が激しくぶつかり合います。
宵宮(10月14日)の流れ
祭りは宵宮の10月14日から始まります。昼前ごろから、東山、木場、松原、八家、妻鹿、宇佐崎、中村の旧7ヶ村の屋台が松原八幡神社に宮入りし、その後、日が暮れるまで各村の屋台同士が激しく練り合わせを行います。夜には各屋台に提灯や電飾が灯され、神社境内は多くの観客で賑わいます。
本宮(10月15日)の流れ
本宮は早朝から始まります。松原の獅子が御幣を授かり、神社境内や御旅山山麓で幣舞を披露します。練り番の村では、海で心身を清める「潮かき」が行われ、その後、屋台が宮入りし、神社前の広場で再び練り合わせを行います。祭りのクライマックスとして、神輿をぶつけ合わせる神事が行われ、観客の歓声が響き渡ります。
旧七ヶ村の屋台
祭りに参加する旧七ヶ村の屋台は、それぞれが独自の伝統と特色を持っています。各村の屋台は練り子と呼ばれる担ぎ手によって運ばれ、彼らは相撲と同様の廻しを着用し、村ごとにシンボルカラーの鉢巻を巻いています。各村の屋台は、宮入り後に神社境内で激しく練り合わせを行い、その後、御旅山に向かいます。
各村の特徴
以下は、各村の特徴です。
- 旧 東山村(姫路市東山): 紋は千成瓢箪、シデの色は桃色。特徴は純銀の擬宝珠。
- 木場港(姫路市木場): 紋は菊水、シデの色は若緑。特徴はお迎え提灯。
- 舊 松原村(姫路市白浜町西部): 紋は左三つ巴、シデの色は赤。特徴は擬宝珠の左右に鯱。
- 旧 八家村(姫路市八家): 紋は左三つ巴、シデの色は黄赤。特徴は元禄15年(1702年)作の太鼓。
- 妻鹿町(姫路市飾磨区妻鹿): 紋は左三つ巴、シデの色は朱赤。特徴は胴突きによる担ぎ上げ。
- 旧 宇佐崎村(姫路市白浜町宇佐崎): 紋は昇り龍、シデの色は黄。特徴は蛭子神社縁起の「竜馬」。
- 旧 中村(姫路市白浜町中部): 紋は五七の桐、シデの色は青。特徴は屋根のてりむくり。
灘のけんか祭りにおける事故と安全対策
灘のけんか祭りは、その勇壮さから毎年多くの観客を引き寄せますが、過去には事故も発生しています。2001年には神輿の下敷きとなり一名が死亡、2009年には屋台の間に挟まれた男性が死亡する事故が発生しました。これらの事故を受け、安全対策が強化されていますが、参加者や観客は常に注意を払う必要があります。
交通アクセス
祭りが行われる松原八幡神社へのアクセスは、山陽電気鉄道本線の白浜の宮駅が最寄り駅となります。白浜の宮駅は通常、朝夕のみ直通特急が停車し、日中は普通列車のみが停車する無人駅ですが、祭りの日には臨時の特急列車が停車し、駅員も配置されます。
関連情報
灘のけんか祭りは「神幸祭」や「播州の秋まつりシリーズ」と並んで、地域の伝統を守り続けています。また、松原八幡神社祠官として祭りの発展に寄与した教育者、亀山雲平の名前も知られています。祭りに関する音風景は「日本の音風景100選」に選ばれており、その音色は訪れる人々の心に深く刻まれています。