つなぎを使わずに生まれる、ふんわりとした食感
いわし団子の魅力は、魚本来の豊かな風味と、ふんわりとした口当たりにあります。いわしの身を包丁で細かくたたき、卵や味噌、酒粕などを混ぜて団子状にし、だし汁の中で火を通します。魚の身そのものに粘りがあるため、片栗粉などのつなぎを加えなくても、まとまりのある団子に仕上がります。
具材には、ささがきにしたごぼうや木の芽、しょうが、山椒などが使われます。ごぼうの風味や薬味の香りがいわしの旨味を引き立て、味わいに奥行きを与えてくれます。漁港で水揚げされるマイワシやウルメイワシなど、魚の種類によって風味が変わるのも楽しみのひとつです。
地域に伝わる工夫と、春ならではのおいしさ
弓ヶ浜半島では、いわし団子を作る際に炭酸を加えることもあります。魚のアクや生臭みを抑え、口当たりよく仕上げるための工夫です。いわし団子は、煮汁とともに味わうほか、つみれ汁として食べることもあります。
春は、刻んだ木の芽を加えたいわし団子が特においしい季節とされています。旬のいわしの旨味に、木の芽のさわやかな香りが重なり、季節感あふれる味わいを楽しめます。身近な魚と地域の食材を組み合わせた、飾らないおいしさが魅力です。
家庭に受け継がれる、いわし団子の作り方
いわし団子は、いわしの頭と内臓を取り除き、骨ごと細かくたたくところから始まります。すり鉢に入れた魚の身に味噌、溶き卵、酒粕などを加えてよくすり混ぜ、ささがきにしてアク抜きしたごぼうを合わせます。生地を適当な大きさに分け、団子状に整えます。
鍋に水やだし汁の素、酒、みりん、塩などを入れて煮立て、形を整えた団子を加えて火を通します。器に盛り付けたら、好みに応じて木の芽、しょうが、柚子の皮などを添えて完成です。家庭や地域によって材料や味付けが異なり、それぞれの家ならではの味が受け継がれています。
米子・大山・境港の旅で味わう、海の恵み
鳥取県西部の米子・大山・境港エリアは、日本海の新鮮な魚介類と、大山の豊かな自然が育む食材に恵まれた地域です。境港の漁業文化に触れたり、水木しげるロードを散策したり、大山の自然や歴史ある寺社を巡ったりと、さまざまな楽しみ方ができます。
この地域を訪れたら、カニや新鮮な魚介類だけでなく、いわし団子のような昔ながらの郷土料理にも注目してみましょう。身近な魚を丁寧に調理して生まれた一品には、鳥取の漁師町の暮らしと食の知恵が息づいています。春の旬の時期には、いわしと木の芽が織りなす季節の味わいもぜひ楽しんでみてください。