秋田県由利本荘市赤田地区にそびえる東光山は、標高約592.6メートルの信仰の山です。長谷寺を開いた名僧・是山泰覚(ぜさんたいかく)和尚が修行を行った霊山として古くから知られ、現在でも地域の人々に大切に守り継がれています。
豊かなブナ林や杉林に囲まれた登山道、歴史ある堂宇、美しい景色、そして麓に流れる赤田大滝など、東光山には自然と歴史、信仰が見事に調和した魅力があります。登山初心者でも比較的歩きやすい山として親しまれ、四季折々の景観を楽しめる由利本荘市を代表する自然スポットの一つです。
東光山は、長谷寺の開祖である是山泰覚和尚が巡錫修行や山籠もりを行った山として伝えられています。江戸時代後期の天明年間、是山和尚はこの地域にある五つの山を仏教の聖地として定めました。
その五つの山とは、東光山・傾山・黒森山・笹森山・仏洞山です。これらは総称して「赤田五峰山」と呼ばれています。五つの山並みが横たわる釈迦如来の姿に見えることから、地域一帯が神聖な修行の場として信仰されるようになりました。
現在でも赤田地域では、東光山をはじめとする五峰山への信仰が息づいており、毎年9月には地域住民による登山行事も開催されています。
東光山の歴史を語るうえで欠かせない人物が、長谷寺を創建し「赤田の大仏」を建立した是山泰覚和尚です。
享保17年(1732年)に赤田で生まれた是山和尚は、幼い頃から数々の逸話が伝わる名僧でした。修行を重ねた後、赤田へ戻って不動庵を築き、人々の救済に尽力します。
天明の大飢饉という困難な時代には、人々の平安を願って長谷寺や赤田の大仏を建立し、地域の信仰の中心を築きました。また東光山では山籠もりを行い、厳しい修行を重ねたと伝えられています。
現在も登山道には、その修行の跡地や堂宇が残され、当時の信仰の雰囲気を感じながら歩くことができます。
東光山の登山口は、由利本荘市赤田地区から赤田大滝へ向かう途中にあります。県道69号線沿いの案内板を目印に山道を進むと駐車場があり、そこから登山が始まります。
登山コースは往復約2時間から2時間半ほどで、春から秋にかけて多くの登山者が訪れます。特に新緑の季節や紅葉の時期は、美しい景観を楽しめる人気のシーズンです。
道中にはブナや杉の天然林が広がり、山野草や野鳥など豊かな自然にも出会えます。森林浴を楽しみながら歩けるため、心身ともにリフレッシュできるコースとなっています。
東光山の登山道には、古くから信仰の対象となってきた多くの史跡があります。
四合目には病気平癒を祈願する薬師如来が祀られています。古くから地域の人々が健康を願って参拝を続けてきた場所であり、静かな森の中に神聖な空気が漂っています。
四合目から五合目の間には、是山和尚が山籠もりを行ったと伝わる場所があります。豊かな自然に囲まれた静寂の中で修行した姿を思い浮かべることができるでしょう。
五合目には毘沙門天を祀る毘沙門堂があります。登山途中の休憩場所としても利用されており、多くの登山者が安全登山を祈願して参拝します。
なお、登山道は堂の裏側へ続いているため、見落とさないよう注意が必要です。
七合目と八合目は、仏洞山や黒森山を望む遥拝所となっています。山々が織りなす雄大な景色は、古くから修験者や参拝者が祈りを捧げた神聖な場所でもあります。
標高約592.6メートルの山頂には、薬師瑠璃光如来を祀る社が建てられています。
山頂からは子吉川流域や由利本荘市街、日本海まで見渡すことができ、晴れた日には遠く鳥海山の美しい姿を望むこともあります。
静かな山頂で風景を眺めていると、長年この山が人々の信仰を集めてきた理由を実感できるでしょう。
東光山の麓には、落差約23メートルを誇る赤田大滝があります。
滝は途中で二つの流れに分かれ、大きな流れは「男滝」、小さな流れは「女滝」と呼ばれています。迫力ある水しぶきと豊かな緑が織りなす景観は、訪れる人を魅了します。
滝を形成する白っぽい岩は、およそ2300万年前から533万年前に海底火山の噴火によって生まれた流紋岩です。複雑な地質や断層活動によって現在の滝の姿が形成されたと考えられており、自然の歴史を感じられる場所でもあります。
かつては是山和尚をはじめとする修行僧が滝行を行った場所とも伝えられ、現在でも神秘的な雰囲気に包まれています。
東光山の登山口からほど近い場所には、日本三大長谷観音の一つとして知られる長谷寺の「赤田の大仏」があります。
高さ約9メートルの木造金箔押し十一面観音立像は、是山和尚が地域の平和と人々の幸福を願って建立したもので、東光山とともに赤田地域の信仰文化を代表する存在となっています。
東光山の登山と赤田大滝、さらに赤田の大仏をあわせて巡ることで、赤田地域の歴史や文化、自然をより深く体感することができます。
春には新緑と山野草が登山道を彩り、夏は深い森の涼しさを感じながら森林浴を楽しめます。秋にはブナ林や広葉樹が鮮やかに色づき、山全体が美しい紅葉に包まれます。
また、赤田大滝では季節ごとに異なる水量や景色が楽しめるため、何度訪れても新たな魅力に出会うことができます。
東光山へは日本海東北自動車道本荘インターチェンジから車で約25分、JR羽後本荘駅から車で約40分です。赤田大滝方面へ向かう道路沿いに登山口があり、駐車場も整備されています。
自然の中を歩くため、歩きやすい服装と登山靴の着用がおすすめです。夏季はアブなどの虫が多いため、虫除け対策を十分に行うと安心です。
東光山は、由利本荘市赤田地区に受け継がれてきた信仰の歴史と、豊かな自然を同時に体感できる貴重な山です。是山和尚の足跡をたどりながら歩く登山道には、地域の人々が大切に守り続けてきた文化や祈りが今も息づいています。
赤田の大仏や赤田大滝とともに訪れることで、自然・歴史・文化が一体となった赤田地域ならではの魅力をより深く味わうことができるでしょう。静かな山歩きを楽しみながら、由利本荘市を代表する霊峰・東光山の魅力をぜひ体感してみてください。