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越中万葉歌碑・大伴家持像

(えっちゅう まんよう かひ おおとものやかもち ぞう)

万葉の心が息づく二上山と高岡の風景

富山県高岡市にそびえる二上山(ふたがみやま)は、万葉の歌人として名高い 大伴家持ゆかりの地として知られています。山頂近くには若き日の家持の銅像が建ち、 越中万葉の世界を今に伝えています。この地は、奈良時代に越中国府が置かれた伏木のほど近くにあり、 家持が国守として政務を執りながら数多くの歌を詠んだ、歴史と文学が重なる特別な場所です。

大伴家持と越中の五年間

大伴家持(718~785)は奈良時代を代表する公卿・歌人であり、『万葉集』の編纂に深く関わった人物とされています。 父は大納言・大伴旅人。武門の名家に生まれ、若くして学問と教養を身につけました。

天平18年(746年)、29歳で越中国守に任じられ、現在の高岡市伏木に赴任します。 以後5年間、この地で政務にあたりながら、実に223首もの歌を詠みました。 これは『万葉集』に収められた家持の全473首のうち、ほぼ半数にあたります。

越中の自然は、家持にとって大きな創作の源でした。立山連峰を望み、奈呉の海を眺め、 四季折々に表情を変える二上山を背に暮らした日々は、彼の歌風を大きく成熟させました。 政治的緊張から一時的に離れたこの期間は、歌人として最も充実した時期であったともいわれています。

二上山に立つ大伴家持像

二上山の山頂近くに立つ大伴家持像は、右手に筆を持ち、静かに遠くを見つめる姿が印象的です。 この像は1953年に高岡駅前に建立され、1981年に現在の万葉植物園入口付近へ移設されました。

家持は、都・奈良にも同名の二上山があることに特別な思いを抱き、 越中の二上山を幾度も歌に詠みました。都を懐かしみつつも、 目の前に広がる越中の風景に心を寄せた彼の姿が、この像には重ねられています。

代表的な歌に、次の一首があります。

玉くしげ 二上山に 鳴く鳥の 声の恋しき 時は来にけり

二上山に鳴くホトトギスの声を恋しく思う季節がやってきた―― この歌からは、越中の初夏の訪れとともに高まる情感が伝わってきます。

二上山の歴史と眺望

二上山は標高274メートル。東峰と西峰からなる丘陵で、その名は二柱の神に見立てた「二神山」に由来するともいわれます。 地元では親しみを込めて「ふたがみさん」と呼ばれています。

西峰にはかつて守山城が築かれ、戦国時代には前田利長が居城としました。 現在は城山園地として整備され、春には八重桜が咲き誇ります。 山頂付近からは、北に能登半島、東に富山湾と立山連峰、 南に砺波平野を一望できる絶景が広がります。

山を巡る約8.4kmの「二上万葉ライン」沿いには、万葉植物園やキャンプ場、仏舎利塔などが点在し、 自然散策と歴史探訪を同時に楽しむことができます。

高岡市万葉歴史館 ― 越中万葉の世界を体感する

二上山のふもと、越中国庁跡にほど近い伏木一宮に建つのが 高岡市万葉歴史館です。1989年、高岡市市制施行百周年記念事業として建設され、 1990年に開館しました。全国初の『万葉集』専門施設として知られています。

万葉体感エリア

常設展示室は「万葉体感エリア」としてリニューアルされ、 3方向の大型スクリーンによるプロジェクションマッピングが展開されています。 家持が越中で詠んだ223首の中から選ばれた名歌が、 高岡の四季の風景とともに映し出されます。

約8分間の映像体験は、まるで奈良時代の越中へと時空を超えて旅するかのような没入感を味わわせてくれます。

万葉学習エリア

万葉学習エリアでは、『万葉集』の基礎知識や越中万葉の背景を、 子どもから大人まで楽しく学ぶことができます。 万葉仮名で名刺を作る体験や、○×クイズなど参加型展示も充実しています。

館内の図書閲覧室には、万葉集や上代文学に関する約85,000冊もの資料が収蔵され、 研究拠点としても重要な役割を果たしています。

四季の庭

敷地内には、万葉集に詠まれた約70種類の植物が植えられた「四季の庭」が広がります。 春はウメやヤマザクラ、夏はアジサイやケヤキ、秋はヤマモミジ、 冬は枯山水庭園が静寂な趣を見せます。

歌に詠まれた草花を実際に目にすることで、 万葉の世界がより身近に感じられることでしょう。

万葉の里・高岡を歩く

高岡は奈良・飛鳥と並ぶ万葉の故地と称されます。 家持が巡行した地には歌碑が点在し、伏木周辺には万葉ゆかりの史跡が残されています。

万葉歴史館を起点に、二上山、雨晴海岸、伏木の町並みを巡ることで、 越中万葉の世界を立体的に体感することができます。

奈良の都を思いながら越中の山河を詠んだ家持。 その心は、今も二上山の風に宿り、 訪れる人々に語りかけています。

おわりに ― 二上山に立ち、万葉に思いを馳せる

二上山に立つと、遠く立山連峰を望み、奈呉の海にきらめく光を眺めることができます。 その風景は、1300年前に家持が見た光景と大きく変わらないのかもしれません。

越中万葉歌碑・大伴家持像、そして高岡市万葉歴史館。 これらを巡る旅は、単なる観光にとどまらず、 日本最古の歌集『万葉集』の世界へと心を開く体験となるでしょう。

ぜひ一度、万葉の里・高岡を訪れ、 二上山の頂で万葉の風を感じてみてください。

Information

名称
越中万葉歌碑・大伴家持像
(えっちゅう まんよう かひ おおとものやかもち ぞう)
Etchu Manyo Poetry Monument and Statue of Ohtomo no Yakamochi
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