文化財と指定
偕楽園は茨城県水戸市にある日本庭園で、国の史跡及び名勝に指定されています。伝統的に、後楽園(岡山県岡山市)や兼六園(石川県金沢市)と並んで日本三名園の一つとされています。現在は、隣接する千波湖周辺の拡張部を含めた広域公園の一部となっています。また、文化庁認定の日本遺産“近世日本の教育遺産 ―学ぶ心・礼節の本源―”の一部としても位置づけられています。
概要
梅と好文亭
偕楽園には、拡張部を含めず本園部分だけで100種3,000本の梅が植えられており、早春には観梅客で賑わいます。園内には梅の異名「好文木」に由来する別荘「好文亭」があります。これは古代中国の晋の武帝の故事に基づきます。
徳川斉昭の構想と開園
水戸藩第9代藩主徳川斉昭(烈公)は、1833年(天保4年)に藩内を巡った後、水戸の千波湖に臨む七面山を切り開き、回遊式庭園とする構想を持ちました。造園は長尾家の本草学者である長尾景徳が実施しました。この庭園は、藩校「弘道館」で文武を学ぶ藩士の余暇休養の場として設立されました。
開園の経緯
1829年(文政12年):徳川斉昭、第9代藩主となる。
1833年(天保4年):偕楽園の造園計画が始まる。
1842年(天保13年):偕楽園が開園。
1873年(明治6年):常磐神社が設立され、園の一部がその境内に充てられる。
1890年(明治23年):昭憲皇太后が行啓し、御成門を造り記念植樹。
1902年(明治35年):大正天皇が皇太子の時、好文亭に宿泊。
1912年(大正元年):昭和天皇が皇太子の時、好文亭前に松を手植え。
1922年(大正11年):国の史跡及び名勝に指定される。
1932年(昭和7年):偕楽園と旧称に復す。
陰陽の世界
園の構造
偕楽園の正式な入り口である旧来の表門(黒門)は、敷地の北西側に位置しています。表門から園内に入り、一の木戸を潜ると、西半分を構成するモウソウチクや杉の鬱蒼とした林の中を進む道が続いています。この道を東へ進み、幾つかの門を経由して好文亭に至ると、千波湖を一望できる明るい梅林に到着します。
陰陽の調和
好文亭付近には、偕楽園創設の趣旨を記した「偕楽園記の碑」があり、自然界の陰と陽の調和について説明されています。西半分の杉や竹の林が陰の世界を、北東の梅林が陽の世界を表すことで、園全体で陰陽の世界を体現しています。
現在の出入り口
現在は、表門は偕楽園駅や主要な駐車場から遠く離れており、この門から入園する観光客は少ないです。梅林へと直接通じる東門が主要な出入り口として利用されています。
園内施設
好文亭
好文亭は、1840年(天保11年)4月に徳川斉昭が設計した水戸偕楽園内の施設です。設計は二度の改定を受け、当初は平屋建ての構造から木造二層三階建てに拡張されました。完成後は居所、休憩所、敬老会、宴会などの催しに利用されました。偕楽園開園後も少しずつ手が加えられ、中御殿の建物を移築増築し、規模を拡大しました。1869年(明治2年)には奥御殿の一部を増築し、1873年(明治6年)12月に太政官布告により庭園および建物は常磐公園となりましたが、管理上の都合で一部縮小されました。その後、大正元年に東宮行啓の際に玄関が設置されました。
この建物は、庶民とともに利用することを目的として設計され、広い濡縁の間や木製滑車を利用した昇降機(物の運搬用として日本現存最古)、建具連動式障子、色紙・短冊・懐紙を用いた板戸などの工夫がされています。1945年(昭和20年)の水戸空襲で大部分が焼失しましたが、1955年(昭和30年)から再建工事が開始され、1958年(昭和33年)に完成しました。1969年には落雷で奥御殿が全焼しましたが、襖絵は焼失を免れました。2016年から3年間、襖絵全96面の大規模修復工事が行われました。
偕楽園本園
偕楽園記碑
1839年(天保10年)、偕楽園の本格的な造園工事に先立って建てられた石碑で、好文亭 の東南に位置しています。この碑には、烈公の書による偕楽園開園の主旨が記されています。碑文の内容は、天保の改革に反対する門閥に対する烈公の決意表明としての性格もあり、時代背景を色濃く反映しています。
偕楽園梅林
早春の2月下旬から3月下旬にかけて見頃を迎える偕楽園の梅林は、水戸の梅まつりが開催される会場として知られています。烈公が自ら梅を植え、その後も様々な品種が加えられました。
常磐神社
偕楽園南側の一部は常磐神社の境内に属しています。1873年(明治6年)に創建され、水戸徳川家の祖である徳川光圀(水戸黄門)と、烈公こと徳川斉昭を祀る神社です。
拡張部
拡張部の歴史と現在
偕楽園拡張部は、千波湖西岸と南岸にかけての広い範囲を占めています。桜川を挟んで本園と繋がり、拡張部の多くが水戸市から茨城県に寄付されました。これにより、偕楽園は都市公園として大規模な敷地を持つこととなりました。
拡張部の施設と見どころ
拡張部にはさまざまな施設があります。常盤神社、ツツジ山、つつじヶ丘、桜山、桜ヶ丘、そして日本庭園の要素が含まれる自然豊かなエリアです。特に、桜の季節には満開の桜が美しく、訪れる人々に春の訪れを告げます。また、ツツジが見頃を迎える初夏も、園内は鮮やかな花々で彩られます。
終わりに
偕楽園はその歴史的価値と美しい景観で、多くの人々に愛されてきました。四季折々の自然の美しさを楽しむことができるこの庭園は、今後も日本の文化と自然の魅力を伝える重要な場所であり続けるでしょう。