芦ノ牧温泉は、福島県会津若松市に位置し、会津の奥座敷として古くから人々に親しまれてきた温泉地です。温泉街は大川羽鳥県立自然公園内にあり、阿賀川を望む美しい高台に広がっています。その開湯はおよそ1200年前にさかのぼり、行基上人によって発見されたと伝えられています。かつては山奥の秘湯として「幻の温泉郷」と呼ばれていましたが、戦後に国道沿いが整備され、現在のような温泉地として発展を遂げました。
温泉街に足を踏み入れると、まず迎えてくれるのが「出会いの湯滝」です。自然の中にたたずむ滝は訪れる人々を和ませ、温泉地ならではの情緒を感じさせてくれます。さらに温泉街には「子宝の湯」や「足湯 足ポッポ」など、気軽に利用できる足湯スポットが点在しており、散策しながら立ち寄るのも楽しい時間となります。また、木々に囲まれた「いちいの小路」と呼ばれる遊歩道では、四季折々の自然を感じながら森林浴が楽しめます。
芦ノ牧温泉では、宿泊者限定で購入できる「湯めぐり手形」が用意されています。この手形を利用することで、異なる旅館のお湯を巡り、それぞれの趣を持つ浴場を体験できます。泉質は塩化物泉や単純温泉で、源泉温度は約60℃。身体を芯から温め、湯冷めしにくい特徴があり、旅の疲れを癒すには最適です。
温泉街には8軒の旅館やホテルが並び、それぞれ趣向を凝らしたおもてなしで訪れる人々を迎えています。特に有名なのが「大川荘」で、館内の構造が人気アニメ『鬼滅の刃』に登場する「無限城」に似ていると話題を呼び、多くの観光客が訪れるきっかけとなっています。そのほか、「丸峰」や「芦ノ牧グランドホテル」、「不動館 小谷の湯」など、歴史ある宿から現代的なホテルまで、多彩な選択肢が揃っています。
温泉街には足湯のほか、子宝祈願で知られる「金精神社」があり、良縁や子授けを願う人々の参拝が絶えません。また、周辺には豊かな自然を感じられる散策路が整備されており、湯治だけでなく、のんびりと自然を楽しむ観光地としても人気です。
芦ノ牧温泉の歴史は古く、開湯は1200年前ともいわれます。伝説によれば、行基上人がこの地で温泉を発見したとされ、異説として弘法大師空海が発見したとも伝わります。温泉名の「芦ノ牧」は、かつて蘆名氏の牧場が付近に存在したことや、温泉街を流れる大川が渦を巻いていた様子に由来するといわれています。
江戸時代までは地元の人々に利用される程度の小さな温泉でしたが、1902年(明治35年)に道路が開通すると外部からの訪問客も増え、温泉地として本格的に発展しました。戦後の観光ブームとともに宿泊施設や道路が整備され、今日のようなにぎわいを見せる温泉街となったのです。
最寄り駅は会津鉄道の芦ノ牧温泉駅で、駅から温泉街までは約4km離れています。各宿泊施設が送迎バスを運行しており、15分ほどでアクセスできます。駅周辺には宿泊施設がないため、訪れる際は宿の送迎を利用するのが一般的です。
会津若松駅からは会津バスが運行しており、芦ノ牧温泉駅入口や各旅館前に停車します。さらに季節限定で、会津若松と白河を結ぶ観光路線バスも運行され、大内宿や湯野上温泉とあわせて観光を楽しむことも可能です。
芦ノ牧温泉を訪れる人々の心を和ませる存在として知られるのが、猫の名誉駅長たちです。2008年、駅に住み着いていた猫「ばす」が初代名誉駅長に任命されました。その後、後任として「らぶ」「ぴーち」などが駅長や施設長を務め、2023年には「さくら」が名誉駅長に就任しています。駅舎内にはグッズや猫御朱印の販売、さらに「Cafe ばす」と呼ばれるカフェが設けられ、猫駅長にちなんだメニューを楽しむこともできます。
芦ノ牧温泉駅は相対式ホームを持つ小さな木造駅舎で、ホーム間は踏切で結ばれています。待合室はアットホームな雰囲気で、猫駅長に関連した展示やグッズ販売が旅の思い出を彩ります。訪れる人々は温泉とともに、駅の温かい雰囲気に触れることができます。
芦ノ牧温泉は、千年以上の歴史を誇る由緒ある温泉でありながら、自然に囲まれた落ち着いた雰囲気を楽しめる温泉郷です。宿泊者向けの湯めぐり、散策路や足湯、さらに「猫駅長」のいる芦ノ牧温泉駅など、他にはない魅力にあふれています。会津若松市内からのアクセスも良好で、観光と温泉の両方を楽しめるこの地は、訪れる人々に心からの癒しと温かさを提供してくれるでしょう。