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根津美術館

(ねづびじゅつかん)

趣ある和モダンな建築と庭園

根津美術館は、東京都港区南青山に位置する私立美術館で、日本の歴史的な美術館の一つです。美術館の開館は1941年(昭和16年)11月で、その設立は東武財閥の創設者である初代根津嘉一郎が収集した古美術品のコレクションを基にしています。第二次世界大戦以前から存在する貴重な私立美術館として、藤井斉成会有鄰館、大倉集古館、白鶴美術館、大原美術館などと並び称されます。

収蔵品の豊かさと多様性

根津美術館は、日本や東洋の古美術品を数多く所蔵しており、そのコレクションは7,000点を超えます。中でも国宝7件、重要文化財87件、重要美術品94件が含まれており、絵画、書跡、彫刻、陶磁、漆工、金工など、多岐にわたる美術品が展示されています。これらの収蔵品は、訪れる人々に日本美術の豊かさと深さを感じさせるものです。

また、美術館に隣接する17,000平方メートルの日本庭園は、四季折々の風景を楽しめる散策スポットとしても知られています。庭園内には茶室や薬師堂などの建物が点在し、訪れる者に静寂と癒しの空間を提供しています。

建築の魅力と隈研吾による設計

根津美術館の展示棟は、モダンな建築と和の趣が見事に融合したデザインが特徴で、日本を代表する建築家・隈研吾の設計によって2009年に新装開館しました。この建物は、鉄骨鉄筋コンクリート構造を持ち、地上2階・地下1階で構成されています。寺院建築を思わせる切妻造の屋根が特徴的で、内部には広々としたホールや展示室、ミュージアムショップが設けられています。

1階のホールは、庭園に面した南側の壁面が全面ガラス張りとなっており、自然光がたっぷりと差し込む空間です。ここには、北斉時代の白大理石製如来立像(総高291cm)をはじめ、中国の石仏が常設展示されています。また、展示室は1階と2階に分かれており、1階には企画展示室や絵画・書跡を展示するスペースが、2階には仏像、中国青銅器、工芸品、茶道具が展示されています。

初代根津嘉一郎とその収集活動

初代根津嘉一郎は「東の鉄道王」として知られる明治時代の実業家であり、政治家や茶人としても名を馳せました。彼は日本や東洋の古美術品を幅広く収集し、そのコレクションは質・量ともに非常に高い評価を受けています。美術館が開館した1941年当初は4,643点の作品が展示・保存されていましたが、その後も収蔵品は増加を続け、2009年時点で6,874件、2016年3月末時点では7,420件に達しました。

このコレクションには、仏教絵画、写経、水墨画、近世絵画、中国絵画、漆工、陶磁器、日本刀とその刀装具、中国古代青銅器など、多岐にわたるジャンルの一級品が揃っています。特に、光村利藻が収集した「光村コレクション」の刀装具約1,200点が所蔵されている点は、根津嘉一郎の収集活動の広がりと質の高さを物語っています。

根津美術館の敷地と歴史

根津美術館が位置する場所は、かつて江戸時代に河内国丹南藩の藩主・高木家の江戸下屋敷があった場所です。江戸幕府が滅びた後、高木家は京都に戻り、屋敷は荒廃しましたが、その後、初代根津嘉一郎が1906年(明治39年)にこの地を取得し、邸宅と庭園を建設しました。彼の没後、その邸宅は美術館に改装され、現在の根津美術館の基礎が築かれました。

施設の変遷と現代の本館

初代本館の誕生と戦災

初代根津嘉一郎の家督を継いだ2代目根津嘉一郎は、1940年(昭和15年)に財団法人根津美術館を設立し、翌年11月に邸宅を改装した美術館を開館しました。しかし、この初代本館は1945年(昭和20年)の戦災で大部分が焼失しました。

二代目本館の再建と発展

二代目本館は、1954年(昭和29年)9月に竣工・開館し、1964年(昭和39年)には増築されました。この時期に美術館はさらなる発展を遂げ、多くの収蔵品が展示されましたが、2006年(平成18年)に取り壊し工事が始まり、美術館は休館しました。

現本館(三代目本館)の開館

現在の本館は、2009年(平成21年)2月28日に竣工し、同年10月7日に開館しました。この新しい本館は、隈研吾が設計・監理を手掛け、施工は清水建設が担当しました。建築面積は1,947㎡、延床面積は4,014㎡で、地上2階・地下1階の鉄骨鉄筋コンクリート構造となっています。この新しい本館は、第52回BCS賞や第51回毎日芸術賞を受賞しており、現代建築の傑作としても評価されています。

庭園と文化財の魅力

自然と歴史が調和する庭園

美術館に隣接する庭園は、初代根津嘉一郎の邸宅の庭園を基にしており、自然の傾斜を活かした池を中心とした日本庭園です。庭園内には4棟の茶室や薬師堂などの建物が点在し、石仏や石塔、石灯籠が配置されています。訪れる者は、静寂と安らぎを感じながら日本の美意識を堪能することができます。

特に、尾形光琳の「燕子花図屏風」を所蔵していることで知られ、庭園の一角にはカキツバタが群生しており、花の季節には作品と実物を共に鑑賞することができます。このように、庭園と美術品が一体となった体験が、根津美術館の大きな魅力です。

重要文化財と特別な収蔵品

根津美術館は、日本および東洋の古美術品を多く所蔵する美術館として知られ、そのコレクションは7,000点を超えています。この中には国宝7件、重要文化財87件、重要美術品94件が含まれており、絵画、書蹟、彫刻、陶磁、漆工、金工など、多岐にわたる分野の美術品が揃っています。その中でも、鎌倉時代の「那智滝図」や尾形光琳の「燕子花図」などは特に有名です。

国宝に指定された貴重な作品

那智滝図

那智滝図は、絹本著色で描かれた作品で、鎌倉時代に制作されました。この作品は1951年(昭和26年)6月9日に国宝に指定され、その美しさと歴史的価値が高く評価されています。

燕子花図 尾形光琳筆

燕子花図は、江戸時代の18世紀に尾形光琳が描いた六曲一双の屏風絵です。この作品は1951年に国宝に指定され、毎年4月下旬から5月上旬にかけて、カキツバタの開花に合わせて公開されます。館内の庭園にはカキツバタが栽培されており、作品と実物の花を同時に鑑賞できる特別な機会となっています。

漁村夕照図 伝牧谿筆

漁村夕照図は、南宋時代の13世紀に描かれた紙本墨画で、1954年に国宝に指定されました。この作品には「道有」の鑑蔵印があり、その価値を一層高めています。

鶉図 伝李安忠筆

鶉図は、南宋時代に伝李安忠によって描かれた絹本著色の作品で、1953年に国宝に指定されました。この作品は「雑華室印」を持ち、その精緻な表現が特徴です。

禅機図断簡(布袋図) 因陀羅筆

禅機図断簡(布袋図)は、因陀羅筆による南宋時代の紙本墨画で、1953年に国宝に指定されました。この作品には楚石梵琦の賛が添えられており、その宗教的な価値も高く評価されています。

根本百一羯磨 巻第六

根本百一羯磨 巻第六は、奈良時代(8世紀)の仏教経典で、1951年に国宝に指定されました。その古さと保存状態の良さが評価されています。

無量義経・観普賢経(装飾経)

無量義経・観普賢経(装飾経)は、平安時代(11世紀半ば)の仏教経典で、それぞれ1952年と1975年に国宝に指定されました。これらの経典は、装飾性が高く、仏教美術の頂点を示す作品として知られています。

重要文化財に指定された絵画と彫刻

仏教絵画

根津美術館には、数多くの仏教絵画が所蔵されています。その中でも、平安時代や鎌倉時代に描かれた仏教画は特に重要であり、歴史的価値が高い作品が揃っています。例えば、大日如来像、釈迦如来像、愛染明王像、大威徳明王像、仏涅槃図などがその代表です。これらの作品は、日本の仏教美術の発展を示す貴重な資料として、国内外から注目されています。

絵巻と水墨画

根津美術館のコレクションには、鎌倉時代の「天狗草紙」や「十二因縁絵巻」などの絵巻物が含まれています。また、水墨画では、祥啓、周文、真芸、曽我紹仙などの名筆による山水図や観瀑図が所蔵されています。これらの作品は、日本の絵巻文化や水墨画の美を伝える貴重な資料です。

近世絵画と中国画

根津美術館の近世絵画には、円山応挙の「藤花図」や鈴木其一の「夏秋渓流図」が含まれています。また、中国画では、馬麟の「夕陽山水図」や呂敬甫の「瓜虫図」などが収蔵されています。これらの作品は、時代や国境を超えて美術の交流が行われたことを示す重要な資料です。

彫刻と工芸品

根津美術館には、仏像や工芸品も豊富に所蔵されています。彫刻では、久安3年(1147年)の快助作「木造地蔵菩薩立像」や北魏時代の「銅造釈迦如来・多宝如来並坐像」などが注目されています。また、工芸品では、中国・朝鮮陶磁や日本陶磁、漆工、金工の作品が展示されています。これらの作品は、日本と東洋の工芸技術の高さを物語るものであり、美術館の貴重な財産です。

書跡典籍と考古資料

仏典と書跡

根津美術館には、奈良時代や平安時代の仏典が数多く所蔵されています。これらの仏典は、当時の宗教思想や書道の技術を伝える貴重な資料です。また、藤原為氏や飛鳥井雅経などの名筆による書跡も展示されており、書道の歴史と美を感じることができます。

中国考古資料

根津美術館には、中国の考古資料も数多く所蔵されています。特に、饕餮文(とうてつもん)が施された方盉(ほうか)や斝(か)、尊(そん)などの青銅器は、古代中国の文化と技術を伝える重要な資料です。これらの考古資料は、古代中国の文明を深く理解するための鍵となる貴重な財産です。

結び

根津美術館は、日本の古美術を堪能できる貴重な場所であり、その収蔵品や庭園は多くの訪問者に感銘を与えています。歴史ある建物と美しい庭園が調和し、訪れる者に日本文化の深さと美しさを伝えるこの美術館は、今後も多くの人々に愛され続けることでしょう。根津美術館を訪れることで、日本の歴史と文化に触れる貴重な体験が得られることは間違いありません。

Information

名称
根津美術館
(ねづびじゅつかん)
Nezu Museum
リンク
公式サイト
住所
東京都港区南青山6-5-1
電話番号
03-3400-2536
営業時間

10:00〜17:00 入館は16時30分まで

定休日

月曜日(祝日の場合、翌火曜日)
展示替期間・年末年始

料金

コレクション展
一般 1100円
学生【高校生以上】800円
小中学生 無料

特別展
一般 1300円
学生【高校生以上】1000円
小中学生 無料

アクセス

東京メトロ:表参道駅から徒歩で5分

エリア
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カテゴリ
美術館・ミュージアム・ギャラリー 庭園・フラワーガーデン

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