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桜櫓館(旧櫻場家住宅)

(おうろかん)

昭和初期の趣と匠の技が息づく大館の名建築

桜櫓館は、秋田県大館市にある国登録有形文化財で、昭和初期を代表する貴重な近代和風住宅です。大館町長を務めた櫻場文蔵氏の私邸として昭和8年(1933年)に建築され、現在では歴史的建造物として一般公開されているほか、市民や観光客が親しめる文化交流の場として活用されています。

大館市の中心部に位置しながらも、往時の面影を色濃く残す桜櫓館は、度重なる大火によって多くの歴史的建築が失われた旧市街地において、奇跡的に現存する数少ない本格木造建築です。その優れた建築技術や歴史的価値が評価され、平成11年(1999年)には国登録有形文化財に登録されました。

大館の発展を支えた櫻場文蔵氏の私邸

桜櫓館は、大館市制施行前の最後の町長を務めた櫻場文蔵(さくらばぶんぞう)氏の邸宅として建てられました。櫻場氏は地域の発展に尽力した人物であると同時に、秋田犬保存会の第3代および第6代会長を務め、秋田犬の保護・繁殖・普及に大きく貢献したことでも知られています。

現在、秋田犬が世界的に知られる存在となった背景には、櫻場氏をはじめとする先人たちの努力があり、桜櫓館はその歴史を今に伝える貴重な建物でもあります。

展望台が象徴する独創的な建築美

桜櫓館の最大の特徴は、二階の屋根から突き出るように設けられた展望台(塔屋)です。四方にガラス窓を配したこの展望台は、まるで櫓のような外観を持ち、建物全体に独特の存在感を与えています。

櫻場氏が町長選挙に出馬した当時、この建物はまだ建築途中だったといわれています。その後、町長に就任した櫻場氏は、この展望台から町並みを眺めながら地域の将来や町政について思いを巡らせていたと伝えられています。

「桜櫓館」という名称も、この特徴的な展望台の「櫓」と、桜の名所である桂城公園および櫻場家の「桜」を組み合わせて名付けられました。大館の歴史と文化を象徴する名前として、多くの市民に親しまれています。

昭和初期の職人技が息づく館内

建物は木造二階建ての和風住宅を基本としながら、洋室を取り入れた当時としては先進的な設計となっています。設計は石田常吉氏と小野熊蔵氏が担当し、大工棟梁は越後甚吉氏が務めました。

内部には秋田杉をはじめとする良質な木材がふんだんに使用されており、建築当時の高度な技術と美意識を随所に見ることができます。

特に注目したいのは、継ぎ目のない長尺材を用いた床板や長押(なげし)、そして太く力強いケヤキの大梁です。現在では入手が難しいほどの大径木が惜しみなく使われており、建物全体に重厚感と品格を与えています。

また、各部屋の付書院や障子、欄間、階段の手すりなどには、熟練した職人による繊細な細工が施されています。木の質感を活かした意匠は見応えがあり、日本建築の美しさを改めて感じさせてくれます。

格式を感じさせる玄関と和風建築の魅力

桜櫓館を訪れた際には、ぜひ玄関にも注目してみてください。玄関には武家屋敷などに見られる格式高い「起り破風(むくりはふ)」が採用されており、優雅な曲線が建物全体の風格を高めています。

また、建物は京間(一間約1.91メートル)で造られているため、一般的な住宅よりもゆったりとした空間が広がっています。各部屋に足を踏み入れると、開放感と落ち着きが共存する上質な和の空間を体感することができます。

大火を乗り越えた貴重な歴史遺産

大館市の旧市街地は歴史的に何度も大火に見舞われ、多くの建築物が失われてきました。そのような中で桜櫓館は焼失を免れ、昭和初期の本格的な木造住宅として現在まで残されてきました。

さらに昭和55年(1980年)には、大館郵便局の新築工事に伴い、建物を解体せずにそのまま移動させる「曳家(ひきや)」工法によって現在地へ移築されました。建物の保存に対する地域の強い思いがあったからこそ、今日までその姿を保ち続けているのです。

「開かれた文化財」として新たな魅力を発信

近年、桜櫓館は単なる文化財として保存されるだけでなく、「開かれた有形文化財」として新たな活用が進められています。

令和2年度には耐震補強工事が行われ、令和3年から見学や貸館利用が再開されました。現在では文化活動や展示会、講演会などにも利用され、市民の交流拠点として親しまれています。

さらに2024年度からは、館内に「OROKAN CAFE(オウロカンカフェ)」がオープンしました。歴史ある建築空間の中で、厳選されたシングルオリジンコーヒーやドリンクを楽しむことができ、観光客だけでなく地元の人々にも人気を集めています。

静かな和の空間で過ごす時間は格別で、勉強や仕事、読書などにも利用できる落ち着いた環境が整っています。文化財の中でカフェを楽しめるという新しい体験は、桜櫓館ならではの魅力といえるでしょう。

大館観光で訪れたい歴史と文化の名所

桜櫓館は、建築美や歴史的価値だけでなく、大館の近代史や文化を知ることができる貴重な観光スポットです。館内を見学しながら職人技の素晴らしさに触れ、展望台や各部屋の意匠をじっくり鑑賞することで、昭和初期の豊かな暮らしや美意識を感じることができます。

また、近くには桂城公園や大館市役所、大館郵便局などもあり、市街地散策の途中に立ち寄るのにも最適です。

歴史と文化、そして現代的な活用が見事に融合した桜櫓館は、大館を訪れた際にぜひ足を運びたいスポットの一つです。国登録有形文化財ならではの趣ある空間で、ゆったりとした時間を過ごしながら、大館の魅力を深く味わってみてはいかがでしょうか。

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名称
桜櫓館(旧櫻場家住宅)
(おうろかん)
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