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堀越癪観音

(ほりこし しゃくかんのん)

山深い葛城修験の霊場

堀越癪観音は、和歌山県伊都郡かつらぎ町東谷、串柿の里として知られる四郷地区の山間にある由緒深い寺院です。標高約600〜650メートルの山あいに位置し、周囲には豊かな自然が広がっています。山深い場所にひっそりとたたずむこの寺は、古くから「癪の病に霊験あらたかな観音様」として多くの人々の信仰を集めてきました。

ご本尊は秘仏の十一面観世音菩薩です。修験道の開祖として知られる役行者にゆかりが深く、日本遺産「葛城修験」の舞台となる葛城二十八宿の行所の一つにも数えられています。長い歴史の中で人々の祈りを受け止めてきた堀越癪観音は、現在も山岳信仰と地域の信仰文化を伝える貴重な霊場です。

役行者と母の病にまつわる由来

堀越癪観音の起源には、修験道の開祖とされる役行者(えんのぎょうじゃ)の伝説が伝わっています。古い伝承によると、役行者の母が「癪」と呼ばれる激しい腹痛や胸の痛みを伴う病に苦しんだ際、役行者は母の病気平癒を願いました。

そして、37日間にわたって一心に祈りを捧げながら、一刀三礼の精神のもと十一面観世音菩薩像を刻んだとされています。一刀を彫るごとに仏に礼をするという深い祈りを込めて彫刻された観音像に祈願したところ、母の病が平癒したと伝えられています。

この伝承から、堀越癪観音の十一面観世音菩薩は、特に癪の病にご利益がある観音様として「癪除け観音」と呼ばれるようになりました。現在でも、健康や病気平癒を願う多くの参拝者が、遠方から訪れています。

葛城修験を伝える山岳信仰の霊場

堀越癪観音は、古くから修験者が修行を行った葛城修験の行所の一つとしても知られています。葛城修験は、和歌山県と大阪府の県境に連なる葛城山系を舞台に発展した山岳信仰です。険しい山々を巡りながら祈りと修行を重ねる文化は、長い年月をかけて受け継がれてきました。

堀越癪観音もその重要な舞台の一つであり、周囲の山々と一体となった独特の信仰景観を今に伝えています。境内近くには役行者の像を祀る観音堂があり、役行者とこの地との深い結び付きが感じられます。

また、境内には修行大師の像も建ち、訪れる人々を静かに迎えています。山の澄んだ空気と豊かな自然に包まれながら参拝すると、長い歴史の中で修験者たちが歩んできた祈りの道に思いを馳せることができるでしょう。

戦乱を乗り越えて受け継がれた歴史

堀越癪観音は、長い歴史の中で幾度も困難を経験してきました。天正年間には、紀州の戦乱に伴う兵火によって伽藍が焼失したと伝えられています。しかし、その後も地域の人々の信仰は途絶えることなく、慶長年間に再建されました。

伝承によれば、再建後には長年癪痛に苦しんでいた堀越村の人の夢に観音様が現れ、泉州方面にある自身を迎えるよう告げたとされています。その霊告を信じて探し求めた結果、失われた観音像を再び迎えることができたと伝えられています。

現在も堀越癪観音は、地域に住む向井家によって代々守り継がれている世襲寺です。長い年月にわたり、一つの地域と人々の信仰によって大切に守られてきたことも、この寺院の大きな特徴です。

境内を彩る県指定天然記念物のサザンカ

堀越癪観音を訪れた際にぜひ注目したいのが、本堂の東側に立つサザンカの老樹です。このサザンカは和歌山県指定の天然記念物で、大きく枝を広げる堂々とした姿から、長い年月を生き抜いてきた力強さを感じることができます。

樹齢については200年以上と推定される一方、古くから500年から600年ほどとも伝えられています。秋には美しい花を咲かせ、静かな山寺の境内に彩りを添えます。花の見頃は例年11月上旬から12月上旬頃です。

四季折々に楽しめる境内の自然

堀越癪観音は、自然の美しさを楽しめる場所としても魅力があります。春には枝垂桜やキリシマツツジが境内を彩り、特に4月末から5月初頭にかけては華やかな花の景色を楽しめます。

秋には大イチョウが美しく黄葉し、サザンカの花とともに訪れる人々を迎えます。標高の高い山間にあるため、季節ごとに異なる自然の表情を感じられるのも、この寺ならではの魅力です。

5月3日に行われる躑躅祭

毎年5月3日には、堀越癪観音を代表する行事である「躑躅祭(つつじまつり)」が開催されます。各地から行者や参拝者が訪れ、法要や大護摩供が厳かに営まれます。

祭りでは、祈願とともに柴燈大護摩供や火渡りなどが行われ、修験道の伝統を今に伝える貴重な機会となっています。また、この日には観音堂に祀られている役行者坐像が開帳されることでも知られています。

そのほか、毎月17日は本尊の縁日とされ、1月17日には初観音大祭、節分には開運厄除星祭、8月17日には施湯と呼ばれる薬草風呂に関する行事が行われます。毎月28日には不動護摩供も営まれています。

歴史的景観を残す茅葺きの庫裏

境内には、本堂のほかに歴史を感じさせる建造物が残されています。特に堀越癪観音庫裏は、江戸時代末期に建てられたとされる茅葺きの建物で、国登録有形文化財に登録されています。

傾斜地に築かれた寺院の敷地には、本堂や庫裏、客殿が配置されており、山間の集落と調和した歴史的な景観をつくり出しています。庫裏は農家風の建築様式を持つ建物で、2021年には屋根の葺き替えや床組の修理などが行われ、現在まで大切に使われています。

2022年には茅葺き屋根の葺き替えも行われ、美しい姿が受け継がれています。山深い場所に残る伝統的な建築は、堀越癪観音の歴史と地域の暮らしを感じさせてくれます。

山の霊場で感じる祈りと自然の魅力

堀越癪観音は、役行者の伝説と葛城修験の歴史、そして豊かな山の自然が一体となった、かつらぎ町を代表する霊場です。秘仏の十一面観世音菩薩に寄せられてきた人々の祈りや、修験道の長い歴史は、現在もこの地に深く息づいています。

境内では、県指定天然記念物のサザンカや大イチョウ、春のツツジなど、四季折々の自然を楽しむことができます。標高約650メートルの山あいに広がる眺望と澄んだ空気も魅力の一つです。

山深い場所にたたずむ静かな寺院を訪れ、観音様に手を合わせながら、古くから受け継がれてきた信仰と自然の美しさに触れてみてはいかがでしょうか。串柿の里・かつらぎ町四郷を訪れる際には、ぜひ堀越癪観音にも足を運び、山岳信仰の歴史が息づく特別な時間を過ごしてみてください。

Information

名称
堀越癪観音
(ほりこし しゃくかんのん)
Horikoshi Shaku Kannon
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