» 北海道・東北 » 福島県 » いわき・相馬

天山文庫

(てんざん ぶんこ)

詩人・草野心平の精神が息づく文化の里

自然と調和した美しい文学空間

天山文庫は、福島県双葉郡川内村にある文学と自然が融合した文化施設です。深い緑に包まれた山あいに、茅葺き屋根の建物が静かに佇み、訪れる人々に穏やかな時の流れを感じさせてくれます。この文庫は、詩人・草野心平との深い縁をきっかけに、村民たちの協力によって建てられました。一木一草に心を込めて建てられたその姿は、まさに村の心の象徴といえるでしょう。

詩人・草野心平と川内村との深い絆

草野心平は、1903年に福島県石城郡上小川村(現在のいわき市小川町)で生まれた日本を代表する詩人です。彼は蛙を題材にした詩で知られ、「蛙の詩人」とも呼ばれています。1953年、心平はモリアオガエルの生息地として知られる川内村の平伏沼(へぶすぬま)を訪れ、その静けさと自然の美しさに深い感銘を受けました。その後、彼は幾度も村を訪ね、村人たちと親しく交流を続けるようになります。

この交流がきっかけとなり、1960年に心平は川内村の名誉村民に選ばれました。そして、自身の蔵書約3,000冊を村に寄贈し、それを保存・展示するために建設されたのが天山文庫です。詩人の情熱と、村民の温かい協力が結びついた結果生まれたこの文庫は、文学と地域の絆を象徴する文化施設となっています。

多くの文学者たちが支えた設立

天山文庫の建設は、詩人一人の夢ではなく、日本文学界の多くの著名人たちの賛同によって実現しました。井上靖、金子光晴、川端康成、武者小路実篤、谷川徹三、中野重治など、錚々たる文学者が「天山文庫設立協力委員会」の発起人として名を連ねています。彼らの支援のもと、建築家・山本勝巳が設計を担当し、村人の手によって一つ一つ丁寧に建てられ、1966年7月16日に完成しました。

日本建築の美を感じる木造茅葺きの館

天山文庫は、木造真壁造りの茅葺き屋根をもつ伝統的な日本建築です。建物は正方形の平面構成に方形屋根をのせた二階建てで、小屋裏を利用した空間設計が特徴です。深い軒と白い漆喰壁が美しく調和し、周囲の自然と見事に一体化しています。

しかし、この文庫には伝統的な民家にはない独自の工夫も施されています。正面屋根の一部が切り上げられ、2階には広縁の窓が設けられており、内部には柔らかな自然光が差し込みます。静かな山村の中で、文学と建築が見事に融合した空間として、訪れる人々に安らぎを与えています。

展示内容と利用案内

館内には、草野心平の寄贈した蔵書のほか、彼と親交のあった文学者たちの貴重な資料が展示されています。詩集や手紙、原稿などを通して、昭和の文学界を彩った人々の息づかいを感じ取ることができます。また、一般の図書館と同様に本の閲覧や貸し出しも可能で、地域の文化拠点としても機能しています。

草野心平を偲ぶ「天山祭り」

毎年7月には、心平を偲ぶ恒例行事として「天山祭り」が開催されます。詩の朗読会や講演、音楽演奏などが行われ、詩人の精神と村の文化を受け継ぐ温かな催しとして、多くの人々が訪れます。天山文庫は、単なる文学資料館ではなく、地域の人々が心平の詩とともに生きる文化の中心なのです。

アクセス

天山文庫へは、車でのアクセスが便利です。
・いわき市中心部から約90分
・磐越自動車道 小野ICまたは船引三春ICから約40分
・常磐自動車道 常磐富岡ICから約20〜30分

まとめ ― 自然と文学が響き合う場所

天山文庫は、詩人・草野心平の魂が今も静かに息づく文学の聖地です。村人たちの真心によって守り続けられ、訪れる人々に「詩のある暮らし」の尊さを伝えています。深い緑と茅葺き屋根の温もりの中で、あなたも心平の詩に耳を傾け、ゆっくりと流れる時間を感じてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
天山文庫
(てんざん ぶんこ)
Tenzan Bunko
エリア
福島県の観光地 いわき・相馬の観光地
カテゴリ
博物館・科学館・資料館

Gallery

いわき・相馬

福島県

カテゴリ

エリア