地名の由来と歴史
「龍飛崎」という名称にはいくつかの説があります。一つはアイヌ語の「タㇺ・パ」(tam-pa、刀の上端)に由来し、「突き出た地」を意味するとされる説です。また、岬一帯に吹き付ける強風の様子を「龍が飛ぶほどの風」と例えたことから「龍飛」と呼ばれるようになったとも伝えられています。
さらに古い伝説では、もともと「立火(たつひ)」や「立浜」と呼ばれていた土地で、源義経が平安時代末期に蝦夷地(北海道)へ渡ったという逸話が残されています。義経が乗ったとされる龍馬にちなんで「龍飛」と呼ばれるようになったという説もあり、岬の名には古代からの浪漫が宿っています。
龍飛崎の見どころ
龍飛埼灯台
龍飛崎の先端には龍飛埼灯台が立っています。真っ白な円形の大型灯台で、日本の灯台50選にも選ばれた名所です。
遊歩道が整備されており、灯台周辺からは津軽海峡を行き交う船や、北海道の松前半島まで望むことができます。渡り鳥の観察地としても知られ、バードウォッチングを楽しむ研究者や観光客が訪れる場所です。
太宰治と龍飛崎
文豪太宰治も龍飛崎にゆかりがあります。彼が宿泊した旧奥谷旅館は「龍飛岬観光案内所 龍飛館」として整備され、館内には太宰が滞在した部屋が再現されています。
また、太宰の紀行『津軽』の中では、竜飛集落の描写がユーモラスに表現されており、彼の作品を愛するファンにとっても特別な観光地です。
義経伝説の舞台
龍飛崎周辺には源義経北行伝説が残されています。岬の沖に浮かぶ「帯島」は、義経が蝦夷へ渡る際に帯を締めなおしたとされる地で、現在はコンクリート橋で陸とつながっています。島内には「竜飛弁天宮」が祀られており、歴史好きには見逃せないスポットです。
青函トンネルゆかりの地
龍飛崎は青函トンネルとも深い関わりがあります。北海道の白神岬との距離はわずか19.5kmで、その地下には本州と北海道を結ぶ青函トンネルが通っています。
周辺には「青函トンネル記念館」や「殉職者慰霊碑」があり、日本の土木史に残る大工事の歴史を学ぶことができます。さらに、掘削時に湧出した源泉を利用した「竜飛崎温泉」もあり、宿泊や日帰り入浴で旅の疲れを癒すことができます。
文化と音楽に登場する龍飛崎
龍飛崎は文学や音楽にもたびたび登場します。
石川さゆりの名曲「津軽海峡・冬景色」の歌詞には「竜飛岬」として登場し、演歌ファンにとっては聖地のような存在です。岬には歌碑があり、ボタンを押すと実際に楽曲が流れる仕掛けも人気です。
また、東北楽天ゴールデンイーグルスの公式球団歌「羽ばたけ楽天イーグルス」にも、青森県の象徴としてその名が歌われています。その他にも「竜飛崎」をタイトルとした楽曲が存在し、多くのアーティストに愛されてきた場所です。
周辺の観光スポット
竜飛崎シーサイドパーク
竜飛崎周辺には集合型の風力発電所があり、巨大な風車が並ぶ景観は迫力満点です。自然エネルギーを活用する地域の取り組みを間近に感じることができます。
竜飛崎温泉とホテル竜飛
宿泊施設の代表格はホテル竜飛で、青函トンネル工事が始まった1968年に開業しました。当初は工事関係者の事務所や宿舎としても利用され、現在では観光客に温泉と料理を提供する宿泊施設として人気です。
周辺には民宿も点在しており、アットホームな雰囲気で津軽の暮らしを体験することができます。
記念碑と文学碑
龍飛崎には多くの文学碑・記念碑が点在しています。
太宰治の『津軽』碑、石川さゆりの歌を記念した「津軽海峡・冬景色」歌謡碑、さらには吉田松陰、大町桂月、川上三太郎、佐藤佐太郎といった文化人に関連する碑もあり、文学と芸術の香りに包まれています。
アクセス情報
龍飛崎へは、青森市から車で約2時間、弘前市からは国道339号「龍泊ライン」を経由して約2時間半で到着します。ただし、龍泊ラインは冬季閉鎖されるため注意が必要です。
公共交通を利用する場合は、JR津軽線の三厩駅から外ヶ浜町循環バスに乗車し、約40分で到着します。鉄道とバスを組み合わせれば、観光客でも訪れやすい立地です。
まとめ
龍飛崎は、津軽半島の最北端に位置する壮大な岬であり、自然景観と歴史・文化の宝庫です。
源義経伝説や太宰治の文学、石川さゆりの歌に彩られたこの地は、ただの観光地にとどまらず、訪れる人に深い感動と物語を与えてくれます。
灯台や青函トンネル関連施設、温泉や文学碑など見どころも豊富で、津軽の魅力を余すことなく体感できる場所です。
青森を訪れる際は、ぜひ龍飛崎の雄大な景色と歴史に触れ、心に残る旅の思い出を作ってみてください。