白とミントグリーンが映えるルネサンス風建築
この建物は、木造2階建てのルネサンス風建築で、左右対称(シンメトリー)の美しい構造が特徴です。外観の白とミントグリーンの配色は非常に爽やかで、弘前の街並みに華やかな彩りを与えています。建物に使用された木材は、柱に青森県産の「けやき」、建具には同じく県産の「ひば」を用いるなど、地元の素材をふんだんに活かした点も大きな魅力です。
堀江佐吉による設計と施工
設計・施工を手がけたのは、弘前を代表する名棟梁堀江佐吉です。岩淵惟一頭取から「堀江さん、あんたが気がすむようなものをこしらえてくだされば、よござんしょう」と全面的な信頼を寄せられ、建築の一切を任されました。そのため、彼がこれまでに培った和洋折衷の技術と創意工夫が余すところなく盛り込まれています。総工費は約67,000円と当時の弘前市内の建築物に比べ非常に高額で、佐吉晩年の集大成といえる作品に仕上がりました。
保存に至るまでの経緯
昭和40年(1965年)、弘前支店の新築に伴い取り壊しの予定がありましたが、地元住民や商工会議所、文化財保護関係者の強い要望により保存が決定しました。解体を免れた建物は、元の位置から90度回転させて約50メートル移動させる「曳家」の工事によって現在の場所に移されました。その後、1967年に「青森銀行記念館」として公開され、2018年(平成30年)には青森銀行から弘前市に寄贈されています。
国の重要文化財への指定
1972年(昭和47年)、建物と棟札が国の重要文化財に指定されました。明治時代に建てられた数多くの洋風建築の中でも、構造的にも技術的にも非常に優れており、随所に独創的な工夫が施されていることが高く評価された結果です。
建築の特徴と内部の魅力
建物は2年半の工期をかけて完成しました。外観はルネサンス様式を基調としていますが、防火を意識して外壁は板張りの上に瓦を施し、さらに漆喰で仕上げるなど実用性も兼ね備えています。屋根や塔屋は和小屋組とトラスを組み合わせた折衷構造となっており、伝統技術と新しい建築技法の融合が見られます。
内部空間の工夫
1階には営業室や客溜り、頭取室や応接室が配置され、銀行としての実用性が重視されました。2階には大会議室と小会議室が設けられ、とくに大会議室は約14.5メートル四方の大空間で、柱を設けずに広いスペースを確保した画期的な設計となっています。天井には華やかな金唐革紙が用いられており、建築当時のまま現存している点は非常に貴重です。国内でもこの金唐革紙が現存する建築は数少なく、訪れる人々を魅了しています。
旧第五十九銀行本店本館の見どころ
- 白とミントグリーンの外観 – ルネサンス風の優美なデザインが目を引きます。
- 装飾塔と相輪 – 屋根にある展望台を兼ねた装飾塔には、インド寺院風の相輪が設けられています。
- 金唐革紙の天井 – 豪華な装飾が施された天井は必見です。
- 内部展示 – 昔の紙幣や貨幣、銀行関連資料などが展示され、歴史を学ぶことができます。
建築概要
設計: 堀江佐吉
竣工: 1904年(明治37年)
構造・規模: 木造2階建て、寄棟屋根桟瓦葺き、装飾塔付き
所在地: 青森県弘前市元長町26(青森みちのく銀行親方町支店脇)
文化財指定: 国の重要文化財(1972年指定)
交通アクセス
奥羽本線「弘前駅」からバスで約10分、「下土手町」で下車後、徒歩2分の便利な立地にあります。
まとめ
旧第五十九銀行本店本館は、堀江佐吉の最高傑作と称される完成度の高い和洋折衷建築であり、国の重要文化財として大切に守られています。外観の美しさはもちろん、内部の豪華な装飾や当時の銀行の姿を今に伝える展示資料など、見どころが豊富です。弘前を訪れる際には必ず立ち寄りたい観光スポットのひとつであり、明治時代の建築技術や文化を間近に感じることができます。