奇抜な仕掛けがある建物
妙立寺の本堂は、外観からは想像もつかないほどの秘密と驚きが詰まった寺院です。
外観は2階建てのように見えますが、実際には4階建て7層構造となっています。
23の部屋と29の階段があり、その中には隠し階段や落とし穴、見張り台、さらには金沢城へと続く地下通路など、外敵を欺くための様々な仕掛けが存在します。
敵の見張り台
本堂の屋根の先端部分にはガラス張りの物見台があり、加賀平野を一望できるため、敵の動きを素早く察知することができました。ここから金沢城と明かりによる、連絡も可能で、隠し階段と隠し扉の先に出入り口があります。
落とし穴が隠れた賽銭箱
本堂正面入り口に埋め込まれた賽銭箱は、仕掛けにより落とし穴として使用することができました。畳2枚分、深さ2~3メートルあり、入ってきた人を落とすことができるが、平時には一般参詣客の危険を防ぐため、落とし穴は一畳分に限定されています。
伝説の井戸
井戸は金沢城の石垣にも使われる、高級な石の戸室石を丸ごとくり抜いて作られいます。この井戸は深さ約25メートルもあり、茶水に利用されます。
堂の中心に位置して、水面上3~4メートルに横穴(地下に通じる秘密の地下道)があり、どの部屋からもロープを使い井戸へと逃げることができます。
この地下道は金沢城へ続く逃げ道としても使用されたと言われていますが、未だ通行を試みたものがいないため真偽は定かでなく、「伝説の井戸」と呼ばれます。
戦時中の重要文化財や価値ある物品の避難場所として機能していました。
室内に架けられた橋
本堂内には太鼓橋もあり、井戸を川と見立てて室内に架けられています。この太鼓橋は天然の一本木をくりぬいて作られており、上から水を汲み上げてお茶を楽しむことができました。
豪華な茶室
茶の湯を楽しむ場である茶室は、本来あってはならない3階にあり、押入の形をした秘密の隠し階段を使って上がります。
この茶室は、大人一人が立ったくらいの高さで、天井を弓なりにした狭さを感じさせない工夫が施されています。
正座をすると外の景色は見えないため、美しい富士山の模様の装飾や登り龍に木の根が飾られています。
その他にも多数の隠し部屋、隠し階段、落とし穴階段、切腹の間、武者溜り、中二階隠し拝殿など見所たくさん。
加賀100万石
太閤検地(豊臣秀吉が課税するにあたり日本全土で行った検地)から江戸時代を通じて、土地の生産性を石高(こくだか)で表しました。
加賀藩は江戸時代に加賀、能登、越中の3国の大半を領地とし、妙立寺を建立した1643年には100万石を超えていました。
この頃の江戸幕府の直轄地は160万石ほどだったため、加賀藩は江戸幕府にとって脅威でした。
江戸幕府と戦うための要塞
前田利常は、徳川家から嫁を迎えるとともに、母親を人質に出し、鼻毛を伸ばして馬鹿殿様を演じることで幕府を欺き安心させました。
一方で、武士が起居できる寺院群(現在の寺町寺院群)を新築し、その中心に要塞としての機能を備え、出城の役目を持たせた妙立寺を建立しました。
訪れる価値
妙立寺は、その複雑な建築構造と秘密の仕掛けからなる歴史的な価値を持つ寺院です。忍者や武将がくつろいだとされるこの場所は、まるでタイムスリップしたかのような体験を提供してくれます。
建物の中を探索することで、当時の人々がどのように生活していたのかを垣間見ることができます。また、加賀藩の歴史や文化にも触れることができるでしょう。
妙立寺は金沢市内でも人気の観光スポットとなっており、多くの観光客が訪れます。ただし、堂内見学は予約制です。
見学者は見どころの一つ一つを楽しみながら、妙立寺の神秘に迫ることができます。忍者や武将の時代を思い浮かべながら、歴史の舞台を歩いてみてください。