貴重な「五翼放射状平屋舎房」
博物館の中心的な建築物の一つが、五翼放射状平屋舎房です。5棟の舎房が中央の見張り所を中心に放射状に配置された特徴的な構造で、国内では唯一現存する貴重な木造監獄建築です。
1985年(昭和60年)10月10日に公開が始まったこの建物は、刑務所施設として国内最古級のものであり、木造の行刑建築として世界最古とされています。独特の構造そのものから、当時の監獄建築の特徴を知ることができます。
歴史的建造物をめぐる野外博物館
博物館 網走監獄では、舎房だけでなく、庁舎、教誨堂、農場施設、浴場、独居房、哨舎など、刑務所に関わるさまざまな建築物を見ることができます。
これらの建物の一部は実際の施設を移築・復原したもので、当時の刑務所の様子を具体的に感じられる点が大きな特徴です。
庁舎
1912年(明治45年)に建てられた庁舎を移築・復原した建物です。刑務所の管理や事務を担った施設として、当時の監獄行政の様子を伝えています。
教誨堂
1912年に建てられた教誨堂は、受刑者に対する精神的・宗教的な指導などが行われた施設です。現在は重要文化財に指定されています。
旧網走刑務所二見ヶ岡農場
刑務所の農場施設も移築・復原されています。受刑者が農作業に従事していた当時の様子を伝える重要な建築群で、庁舎、舎房、教誨堂及び食堂、鍵鎖附着所、炊場などが残されています。
独居房・浴場・哨舎
独居房や浴場、監視のための哨舎なども再現・移築されています。刑務所内での生活や施設の構造を具体的に知ることができ、当時の厳しい環境を感じさせる展示となっています。
重要文化財に指定された建築群
博物館 網走監獄に保存されている建築物の中には、国の重要文化財に指定されているものがあります。
2016年(平成28年)には、旧網走監獄の庁舎、舎房及び中央見張所、教誨堂の3棟と、旧網走刑務所二見ヶ岡刑務支所(二見ヶ岡農場)の5棟、合わせて8棟の建造物が重要文化財に指定されました。
こうした建築物は、北海道の開拓史だけでなく、日本の近代的な刑務所制度や建築史を伝える貴重な文化遺産となっています。
音と映像で学ぶ「監獄歴史館」
2010年(平成22年)には行刑資料館がリニューアルされ、「監獄歴史館」として生まれ変わりました。
音や映像を取り入れた参加体験型の展示によって、明治時代から現代に至るまでの監獄の歴史や、受刑者の生活、刑務作業などについて分かりやすく学ぶことができます。
明治時代から現代までの刑務所を比較
館内では、現在の網走刑務所の共同室や単独室を再現した展示も行われており、過去と現在の施設を比較しながら見学できます。
単に歴史的な建築物を見るだけではなく、制度や生活環境の変化についても知ることができるため、網走監獄の歴史をより深く理解できます。
当時の食事を再現した「体験監獄食」
博物館では、刑務所で実際に提供されていた食事を再現した「体験監獄食」を味わえることがあります。
旧網走刑務所二見ヶ岡農場食堂棟や監獄食堂では、現在の網走刑務所で収容者に提供されている食事のメニューを参考にした料理が提供されています。実際に味わった見学者からは、意外にもおいしいと評判です。
市民の保存活動から始まった博物館
博物館 網走監獄の誕生には、貴重な刑務所建築を残そうとした地域住民や関係機関の活動が深く関わっています。
1973年(昭和48年)、網走刑務所の改築計画が公表されると、歴史的な建築物が失われることを危惧した網走新聞社の社主・佐藤久が、建築物を移築して保存する構想を提唱しました。
この活動には網走市、北海道、法務省なども協力し、保存を実現するための財団法人が設立されました。建物の移築や復原には多額の費用が必要でしたが、関係者の努力によって博物館として保存されることになりました。
1983年に開館した歴史博物館
財団法人の設立認可を受けた後、1983年(昭和58年)に博物館 網走監獄が開館しました。1996年(平成8年)には登録博物館として認定され、その後も建築物の保存や展示施設の整備が進められてきました。
2005年(平成17年)には教誨堂、五翼放射状平屋舎房、二見ヶ岡農場が登録有形文化財となり、2016年には重要文化財に指定されています。
博物館 網走監獄の主な歩み
1973年(昭和48年)
網走刑務所の改築計画が公表され、歴史的建築物の保存活動が始まりました。
1980年(昭和55年)
財団法人の設立が認可されました。
1983年(昭和58年)
博物館 網走監獄が開館しました。
1996年(平成8年)
登録博物館として認定されました。
2005年(平成17年)
教誨堂、五翼放射状平屋舎房、二見ヶ岡農場が登録有形文化財となりました。
2010年(平成22年)
行刑資料館がリニューアルされ、監獄歴史館として公開されました。
2012年(平成24年)
網走監獄財団が公益財団法人へ移行し、庁舎など複数の建築物が登録有形文化財となりました。
2014年(平成26年)
鏡橋の架け替え工事が完了しました。また、「トリップアドバイザー」の「2014 TRAVELERS' CHOICE 人気の美術館・博物館トップ10-日本」で第10位に選ばれました。
2016年(平成28年)
旧網走監獄と旧網走刑務所二見ヶ岡刑務支所(二見ヶ岡農場)の計8棟が重要文化財に指定されました。
特徴的な建築物と復原施設
鏡橋
1891年(明治24年)に建築された橋をもとに、1994年(平成6年)に再現されたものです。全長約29m、幅約6mあります。
正門
1923年(大正13年)に建築された正門を、1983年(昭和58年)に再現したものです。全長約23.22mあります。
五翼放射状平屋舎房
1912年(明治45年)に建築された舎房を1985年(昭和60年)に移築・復原したもので、約3,333.72m²の規模があります。中央見張所から5方向に舎房が伸びる独特の構造が特徴です。
二見ヶ岡農場
1896年(明治29年)に建てられた施設を1999年(平成11年)に移築・復原したものです。受刑者による農作業の歴史を伝える重要な施設です。
監獄歴史館
1983年(昭和58年)に建築された施設で、現在は音や映像を活用した体験型展示を通して、監獄の歴史を紹介しています。
体験型の教育・文化活動
博物館 網走監獄では、歴史的建築物や資料を見るだけでなく、さまざまな教育普及活動も行われています。
季節の行事
端午の節句、七夕、十五夜など、季節に合わせた行事が開催されています。
体験講座
農園体験ワークショップなど、博物館の歴史や施設に関連した体験型の講座が行われています。
展覧会
収集資料展や写真展など、収蔵資料を活用した企画展示も開催されています。
イベント
二見湖畔神社の収穫祭や刑務作業製品の展示即売会など、網走監獄の歴史や文化に関連したイベントも行われています。
網走の歴史と文化を伝える場所
博物館 網走監獄は、単なる歴史博物館ではなく、北海道の開拓と網走の発展、そして近代日本の刑務所制度を伝える重要な文化施設です。
実際に使用されていた建物を移築・復原した展示や、受刑者の生活を紹介する資料、音や映像を用いた体験型展示などを通して、当時の社会や人々の暮らしを具体的に知ることができます。
歴史的建築物を一つひとつ巡りながら、網走という地域が歩んできた歴史に触れてみてはいかがでしょうか。