白水阿弥陀堂は、福島県いわき市内郷白水町広畑にある、平安時代末期建立の仏堂です。美しい曲線を描く屋根と浄土式庭園が調和した、優美な姿を見せてくれます。秋には大イチョウやモミジなどが庭園を美しく彩ります。
藤原清衡の娘・徳姫が、夫である岩城則道公の供養のために建立したといわれています。福島県内唯一の国宝建造物であり、国の史跡にも指定されている貴重な文化遺産です。
白水阿弥陀堂は、福島県いわき市内郷白水町広畑に位置し、平安時代末期の1160年（永暦元年）に建立されました。この仏堂は、真言宗智山派の寺院・願成寺（がんじょうじ）が所有しており、同寺は藤原清衡の娘である徳姫が、夫・岩城則道の供養のために建立したものです。
阿弥陀堂は、国宝として指定されており、建造物としては福島県内唯一の国宝です（2019年現在）。その国宝指定名称は「阿弥陀堂（白水阿弥陀堂）」で、浄土式庭園を含む境内地は白水阿弥陀堂境域（しらみずあみだどうきょういき）として国の史跡に指定されています。
白水阿弥陀堂は、方三間（正面・側面とも柱が4本立ち、柱間が3間となる）の単層宝形造で屋根はとち葺きです。堂内は内陣の天井や長押、来迎壁（本尊背後の壁）などが絵画で荘厳されていましたが、現在はその一部に痕跡を残すのみとなっています。内陣の須弥壇上には阿弥陀如来像を中心に、両脇侍の観音菩薩像と勢至菩薩像、ならびに二天像（持国天像、多聞天像）の5体の仏像が安置されています。
阿弥陀堂は東・西・南の三方を池に囲まれ、正面に当たる南から中の島を経由して堂にいたる参拝道が設けられています。さらに北・東・西は山で囲まれており、阿弥陀堂を中心としたこれらの空間は平安時代末期に盛んだった浄土式庭園の様を成しています。この構造は、徳姫が奥州藤原氏の娘であることも影響し、毛越寺や無量光院といった平泉の寺院の構造に影響を受けています。「白水」という地名は、平泉の「泉」という文字を2つに分けたものであり、岩城氏の本拠地であった平という地名の由来も平泉の「平」を取ったものだという説があります。
白水阿弥陀堂は、平安時代末期の1160年（永暦元年）に、岩城則道（岩城氏の祖）の妻・徳姫（藤原清衡の娘）によって建立されました。徳姫は夫・則道の菩提を弔うために寺を建てて「願成寺」と名付け、その一角に阿弥陀堂を建立しました。その後、阿弥陀堂は後鳥羽上皇により勅願寺とされ、江戸時代には徳川将軍家から寺領10石を与えられるなど、歴代の為政者に保護されて現在に至っています。
阿弥陀堂は明治35年（1902年）7月、当時の古社寺保存法に基づき特別保護建造物に指定され、昭和27年（1952年）3月29日には文化財保護法に基づく国宝に指定されました。堂は近くに所在する願成寺の所有ですが、池を含む浄土庭園の大部分はいわき市が所有・管理しています。
東北地方に現存する平安時代の建築は、岩手県平泉町の中尊寺金色堂、宮城県角田市の高蔵寺阿弥陀堂、そしてこの白水阿弥陀堂の3棟のみです。
2011年3月11日に発生した東日本大震災により、白水阿弥陀堂は損傷を受けました。そのため、一時的に拝観が中止されましたが、2012年7月には修復が完了し、再開されました。また、同時に損傷した阿弥陀如来坐像と持国天像は京都に送られ、修復作業が行われました。
2023年（令和5年）9月には、台風13号から変わった熱帯低気圧による大雨で、近くを流れる新川が氾濫し、床上浸水の被害を受けました。水位は床上20～30cmに達し、阿弥陀堂もその影響を受けました。
国宝
阿弥陀堂は、1952年（昭和27年）3月29日に国宝に指定されました。桁行と梁間はともに3間、一重の宝形造で屋根はとち葺です。
重要文化財（国指定）
木造阿弥陀如来及両脇侍像 3躯
木造持国天立像（寺伝広目天像）・木造多聞天立像 2躯
史跡（国指定）
白水阿弥陀堂境域は、発掘調査によって、国宝阿弥陀堂が大きな池の中に設けられた中島に建てられ、浄土庭園の典型的な構成を示していることが判明しました。1966年（昭和41年）9月12日には、周辺山林や農地、民家敷地を含めた243,669平方メートルにわたる広大なエリアが国の史跡に指定されました。