五城目朝市は、秋田県南秋田郡五城目町で開催される歴史ある露店市であり、その起源は1495年(明応4年)にまでさかのぼります。およそ530年以上もの長い歴史を持つこの朝市は、県内でも特に古い伝統を誇り、現在も地域の人々の暮らしを支える「生活市」として親しまれています。
毎月「2・5・7・0」の付く日に開催され、朝市通りには新鮮な野菜や山菜、果物、魚介類、手作りの漬物や惣菜、さらには包丁やざるなどの生活用品まで、多彩な商品が並びます。単なる観光スポットではなく、地域の人々の日常と深く結びついた市場として、今なお活気を保ち続けています。
五城目朝市の始まりは、1495年(明応4年)、馬場目地区を治めていた地頭・安東季宗(あんどうむねすえ)が家臣の齊藤弥七郎に命じて「市神」を祀り、市を開いたことと伝えられています。
当時、この地域は山の幸や川の幸に恵まれていましたが、それらを交換・売買する場として市が重要な役割を果たしていました。その後、馬場目城が滅びると、この地域を治めた藤原内記秀盛によって市は砂沢城(五十目城)の城下町へ移されます。
人と物が集まることで町は発展し、五十目(現在の五城目)は地域経済の中心地として栄えていきました。長い歴史の中で戦乱や災害、社会情勢の変化を経験しながらも、市は地域住民の力によって守り続けられ、現代まで受け継がれています。
江戸時代になると、五城目は久保田(現在の秋田市)と能代を結ぶ交通の要所となり、さらに阿仁鉱山へ向かう物資輸送の中継地点として重要な役割を担いました。
そのため朝市には近隣各地から商人や職人が集まり、農具や木工品、衣類、食料品など生活に必要なものが何でも揃う市場として発展しました。人々は朝市を通じて情報交換を行い、地域文化を育みながら暮らしてきました。
五城目朝市は、単なる物品販売の場ではなく、人と人との交流を生み出す地域コミュニティの中心としての役割も果たしてきたのです。
かつての朝市は月に6回開かれる「六斎市」でしたが、戦後の昭和30年に定市場設置条例が施行され、現在の「十二斎市」へと移行しました。
現在は毎月「2日・5日・7日・10日・12日・15日・17日・20日・22日・25日・27日・30日」と、数字の末尾に「2・5・7・0」が付く日に開催されています。
開催時間は早朝7時頃から正午頃までで、特に午前10時前後が最も賑わう時間帯です。朝市通りには約50軒ほどの露店が並び、地元の人々や観光客で活気に包まれます。
五城目朝市の最大の魅力は、季節ごとに並ぶ商品が大きく変化することです。
春になると、フキノトウやタラの芽、コゴミ、ワラビ、ゼンマイなど、秋田の豊かな自然が育んだ山菜が店先を彩ります。雪国の長い冬を越えて顔を出す山菜は、春の訪れを告げる風物詩として人気があります。
5月には「山菜まつり」が開催され、多彩な山菜料理や旬の味覚を楽しむことができます。
夏になると色鮮やかな野菜や果物が並びます。地元農家が丹精込めて育てたトマトやキュウリ、ナスなどの新鮮な農産物が人気です。
また、8月には「盆市」が開催され、お盆を迎える地域の人々で賑わいます。
秋は実りの季節です。栗や天然きのこ、新米などが豊富に並び、秋田の豊かな山の恵みを存分に味わうことができます。
10月の「きのこまつり」では、地元で採れたさまざまな種類のきのこが販売され、秋の味覚を求める多くの来場者で賑わいます。
冬になると漬物用の大根や白菜、保存食などが並び、雪国ならではの暮らしを感じることができます。
2月に開催される「あったか鍋まつり」では、地元食材を使った温かい鍋料理が振る舞われ、多くの人々が冬の味覚を楽しみます。
五城目を代表する郷土料理のひとつが「だまこ鍋」です。
炊きたてのご飯を半分ほどつぶし、お手玉のような丸い形にした「だまこ」を、地鶏やセリ、きのこなどと一緒に煮込んだ鍋料理です。
朝市には、その時期に採れた天然きのこや新鮮なセリなどの食材が並び、地元の人々はこれらを使って家庭の味を楽しみます。人が集まる機会には必ずと言ってよいほど作られる、五城目ならではの温かな郷土料理です。
五城目朝市では年間を通じてさまざまなイベントが開催されます。
6月に行われる「市神祭」は、朝市の守り神である市神を祀る伝統行事です。神輿の巡行や太鼓演奏、高性寺で開催される相撲大会など、歴史と伝統を感じられる催しが数多く行われます。
会場には地元グルメや露店も並び、多くの来場者で賑わいます。
4月から11月にかけて、朝市開催日が土曜日や日曜日と重なる際には「ごじょうめ朝市plus+」が開催されます。
通常の朝市に加え、雑貨やクラフト作品、キッチンカーなども出店し、若い世代や観光客にも人気のイベントとなっています。
五城目朝市の魅力は商品だけではありません。店先に立つお母さんやおばあちゃんたちとの会話も大きな楽しみのひとつです。
野菜のおいしい食べ方や保存方法を教えてもらったり、旬の食材について話を聞いたりすることで、地域の暮らしや文化に触れることができます。
観光地化された市場とは異なり、地元の人々の日常がそのまま残されているため、温かな人情に出会えるのも五城目朝市ならではの魅力です。
五城目朝市は、1495年の開設以来、500年以上にわたって地域の暮らしを支え続けてきました。そこには単なる商売の場ではなく、人々の交流、季節の移ろい、地域文化の継承という大切な役割があります。
春の山菜、夏の新鮮野菜、秋のきのこ、冬の鍋料理。四季折々の自然の恵みと、人々の温かな笑顔があふれる五城目朝市は、五城目町を代表する文化遺産ともいえる存在です。
訪れるたびに新たな発見があり、地域の魅力を肌で感じることができる五城目朝市。五百年以上の歴史が息づくこの伝統市で、ぜひ五城目ならではの暮らしと人情に触れてみてください。