独自の生態系を持ち、豊かな自然景観や植物、動物相が観察できる。
島の全体が山で八重岳と呼ばれる。別称は洋上アルプス。世界自然遺産に登録されている。
約2000年前に生まれたとされる世界遺産「屋久島の樹齢数千年の植物群落」に含まれる屋久杉が有名で、原生林の山岳美と澄んだ水の海岸が見られる。
島内には数多くの渓谷や滝、温泉があり、トレッキングやハイキング、カヌーやシュノーケリングなどのアウトドアアクティビティにも最適な場所として知られている。
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屋久島は独自の生態系を持ち、豊かな自然景観や植物、動物が観察できる場所です。
島全体が山地で、「八重岳」と呼ばれることがあります。そのため、屋久島は「洋上アルプス」という別称でも知られています。また、世界自然遺産にも登録されています。
屋久島には約2000年前に生まれたとされる樹齢数千年の植物群落があり、その中でも「屋久杉」が有名です。原生林の山岳美と澄んだ水の海岸が魅力の一つです。
島内には数多くの渓谷や滝、温泉があり、トレッキングやハイキング、カヌーやシュノーケリングなどのアウトドアアクティビティが楽しめます。
屋久島(やくしま)は、鹿児島県の大隅半島佐多岬南南西約60kmの海上に位置する島です。
熊毛郡屋久島町に属し、近隣の種子島や口永良部島などと共に大隅諸島を形成しています。また、南方に位置するトカラ列島や奄美群島などとともに南西諸島を構成しています。
九州最高峰の山、宮之浦岳(標高1936m)があり、自然が豊かで、屋久島国立公園の中核を成しています。この美しい自然環境のおかげで、屋久島は世界自然遺産にも登録されています。
概要
屋久島の面積は504.29 km²、周囲は130km(東西約28km、南北24km)です。島の形は円形に近い五角形をしており、淡路島よりやや小さいです。鹿児島県内では奄美大島に次ぐ大きさで、日本全体では本州など4島を除くと面積第9位となります。
屋久島は豊かな自然に恵まれ、島の90%が森林で覆われています。島の中央部には宮之浦岳(1936m)を含む屋久杉自生林や西部林道付近などがあり、これらの地域はユネスコの世界遺産に登録されています。登録面積は107.47 km²で、島の面積の約21%に相当します。世界遺産への登録は1993年で、日本からの第一陣の一つです。
電力供給
屋久島の電力供給は、屋久島電工が製錬所の自家発電のために建設した火力発電所と水力発電所からの電力を、安房電気利用組合、種子屋久農協、九州電力送配電、屋久島町の4事業者が分担して供給しています。島内では九州電力送配電が電力を供給していない世帯や事業者も存在します。通常、島内の電力は水力発電で賄われており、火力発電は緊急時にのみ使用されます。
屋久島はほぼ全域が山地で、1,000mから1,900m級の山々が連なり「八重岳」と呼ばれ、「洋上アルプス」の異名も持っています。中央部には九州地方最高峰の宮之浦岳 (1,936m) がそびえています。この中央部の高峰は「奥岳」と呼ばれ、永田岳を除き海岸部の人里からは見ることができません。宮之浦岳、永田岳および栗生岳は「屋久島三岳」とされ、山頂には一品宝珠大権現が祀られており、古来より嶽参りの対象とされています。しかし、『三國名勝図會』に記されている栗生嶽は現在の黒味岳に相当するという説もあります。海岸部に近い山々は「前岳」と呼ばれ、本富岳、国割岳および愛子岳などが含まれます。また、喜界カルデラを生んだ6,300年前の大噴火の際、屋久島は火砕流によって島の大部分が覆われたことがあります。
地質的には西南日本外帯の四万十帯に属し、島外周部は日向層群(旧称・熊毛層群)の第三紀堆積岩からなり、中央山岳部は直径約25kmの巨大な花崗岩が貫入しています。屋久島の高山は1550万年前にできた花崗岩がその後隆起して形成されました。激しい雨による侵食の結果として花崗岩塊が点在し、永田岳の山頂付近に見られるローソク岩のような岩塔が林立しています。一般に花崗岩は広い間隔で節理が発達するため巨大な岩塊が生まれます。島の北西-南東方向および、北東-南西方向に発達した渓谷や尾根筋も節理の方向に沿って侵食が進んだ結果です。
屋久島を流れる河川は放射状に広がり、その数は140にも及びます。主な河川は安房川、宮之浦川、永田川、栗生川の4つです。また急峻な山々と日本一を誇る雨量のため深い渓谷が刻まれ、河床は急勾配で滝が発達しています。大川の滝、千尋の滝などが良く知られ、宮之浦川には、屋久島最大の竜王滝(3段110m)があります。
屋久島町には、山ノ瀬と呼ばれる小島があります。国土地理院地図によると、陸繋した浜辺や海礁上の小岩、無名の岩を除いた地形が確認できます。
屋久島は海からの湿った風が山にぶつかり、大量の降雨をもたらします。このため「屋久島は月のうち、三十五日は雨」と表現されることがあります。年間降水量は平地で4,000~5,000mm程度、山地では8,000mm~12,000mmにも達します。気象庁の屋久島特別地域気象観測所の平年値4,651.7mm(1991-2020年)は、全国1位の降水量を誇ります(2位は宮崎県えびの高原アメダスの4,625.0mm)。
特に山間部の観測点では、淀川登山口で1999年に11,720mm、ヤクスギランドで2012年に11,130mm(平年値10,048mm)を記録しています。これは、世界最多とされるチェラプンジの平年値10,449.3mm(1971-2000年)に匹敵する降水量で、屋久島は世界屈指の多雨地帯といえます。
また山頂付近の年間平均気温は約6-7℃で、積雪が観測されることもあります(60cm以上の積雪を観測することがあり、3月の彼岸以降でも大雪や路面凍結、4月以降でも頂上付近ではまだ冠雪が見られます)。この豊富な流水や湧水により、1985年には宮之浦岳流水が名水百選に選ばれています。また、2007年には日本の地質百選にも選定されています。
屋久島は温帯最南部のほぼ亜熱帯に属する地域でありながら、2,000m近い山々があるため亜熱帯から亜寒帯に及ぶ多様な植物相が確認されています。
海岸付近の低地はアコウ、ガジュマルなど亜熱帯性の植物相です。このガジュマル林は日本最北端のものとされています。
やや内陸の標高約500mまではシイ、ウラジロガシなど暖帯林、約500mないし600mから1,000mないし1,200mはウラジロガシ、スギおよびイスノキなどの混合林で移行帯となりスギの人工林もあります。約1,000mから1,600mは屋久杉、ヤマグルマおよびモミなどの温帯林となります。約1,600m以上はササに覆われ、ヤクシマシャクナゲなどが点在し、高山的様相を呈します。本州や四国などで落葉広葉樹林帯に相当するブナ林はなく、代わりに屋久杉が分布しています。
島の中心部には、日本最南端の高層湿原である花之江河(はなのえごう)、小花之江河(こはなのえごう)が存在します。
コケ植物、シダ植物、双子葉植物、単子葉植物といった分類に多くのヤクシマの名を冠した植物が存在します。これらの植物は山野草や盆栽としての鑑賞価値が高いため、屋久島ものと呼んで珍重されることがあります。
野生哺乳類としては、ヤクザルやヤクシカ、コウベモグラ、ジネズミ、ヒメネズミ、コイタチ、コウモリ数種が生息しています。1990年代からは外来種のタヌキが観察されるようになり、定着したものと思われます。沖合は古来、様々な鯨類の回遊路にあたり、マッコウクジラやイルカ類が近海で見られ、2010年代からはザトウクジラの確認も増えています。
ヤクシカは杉の芽や希少植物を食害するため、捕獲して食肉として加工する屋久島ジビエ加工センターが整備されました。
爬虫類ではニホントカゲやマムシが知られ、日本本土とほぼ共通です。島北部の永田浜は世界有数のアカウミガメの産卵地であり、ラムサール条約登録湿地となっています。
主な動物は日本本土と共通、あるいは関係が深いものです。それに対して、南西諸島に見られるアマミノクロウサギやハブなど、南西諸島に独特のものは見られません。そのため、この島の南側に分布境界線として渡瀬線(渡瀬ライン)が認められます。
スギ(杉、Cryptomeria japonica)の屋久島に産し、樹齢が1000年を超えるものをヤクスギと呼びます。屋久島の自然環境に対応して抗菌性を持つ樹脂を多量に分泌し、極めて長寿になります。
ヤクスギ、モミ、ツガを主体とする温帯針葉樹林は屋久島の標高600m以上に分布します。600 - 1,200 mは低地を占める照葉樹林との移行帯であり、両方の要素が混交します。
抗菌性が強く耐久性があることが重視され、中世以降、建築材や造船材として開発されました。17世紀に薩摩藩によるヤクスギの伐採が本格化し、明治になるまでにヤクスギの良木のほとんどが伐採されました。現在は1000年程度の巨木や変形木をヤクスギ(屋久杉)とよび、二次林・三次林をつくる若いスギをコスギ(小杉)と呼びます。
明治以降、屋久島の山林の大半は国有林に編入され、大正から昭和にかけて二次林・三次林の伐採が進みました。現在、原生自然環境保全地域に含まれる小楊枝川流域、国立公園第一種特別地域に含まれる永田川流域、宮之浦川上流域、東部の安房川支流荒川左岸(ヤクスギランド)などがヤクスギの主要な群落として僅かに残されています。
屋久島最大の「縄文杉」はかつてその巨大さから推定樹齢6000年以上とされ、環境省(当時は環境庁)の環境週間ポスターで「7200歳です」と紹介されたことで全国的に有名になりました。現在では放射性炭素年代測定法で推定樹齢約2000年以上であることが確認されています。また、数本の大枝から葉をサンプリングして遺伝子分析解析を行った結果、同じ遺伝子の木であることが明らかになりました。
なお、現在までに確認された最古の木は「大王杉」で、やはり放射性炭素年代測定法で樹齢3000年以上とされています。
鹿児島港から船で240分