「ランプの宿」と呼ばれる理由
青荷温泉には1軒の旅館があるのみで、そこではあえて電気の使用を制限し、客室や浴場は灯油ランプの灯りだけで照らされています。宿泊客が満室となる日には、およそ140個のランプが点灯され、スタッフ総出で2時間ほどかけて準備を行うといわれています。電気やテレビ、携帯電話の電波すら届かないこの環境は、現代ではかえって贅沢な体験とされ、多くの旅行者を惹きつけています。
泉質と効能
青荷温泉の泉質は単純温泉で、源泉温度は45~60度。無色透明で肌にやさしい湯ざわりが特徴です。効能としては、神経痛・リューマチ・疲労回復などに良いとされ、幅広い年齢層の方々から支持されています。豊かな自然に囲まれながら入浴すれば、湯の効能と渓谷の静寂が重なり、心身ともにリフレッシュできます。
4つの趣ある湯処
青荷温泉には、特色の異なる4つの湯処があります。いずれも源泉かけ流しで、自然の恵みをそのまま堪能できます。
健六の湯
総ヒバ造りの浴場で、木のぬくもりに包まれながら湯浴みを楽しめます。ヒバの香りが心地よく、ゆったりとした時間を過ごせます。
本館内湯
落ち着いた雰囲気の内湯で、宿泊者にとっては最も利用しやすい浴場です。ひっそりと湯に浸かりながら、日々の疲れを癒せます。
滝見の湯
吊り橋を渡った対岸に位置し、内湯と露天風呂を併設。名前の通り、渓流と滝を眺めながら入浴できる贅沢なロケーションです。
露天風呂
自然の岩を生かした野趣あふれる造りで、四季折々の風景を楽しめます。混浴ですが、女性専用の時間帯も設けられているため、安心して利用できます。秋には紅葉、冬には雪見風呂と、訪れる季節ごとに異なる風情を味わえます。
山の幸を味わう郷土料理
宿の楽しみのひとつは、地元で採れた旬の食材をふんだんに使った素朴な郷土料理です。川魚の岩魚や山菜を中心にした料理は、豪華ではないものの心を満たしてくれる味わいがあります。食事は大広間で供され、宿泊客が一堂に会していただく形式となっており、どこか懐かしい雰囲気が漂います。
「何もない」という贅沢
青荷温泉の大きな魅力は、日常にある便利さを手放すことで得られる静寂にあります。客室には電源コンセントがなく、テレビもありません。携帯電話は圏外で、インターネットも使用できません。夜になるとランプが静かに灯り、館内の廊下や広間には幻想的な光が揺らめきます。この空間では、自然の音や人の声、そして自分自身の心に耳を傾ける時間が流れていきます。
歴史
青荷温泉の歴史は1929年(昭和4年)にさかのぼります。黒石温泉郷の板留温泉に生まれた歌人・丹羽洋岳が、小屋を建てて暮らし始めたのが始まりとされています。その後、秘湯として知られるようになり、現在では「ランプの宿」として全国に名を広めました。
アクセス
青荷温泉は櫛ヶ峯と雷山に挟まれた窪地にあり、自然の中にひっそりと佇んでいます。車だけでなく公共交通機関でもアクセス可能です。弘南鉄道弘南線「黒石駅」から弘南バス虹の湖線・温川線に乗車し、「虹の湖公園前」で下車後、宿の送迎バスを利用することができます。冬季には雪上車による送迎もあり、これ自体が特別な体験として人気です。沖浦温泉からは東に約4キロメートルの距離に位置しています。
まとめ
青荷温泉は、現代社会では得難い「静けさ」と「自然」を存分に味わえる温泉です。ランプの灯りがつくり出す幻想的な空間で、源泉かけ流しの湯に浸かり、山の幸に舌鼓を打つ。電気も電波もない環境だからこそ、心からリラックスできる贅沢な時間が流れます。秘境の青荷渓谷にひっそりと佇むこの宿は、訪れる人々に忘れられない体験を与えてくれることでしょう。都会の喧騒から離れ、自然と一体になる旅を望む方に、青荷温泉は最適な場所です。