火山で形成された
八幡平は約100万年前に噴出したいくつかの火山で形成されました。山頂部のなだらかな様子から、かつては楯状火山(アスピーテ)とされていましたが、現在では成層火山と分類されています。山頂部には、約9千年前から5千年前に発生した水蒸気爆発によって多数の火口ができ、その火口に水がたまって八幡沼、ガマ沼、メガネ沼などが形成されました。
国立公園八幡平地域は40,489ヘクタールの広さがあり、ほとんどが国有林です。標高1,400メートル以上の地域にはアオモリトドマツの原生林が広がり、多様な高山植物が生息しています。冬季には北西の季節風の影響で樹氷が発達し、日本最大級の樹氷群が見られます。
山頂と展望台
八幡平山頂には二等三角点があります。1962年に山頂に土盛りが行われ、1986年には木造の展望台が建てられました。老朽化のため2012年に取り壊されましたが、2014年に新しい展望台が完成しました。頂上部には、9千年前から5千年前頃に発生した水蒸気爆発によって形成された多くの火口湖があります。
八幡平には、展望の良い山が畚岳、源太森、茶臼岳の3ヶ所あり、「八幡平三大展望地」と呼ばれています。
八幡沼
八幡沼は東西600メートル、南北200メートルの大きな沼で、最大水深は22.4メートルあり、岩手県で2番目に大きな自然湖です。複数の火口が連なってできた複合火口湖で、約6千年前に水蒸気爆発によって形成されました。周囲には八幡沼湿原が広がり、湖水は泥炭のために淡いコーヒー色に染まった黒い青色をしています。湖畔には避難小屋の陵雲荘があり、休憩広場も設けられています。
ガマ沼と鏡沼
八幡沼近くのガマ沼は、最大水深9.1メートルの沼で、青緑色の水が特徴です。サンショウウオが生息しています。2つの爆裂火口が連なってできた沼で「お釜」のような形が名前の由来です。湖水は周囲の湿原から浸透してきており、その色は硫黄コロイデのために少しにごった青緑色をしています。
山頂近くにある鏡沼は、直径約50メートルあり、5月後半から6月初旬にかけて、雪が溶けると全体が巨大な「目玉」のように見えます。雪解けの季節にだけ見られる現象で、「ドラゴンアイ」として知られています。
伝承
伝説によれば、桓武天皇の命令で奥州蝦夷征伐に訪れた坂上田村麻呂が、山賊の残党を追う途中に八幡平にたどり着き、八幡平の美しい景色に感動しました。戦の神である八幡神宮を奉って戦勝を祈願し、残党を討伐後に再度高原のを訪れ、戦勝の報告を行うとともに、この地を「八幡平」と名付けたとされます。ただし、史実では坂上田村麻呂はこの地には至っていません。
東北地方有数の温泉地帯
八幡平周辺は東北地方有数の温泉地帯で、藤七温泉や蒸ノ湯温泉、後生掛温泉、玉川温泉などがあり、国民保養温泉地にも指定されています。
八幡平アスピーテライン
岩手県八幡平市から秋田県鹿角市までの全長約27kmのドライブウェイです。八幡平を横断する景勝道路で、車窓からも火山帯の雄大な景色を楽しむことができます。高原地帯に入ると山肌に沿って大小のゆったりしたカーブが続き、アオモリトドマツが作り出す独特の雰囲気に包まれます。
八幡平アスピーテラインは、春の新緑、夏の高山植物、秋の紅葉、冬の雪景色など、四季折々の表情を見せてくれます。また、途中に展望台や休憩所が設けられており、八幡平の自然を存分に楽しむことができます。冬季は閉鎖されます。