あけびは、山形県を代表する秋の味覚のひとつです。山形県は全国でも数少ないアケビの栽培地として知られ、農家で大切に育てられたアケビが、秋になるとスーパーなどに並びます。
アケビといえば、熟した果実の白くやわらかな果肉を食べるのが一般的ですが、山形県では果肉だけでなく、厚みのある果皮を料理に利用する独特の食文化があります。
甘い果肉と、ほろ苦い果皮
秋に熟したアケビは、果皮が割れると中から白い果肉と黒い種子が現れます。果肉はとろりとした食感で、爽やかな甘みがあります。一方、黒い種子には苦みがあるため、通常は取り除きながら果肉を味わいます。
果肉はそのまま食べるほか、ホワイトリカーに漬けて果実酒にすることもできます。甘くみずみずしい果肉は、秋の山の恵みを感じさせる味わいです。
山形名物「アケビの味噌炒め」
山形県ならではの食べ方として特に知られているのが、アケビの果皮を使った料理です。厚みのある果皮はほろ苦さが特徴で、ひき肉や味噌、砂糖などを混ぜ合わせた具材を詰めて焼く「アケビの味噌炒め」などに利用されます。
ほろ苦い果皮に味噌のコクや具材の旨みが加わることで、独特ながらもご飯によく合う味わいになります。山形の食文化を代表する、珍しい郷土料理のひとつです。
ずんだ和えなど多彩な料理
果皮は、枝豆をすり潰して作る「ずんだ」で和えた「ずんだ和え」にすることもあります。また、キノコやナスなどを詰めて蒸し焼きにしたり、揚げ物にしたりするなど、さまざまな調理法で親しまれています。
短冊状に切った果皮を天ぷらや唐揚げにする食べ方もあり、ほろ苦い風味と独特の食感を楽しめます。
春には若芽も食用に
アケビは秋の果実だけでなく、春に伸びる若芽も食用になります。若芽はおひたしや和え物、汁物の具、バター炒め、混ぜご飯などに利用され、春の山菜として親しまれています。
若芽はアクが強いため、調理する際には茹でてから冷水にさらすなど、下処理をしてから料理に使います。果実とは異なる、山菜らしい風味を楽しめるのもアケビの魅力です。
栄養面でも注目されるアケビ
アケビにはさまざまな栄養成分が含まれており、果肉にはビタミンC、果皮にはカリウムなどが含まれています。果肉だけでなく、果皮や若芽まで食材として活用することで、アケビを余すところなく味わうことができます。
薬草として利用されてきたアケビ
アケビは食材としてだけでなく、古くから蔓、葉、根、果実などが薬草として利用されてきたとされています。葉を乾燥させて「アケビ茶」にする利用法も知られています。
特にアケビの茎や蔓、果実などは、伝統的な薬草利用の中で用いられてきました。ただし、薬草としての利用には体質や健康状態によって注意が必要とされるため、食用以外の目的で利用する場合は専門家に確認することが大切です。
丈夫なツルを生かした伝統工芸
アケビは食べるだけでなく、ツルも貴重な素材として利用されています。丈夫なアケビのツルを使って籠などを編む伝統的な工芸が行われており、自然素材ならではの風合いが魅力です。
アケビのツルで作られた籠や工芸品は、山形の自然と暮らしを感じられる品として、地域のお土産としても親しまれています。
食と工芸の両方で楽しむ山形のアケビ
山形県のアケビは、果肉・果皮・若芽・ツルまで幅広く利用されている、地域色豊かな食材です。甘い果肉を味わうだけでなく、ほろ苦い果皮を味噌炒めやずんだ和えにしたり、春の若芽を山菜料理にしたりと、季節に応じた楽しみ方があります。
さらに、ツルは籠などの工芸品にも生まれ変わります。食文化と伝統工芸の両面から、山形の豊かな自然と暮らしを感じられる食材です。
旬の時期
9月~10月
秋に熟したアケビが旬を迎えます。山形ならではの果皮料理など、旬の時期ならではの味わいを楽しめます。