手間をかけて仕上げる、いぎす草の保存方法
材料となるいぎす草は、春になると海岸に流れ着く海藻です。細い糸状の姿をしており、ホンダワラの枝に絡みついて成長します。夏から秋にかけて繁茂し、鳥取県では中部・西部地域の漁港などで水揚げされます。
採取したいぎす草は、夏の強い日差しを利用して乾燥させます。雑藻などを取り除きながら水洗いと天日干しを3~4回繰り返し、クリーム色になるまで丁寧に仕上げて保存します。こうした手間のかかる下準備が、イギスのおいしさを支えています。
米ぬかや大豆のゆで汁で煮溶かして固める
イギスを作る際には、乾燥させたいぎす草を水で戻し、米のぬか汁や大豆のゆで汁などを使いながら、とろ火でじっくり煮溶かします。海藻の繊維がなめらかになるまで十分に煮ることが、おいしく仕上げるポイントです。
煮溶かしたものを容器に移し、冷まして固めれば基本のイギスが完成します。ごまを振りかけ、からし酢味噌や酢醤油、しょうが醤油などを添えて食べるのが一般的です。また、煮溶かす段階で具材やだし汁を加えて味付けし、好みの風味に仕上げることもできます。
黒蜜やドレッシングをかけるなど、味付けを変えて楽しむ方法もあります。海藻の風味を生かした素朴な味わいは、食事の一品としても、地域ならではの料理を味わう楽しみとしても魅力的です。
祭りや節句、法事などに受け継がれる郷土の味
イギスは、日常の食卓だけでなく、精進料理や祭り、節句、冠婚葬祭などの場でも振る舞われてきました。正月や法事とも結びつき、地域の暮らしや行事に根付いた伝統食として受け継がれています。飛鳥・奈良時代には、すでにこの料理が朝廷への献上品として贈られていたとも伝えられています。
いぎす草には水溶性食物繊維やミネラルが含まれており、イギスは海藻の恵みを生かした料理でもあります。土地に伝わる食文化や昔の人々の暮らしを感じられる、素朴で味わい深い一品です。
倉吉・三朝の観光とともに味わう
鳥取県の倉吉・三朝エリアには、歴史ある倉吉白壁土蔵群や三朝温泉、三徳山三佛寺、中国庭園・燕趙園など、見どころが豊富にあります。町並み散策や温泉めぐりを楽しみながら、地元に伝わる郷土料理にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
イギスのような伝統食は、その土地の自然や暮らし、食文化を知るきっかけになります。鳥取を訪れた際には、地域ならではの味わいを通じて、受け継がれてきた食の魅力に触れてみてください。