薄皮饅頭の特徴
薄皮饅頭の魅力は、その名の通り「皮が薄く餡がたっぷり」という点にあります。黒糖を練り込んだ香ばしい皮が、なめらかで上品な餡の風味を一層引き立てています。通常の饅頭に比べ、皮が薄い分だけ餡が主役となり、口いっぱいに広がる豊かな甘みを楽しめます。甘いながらもくどさがなく、すっきりとした後味が特徴です。
2種類の味わい
現在、薄皮饅頭には大きく分けて「こしあん」と「つぶあん」の2種類があります。
- こしあん:なめらかで口どけのよい上品な甘さが特徴。お茶との相性が抜群です。
- つぶあん:小豆本来の風味と、豆の粒感を活かしたやさしい食感が楽しめます。
同じ形をしていても、味わいは大きく異なり、食べ比べる楽しみも薄皮饅頭の魅力のひとつです。
多彩な食べ方
そのままいただくのはもちろんのこと、薄皮饅頭はさまざまな食べ方で楽しむことができます。
- オーブンやトースターで軽く焼いて香ばしく
- 凍らせて冷菓風に楽しむ
- 衣をつけて天ぷらにして味わう
- お茶漬けにして意外な風味を楽しむ
このように自由な発想で楽しめるのも、薄皮饅頭の奥深さを感じさせます。
薄皮饅頭の歴史
江戸時代の誕生
薄皮饅頭の歴史は、嘉永五年(1852年)に遡ります。初代・本名善兵衛(ほんなぜんべえ)が、奥州街道の郡山宿で「薄皮茶屋」を開き、旅人たちに提供したのが始まりです。当時の東北地方の饅頭は厚い皮に粒あんを包んだ素朴なものでしたが、皮を極限まで薄くし、上質なこしあんをたっぷり詰めた薄皮饅頭は画期的で、瞬く間に人気を集めました。
明治以降の発展
1887年(明治20年)、東北本線郡山駅が開業すると、駅弁とともに薄皮饅頭が販売され、その名は東京にまで広まりました。
また、明治時代後期には「旅は磐梯、みやげは薄皮」というキャッチフレーズで全国的に知られる存在となり、観光ブームとともにさらに人気を高めました。
戦争と復興
第二次世界大戦中には、原材料不足や企業整備令により一時的に製造が休止されました。しかし戦後、品質のよい材料が手に入るとすぐに製造が再開され、薄皮饅頭は再び福島を代表する銘菓として復活しました。
現代への継承
2010年には郡山市で行われた「春のまんじゅう祭り」において、重さ159kgの巨大薄皮饅頭が作られるなど、話題を呼びました。
また、2011年の東日本大震災では一時的に生産が困難になりましたが、北海道の六花亭から支援を受けて販売を継続し、全国からの温かい応援を受けたことも記憶に新しい出来事です。
柏屋の歩みと文化活動
柏屋の沿革
薄皮饅頭を生み出した株式会社柏屋は、1852年に創業した老舗和菓子店です。和菓子の製造販売を中心に、時代の変化に合わせて事業を広げてきました。1952年に法人化し、1970年代には本店ビルを竣工、さらに1992年には「株式会社柏屋」として現在の社名となりました。
主な沿革
- 1852年 – 初代本名善兵衛が郡山宿で創業
- 1888年 – 郡山駅前に移転、駅売りを開始
- 1943年 – 戦時統制により休業
- 1948年 – 製造再開
- 1952年 – 法人化、有限会社柏屋本店設立
- 1978年 – 株式会社薄皮饅頭柏屋に改称
- 1992年 – 株式会社柏屋に商号変更
- 2014年 – 本店を建替え、営業再開
和菓子と洋菓子の展開
柏屋は薄皮饅頭だけでなく、檸檬(れも)やくるみゆべしもちずり、胡桃、花ことばなど、個性豊かな和菓子を提供しています。また、シュークリームやケーキといった洋菓子も製造販売しており、幅広い年代から支持を集めています。
文化活動と地域貢献
柏屋は単に和菓子を販売するだけでなく、地域文化の継承にも力を注いでいます。
例えば、毎月1日に行われる朝茶会や、毎年4月に萬寿神社で開催されるまんじゅう祭り、さらには児童詩集「青い窓」の発行など、地域社会に根差した活動を続けています。
また、薄皮饅頭の手作り体験も行っており、観光客や子どもたちに和菓子文化を体感する機会を提供しています。
観光と薄皮饅頭
福島県を訪れる観光客にとって、薄皮饅頭は単なるお菓子ではなく、郷土の歴史と文化を体感できる特別なお土産です。奥州街道を往来した旅人が味わった当時の気持ちを想像しながら口にすることで、旅がより一層豊かになります。
また、現在では郡山市内だけでなく福島県各地、さらには首都圏の百貨店などでも購入できるようになり、多くの人々にその味が届いています。
まとめ
柏屋の薄皮饅頭は、159年以上の歴史を誇る福島県の銘菓です。薄い皮とたっぷりの餡という特徴的な姿は、江戸時代から現代まで変わらず愛され続けてきました。観光客にとっては旅の思い出を彩るお土産であり、地元の人々にとっては日常に寄り添う味わいです。
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