山中温泉の魅力
文字通り「山の中」に広がる山中温泉は、鶴仙渓と呼ばれる渓谷が広がる地域です。こおろぎ橋やユニークな形のあやとりはしは、街のシンボルとなっています。
また、日帰り入浴施設もありますので、気軽に立ち寄ることができます。
山中温泉は、山中漆器のふるさとでもあり、木地師の技が生み出す美しい木目は見る者を魅了します。温泉街中心部には土産物屋やギャラリー、造り酒屋や和菓子の老舗などもあり、にぎやかな雰囲気が漂っています。
温泉と共同浴場
山中温泉では、昔は温泉宿に内湯がなく、共同浴場を利用していました。現在は、総湯「菊の湯」という共同浴場があります。
菊の湯は大きな湯船が特徴で、壁には『山中温泉縁起絵巻』の一部が九谷焼タイルで模写されています。総湯の下には源泉も存在し、芭蕉が詠んだ句に因んで「菊の湯」と名付けられました。
また、共同浴場周辺には山中座や足湯もあり、山中座では様々な催し物が行われています。山中座は山中漆器の粋が配された豪華な蒔絵の格天井やロビーが特徴で、温泉街のシンボルとして人々を魅了しています。
山中温泉の開湯伝説
山中温泉はとても古い歴史を持っています。約1300年前に奈良時代の高僧・行基が見つけたと言われています。行基は木の切り株に薬師仏を刻み、祠を作って温泉を守るお守りにしました。多くの人々が山中温泉を訪れ、その温泉で病気や疲れを癒したと言われています。
山中温泉旅館の始まり
時は過ぎて、兵乱により荒廃していた平安時代の終わり頃。能登の地頭である長谷部信連は、一羽の白い鷺がけがをした足を小さな川で癒しているのを見つけました。
その場所を掘ると、約5寸(15cm)の大きさの薬師如来像が現れ、美しい温泉が湧き出しました。長谷部信連はそこに12軒の宿を建て、それが山中温泉旅館の始まりと伝えられています。
松尾芭蕉が滞在
さらに、時が経って元禄時代(約300年前)になります。有名な俳句の詩人である松尾芭蕉が旅をしていた途中で山中温泉を訪れました。松尾芭蕉は名湯に感動して8泊します。山中温泉を、有馬温泉や草津温泉と並ぶ「日本三名湯」と称え、
句「山中や 菊は手折らじ 湯の匂ひ」
という詩を書きました。
それから300年以上が経ちましたが、今でも山中温泉には湧き出る温泉と豊かな自然、そして日本の美しい文化や心が受け継がれているのです。
山に囲まれた温泉
山中温泉は自然が素晴らしい場所で、山々に囲まれ、渓流が流れている町です。美しい渓谷の景色を楽しむのも山中温泉の魅力の一つです。
山中を流れる大聖寺川沿いには、鶴仙渓遊歩道が整備されていて、黒谷橋からあやとりはしを経てこおろぎ橋まで散策できます。四季折々の色とりどりの自然を満喫することができますよ。
山でも食べられる海の幸
山中温泉は山間にありながら日本海に近い場所に位置していて、加賀・橋立漁港から新鮮な魚介類が届くんです。
冬にはズワイガニや香箱ガニ、ブリや甘エビなど、日本海の美味しい海の幸を楽しむことができるんです。
山中温泉のお湯
温泉は体の芯までじんわりと温まり、身体と心を癒してくれます。芭蕉もその素晴らしさを讃えて、山中温泉を日本三大名湯の一つと評価しました。開湯から1300年以上も経った今でも、古くからの温泉場「菊の湯」は多くの人に愛されています。
泉質はカルシウム・ナトリウム一硫酸塩泉で、温度は48.3度です。
この温泉は神経痛や筋肉痛、関節痛、五十肩、打ち身、慢性消化器病、痔病、冷え性、病後回復や疲労回復、健康増進、動脈硬化症、切り傷、やけど、慢性皮膚病、運動麻痺などに効果があると言われています。
また、飲泉も可能で、胆石や慢性便秘症、肥満、糖尿病、痛風などにも良いとされています。