種差海岸は、青森県八戸市の最東部、太平洋に面した美しい海岸です。
全長約12kmにわたる広大な海岸線は「三陸復興国立公園」の一部に含まれており、1937年には国の名勝にも指定されました。
天然の芝生が海辺まで広がる稀有な景観と、四季折々に咲き誇る650種を超える植物の群生、さらには奇岩や白砂の浜など、多彩な自然美を堪能できる日本有数の観光地です。
この地は「花の渚」とも呼ばれ、5月から10月にかけては季節ごとの草花が一斉に咲き誇ります。春のミチノクフクジュソウやサクラソウ、夏のニッコウキスゲやハマナス、秋のエゾミソハギやハマギクなど、多種多様な草花が訪れる人々の目を楽しませてくれます。
また、樹齢100年を超える松林や奇岩が点在し、ウミネコが飛び交う姿も見られるなど、海と緑と生命が織りなす風景はまるで絵画のようです。
春から初夏には野花が咲き乱れ、夏は海と芝生のコントラストが映える最も人気のシーズン。秋には野菊や紅葉が彩りを添え、冬は厳しくも雄大な太平洋の荒波が見られます。
どの季節に訪れても異なる表情を見せるため、年間を通して多くの観光客が訪れています。
最北部に位置する蕪島(かぶしま)は、ウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されています。例年3月から8月にかけて数万羽ものウミネコが飛来し、子育てを行う姿が観察できます。
島の頂には蕪嶋神社があり、地元の人々からは古くより漁業や航海安全の守り神として大切にされてきました。海鳥と神社が織りなす独特の景観は、ここでしか見られない光景です。
種差海岸の中心部に位置するこのエリアは、絶景スポットが数多く点在しています。
葦毛崎展望台は断崖の先端に建つ古城風の展望台で、幕末には異国船の監視所として、また太平洋戦争時には軍事拠点としても利用されました。現在では太平洋を一望できる名所として人気を集めています。
近くには鮫角灯台が白亜の姿を見せ、青空と海に映える景観は訪れる人を魅了します。
さらに、大須賀海岸では2.3kmにわたる白砂の浜が続き、「鳴き砂」と呼ばれる珍しい現象を体験できます。乾いた砂を踏むと「キュッキュッ」と音が鳴り、子どもから大人まで楽しめる人気スポットです。
種差海岸を代表する景勝地が種差天然芝生地です。波打ち際まで広がる芝生と太平洋の青が織りなすコントラストはまさに絶景。ここでは自由に寝転んだり散策したりでき、開放感に満ちた時間を過ごせます。
また、周辺には樹齢100年以上の松林「淀の松原」や、海鵜の糞によって白く染まった「白岩」など、特徴的な景観が点在しています。
最南部の大久喜には、昔の漁師の暮らしを偲ばせる茅葺き屋根の浜小屋が残されています。
また、巌島神社(弁天島)は東日本大震災で流失した鳥居がアメリカ西海岸に漂着し、後に返還・修復されたことで注目を集めました。歴史と人々の絆を感じられる場所です。
種差海岸は古くから文人墨客に愛されてきました。鳥瞰図絵師の吉田初三郎は別邸を構えて活動の拠点とし、日本画家東山魁夷はここでのスケッチを基に代表作「道」を描いたとされています。
また、作家司馬遼太郎は紀行文『街道をゆく』で種差海岸を絶賛し、「地球の美しさを教えるなら、まずここに案内したい」と綴っています。
自然の美しさに加え、芸術文化に大きな影響を与えてきたことも、この地の大きな価値といえるでしょう。
・JR八戸線「種差海岸駅」下車すぐ
・蕪島から種差海岸まで遊歩道が整備され、ハイキングを楽しみながら各エリアを巡ることができます。
・市内からはワンコインバス「うみねこ号」も運行しており、短時間で効率よく周遊できます。
ベストシーズンは5月〜10月。この時期は花々が咲き誇り、緑の芝生と青い海のコントラストが最も美しく映えます。
ただし冬季もまた別の趣があり、荒波や雪景色に包まれた海岸美を楽しむことができます。
種差海岸は、青と緑が織りなす絶景、豊かな植物群落、歴史や文化をも兼ね備えた特別な場所です。
市街地からわずか30分で訪れることができる「自然の楽園」であり、散策やハイキング、写真撮影、そして心を癒すひとときを過ごすのに最適な観光スポットです。
八戸を訪れる際には、ぜひ足を運んで五感でその魅力を体験してみてください。