歴史と由来
嶽温泉の歴史は、江戸時代にまでさかのぼります。津軽藩4代藩主・津軽信政によって開かれたと伝えられ、以来およそ400年にわたって人々の湯治場として親しまれてきました。藩政時代には、藩士や庶民の心身を癒す場所として大切に利用され、長い歴史の中で温泉文化を育んできました。明治以降もその名は広まり、岩木山観光とともに発展していきました。
泉質と効能
嶽温泉の源泉は含土類酸性硫化水素泉で、泉温は約78度と非常に高温です。温泉街では、この源泉を80度以上の高温のものと45度前後の比較的ぬるめの源泉とを組み合わせて使用してきました。そのため、各宿ごとに泉質や入浴感に微妙な違いがあり、訪れるたびに異なる体験ができます。
効能としては、神経痛、リューマチ、糖尿病、婦人病、心臓病など幅広い症状に良いとされ、古くから湯治場として多くの人々に親しまれています。他の酸性泉と比べると肌あたりが優しく、年齢を問わず快適に入浴できるのも特徴です。
温泉街の風情
岩木山の山麓に広がる温泉街は、昔ながらの湯治場の雰囲気を色濃く残しています。伝統的な木造の旅館や、津軽の文化を体感できる現代的な旅館が立ち並び、宿ごとに趣の異なるおもてなしを楽しむことができます。いずれの宿でも日帰り入浴が受け付けられており、観光の途中で気軽に立ち寄れるのも魅力です。
また、温泉街の散策では、お土産店や青空市場が軒を連ね、名物の焼きとうもろこしが旅人を惹きつけます。特に「嶽きみ」と呼ばれるとうもろこしは甘みと風味に優れ、夏から秋にかけての名物グルメとして人気です。レトルト加工された嶽きみも販売されており、旅の思い出として持ち帰ることができます。
文化と名所
嶽温泉周辺は、作家・石坂洋二郎の小説『草を刈る娘』の舞台としても知られ、その美しい高原風景は文学作品の中でも描かれています。近隣には岩木山スキー場やパラグライダー練習場、運動公園なども整備され、四季を通じてスポーツやレジャーを楽しむことができます。岩木山登山の拠点としても利用され、多くの登山者や観光客で賑わいます。
また、隣接する百沢地区には津軽一ノ宮 岩木山神社があり、温泉と併せて参拝を楽しむ人も少なくありません。歴史や文化、自然と温泉が一体となった魅力が、この地域全体を彩っています。
湯めぐりの楽しみ
岩木山麓には、嶽温泉だけでなく百沢温泉、湯段温泉、羽黒温泉、三本柳温泉など、多彩な温泉地が点在しています。岩木山観光協会が提供する「湯めぐり手形」を利用すると、17か所の温泉のうち3か所で日帰り入浴を楽しめます。各温泉を巡ってスタンプを集める楽しさもあり、旅の記念品として手形を持ち帰ることもできます。
アクセス情報
車でのアクセスは、東北自動車道・大鰐弘前インターチェンジから約30分です。
公共交通機関では、JR弘前駅または弘前バスターミナルから弘南バス「枯木平」行きに乗車し、約50分で「嶽温泉」停留所に到着します。停留所からは徒歩数分で温泉街へアクセス可能です。
まとめ
嶽温泉は、歴史と伝統を誇る癒しの温泉郷です。硫黄の香りに包まれた湯に浸かり、雄大な岩木山の自然を眺めながら過ごす時間は、心身を癒す贅沢なひとときとなるでしょう。名物の「嶽きみ」や地元の食文化に触れ、周辺の自然や文化を楽しむことで、訪れる人々に忘れられない思い出を残してくれます。青森県を訪れる際には、ぜひ嶽温泉で歴史と自然の恵みを堪能してみてはいかがでしょうか。