八戸市博物館は、青森県八戸市に位置する市営の博物館です。市民の歴史や文化を広く紹介するだけでなく、訪れる人々に八戸の魅力を深く知ってもらうための拠点となっています。立地は、中世南部氏の居城跡である根城の敷地内で、周囲には「根城の広場」や復元された中世の住居があり、歴史を肌で感じられる環境にあります。
博物館は八戸市根城にあり、国指定史跡・根城跡に隣接しています。周辺には広々とした根城の広場が整備され、中世の館や家屋が復元されているため、博物館の見学と合わせて歴史散策を楽しむことができます。地域の歴史と自然が融合した、観光と学びの両方を体験できる環境が整っています。
八戸市博物館が開館する以前、八戸市内の埋蔵文化財は「是川考古館」や「八戸市歴史民俗資料館」に収蔵されていました。しかし、市制50周年を記念した事業の一環として、より大規模で体系的な展示を行う博物館の建設が決定されました。
博物館には、土偶や土器、古代の太刀、農具や漁具、そして八戸を代表する祭りに関する資料など、約1万点もの収蔵品があります。展示は大きく「考古」「中世・近世」「近代」「無形文化」の分野に分かれており、それぞれが八戸の歴史文化を多角的に紹介しています。
縄文時代から近世までの遺物が展示されており、特に注目されるのは風張1遺跡から出土した「合掌土偶」です。この土偶は1997年に重要文化財に指定された後、2009年には国宝に指定されました。祈りの姿を表現したユニークな造形は、縄文人の精神文化を今に伝えています。現在は是川縄文館に展示されていますが、博物館でも詳細な解説が行われています。
また、丹後平古墳群出土品も重要文化財として展示されており、飛鳥時代から平安時代にかけての貴重な副葬品群を間近で見ることができます。精緻な金属加工や祭祀に関わる土器が、古代東北の姿を物語っています。
八戸藩を治めた根城南部氏に関連する古文書や武具、生活用品が展示されています。さらに、盛岡南部氏から分かれた八戸藩2万石の歴史を、絵画や八戸城の復元模型、鶴姫の婚礼調度品などで紹介。戦国から江戸時代にかけての八戸の姿を知ることができます。
近代の展示では、重要有形民俗文化財「八戸及び周辺地域の漁撈用具と浜小屋」の一部が収蔵・展示されています。八戸が漁業の街として発展してきた歴史を、実物資料を通じて理解することができます。
2014年のリニューアルで新設された「無形展示資料室」では、南部地方の昔話や民謡、方言などを知ることができます。また、最新の展示システム「はちのへ発見伝」では、映像や音声を交えて八戸市内の小中学校の校歌や伝統芸能、祭り、観光情報などをタッチパネルで楽しむことができます。
博物館の目の前には南部師行騎馬像が建立され、訪れる人々を出迎えます。根城の広場とあわせて散策することで、中世から現代に至る八戸の歩みを一度に体感できます。歴史ファンはもちろん、家族連れや学校の学習旅行にも最適なスポットです。
八戸市博物館は、縄文時代から近代に至るまでの八戸の歴史と文化を網羅的に紹介する、市民の誇りともいえる施設です。考古学的な出土品から漁業文化、祭りや方言といった無形の文化まで幅広く学べる展示内容は、訪れるたびに新たな発見を与えてくれます。根城の広場とあわせて訪れることで、歴史の旅をより一層楽しむことができるでしょう。