渓谷の川に沿って両側に30軒ほどのこぢんまりとした和風旅館が建ち並ぶ、静かなたたずまいの温泉。
黒川温泉郷の宿と里山の風景すべてを一つの旅館として取り組んでいて、町並みがすべてほっと落ち着く田舎の温かみのある雰囲気。
地元産のヒノキを輪切りにした入湯手形を使って露天風呂を3か所めぐれる。
冬には竹灯りでライトアップする「湯あかり」がおこなわれ幻想的な雰囲気に。
黒川温泉は、熊本県阿蘇郡南小国町に位置する温泉地です。全国屈指の人気を誇り、2009年には「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で異例の二つ星を獲得しました。さらに、黒川温泉の名称は2006年に地域団体商標として登録され、地域ブランドとして確立されています。温泉の魅力は、自然に包まれた露天風呂や、落ち着いた温泉街の雰囲気にあります。
黒川温泉は、阿蘇山の北側に位置し、南小国温泉郷の一つとして知られています。阿蘇の自然に囲まれ、田の原川沿いに温泉街が広がっており、その自然の景観を生かした町並みが魅力です。温泉街は渓谷に沿って東西に広がっており、24軒の和風旅館が立ち並んでいます。
黒川温泉の歴史は古く、伝説によれば、豊後国の甚吉という男が地蔵の加護によって難を逃れ、その地蔵が由来となって温泉が湧き出たと言われています。この地蔵が祀られている地蔵湯は、今でも訪れる人々に親しまれています。
黒川温泉の泉質は硫黄泉で、比較的浅い地層から80度から98度の源泉が湧き出ています。この湯は体を温め、肌を滑らかにする効果があり、多くの人々に愛されています。また、温泉街には2つの共同浴場、地蔵湯と穴湯があり、地元の人々や観光客が気軽に利用できるようになっています。
1986年に黒川温泉観光旅館協同組合が「入湯手形」を導入しました。この手形は地元産のヒノキを使って作られており、3枚のシールが付いています。このシールを利用することで、3つの異なる露天風呂を楽しむことができます。さらに、2022年からは、温泉街にある飲食店や小売店でもこの手形が使えるようになり、地域全体での湯めぐり体験が提供されています。
2022年に手形のデザインも一新され、温泉マークと「巡」の字を組み合わせたデザインが採用されました。この手形は観光客に大変人気があり、黒川温泉を訪れる際の記念品としても喜ばれています。
黒川温泉はかつて、宴会客が中心となり、温泉地としての魅力が薄れつつありました。しかし、後藤哲也という一人の旅館経営者が、温泉街全体の再生に向けて大きな役割を果たしました。彼は「自然の雰囲気」をテーマに、洞窟風呂や露天風呂を造り、他の旅館もその影響を受けて露天風呂を設置するようになりました。
また、後藤は温泉街全体での統一感を重視し、町並みを自然と調和させるために、派手な看板を撤去し、植樹を行うなどの取り組みを進めました。これにより、黒川温泉は自然豊かな雰囲気を持つ、静かで落ち着いた温泉街へと生まれ変わりました。
黒川温泉では、「街全体が一つの宿 通りは廊下 旅館は客室」というコンセプトが広まりました。これは、温泉街全体が一つの大きな宿であり、各旅館はその一部として機能するという考え方です。このコンセプトが実現されたことで、観光客は温泉街を巡りながら、まるで一つの大きな宿に滞在しているかのような感覚を楽しむことができます。
黒川温泉へは、JR九州の豊肥本線阿蘇駅から九州産交バスで「ゆうステーション」まで行き、小国郷循環バスに乗り換えて「黒川」停留所で下車する方法があります。また、熊本駅や熊本桜町バスターミナルからも九州横断バスで直通することができるため、観光客にとってアクセスが便利です。
車で訪れる場合は、九州自動車道の熊本インターチェンジから国道57号、やまなみハイウェイ、国道442号を経由して約62kmの道のりです。美しい景色を楽しみながらのドライブも、黒川温泉を訪れる際の魅力の一つです。
黒川温泉は、自然と調和した美しい温泉街として、多くの観光客に愛されています。入湯手形を使った湯めぐりや、自然の雰囲気を大切にした町並み、そして温泉街全体で一つの宿のような体験ができるこの場所は、心身を癒す特別な場所です。黒川温泉に訪れることで、日常の喧騒を忘れ、穏やかな時間を過ごすことができるでしょう。
JR九州豊肥本線「阿蘇駅」→ 九州産交バス 杖立温泉ゆきに乗車し「ゆうステーション」下車 → 小国郷循環バスなどに乗り換え「黒川」下車
熊本駅 → 熊本桜町バスターミナルから九州横断バスに乗車し「黒川温泉」下車
西鉄天神高速バスターミナル・博多バスターミナルから福岡 - 黒川温泉線(九州産交バスと日田バスによる運行)に乗車し「黒川温泉」下車
車:
九州自動車道熊本インターチェンジ → 国道57号、やまなみハイウェイ、国道442号経由で62㎞