「地獄」という呼び名の歴史
別府では、古くから地中より熱湯や噴気が湧き出す場所が知られていました。地獄という呼び名については、1694年に貝原益軒が著した『豊国紀行』に記録されたものが、古い記録のひとつとされています。
かつて、熱湯や熱泥が噴き出す場所は、生活の場として利用しにくい、扱いの難しい場所でもありました。しかし、別府で温泉付きの別荘地などの開発が進むにつれて、独特な自然景観を観光資源として活用する動きが広がっていきます。
地獄めぐりの始まりとして知られるのが、1910年に海地獄で観覧施設が整備され、入場料を徴収するようになったことです。その後、昭和初期にかけて自動車による遊覧が盛んになり、新たな地獄の開発も進みました。
一方、開発が過度に進んだことで、泉源の湧出量が減少するなどの問題も生じ、新たな地獄の開発は1920年代には頭打ちになったとされています。現在の地獄めぐりは、こうした歴史を経て、別府を代表する観光文化として親しまれています。
日本初の女性バスガイドと地獄めぐりの発展
別府の地獄めぐりを語るうえで欠かせないのが、観光バスの歴史です。1928年に亀の井自動車、現在の亀の井バスが設立され、地獄めぐりの遊覧バスが運行されるようになりました。
このとき、全国に先駆けて女性バスガイドが採用され、観光案内を担当しました。ガイドによる七五調の案内は評判を呼び、観光客に別府の見どころを分かりやすく伝えるとともに、地獄めぐりの人気を高める役割を果たしました。
現在も、別府駅を起点とする定期観光バスを利用して地獄めぐりを楽しめます。元記事では、地獄を巡る所要時間は約2時間半と紹介されており、歴史ある観光案内の伝統も魅力のひとつです。運行内容や案内方法は変更される場合があるため、利用する際は最新の案内を確認するとよいでしょう。
別府地獄組合に加盟する7つの地獄
別府市内にはさまざまな地獄がありますが、地獄めぐりで知られる別府地獄組合に加盟しているのは、海地獄、鬼石坊主地獄、かまど地獄、鬼山地獄、白池地獄、血の池地獄、竜巻地獄の7か所です。
これらの地獄では、共通観覧券を利用して複数の施設を巡ることができます。元記事では、駐車場の無料利用や、定期観光バスで七五調のガイドを聞きながら見学できることも紹介されています。各地獄はそれぞれ異なる特徴を持っているため、色や形、熱水の噴出の様子などを比較しながら巡ると、より充実した観光になります。
海地獄:コバルトブルーに輝く神秘的な源泉
海地獄は、鮮やかなコバルトブルーの水面が印象的な地獄です。美しい色合いからは穏やかな池のようにも見えますが、湯温は約98度と非常に高く、立ち上る湯けむりからも温泉の強い熱気を感じられます。
元記事では、約1,200年前に鶴見岳の爆発によって誕生したと伝えられています。青く澄んだ水面と白い湯けむりの対比が美しく、別府の地獄を代表する景観のひとつです。
地獄に隣接する池では、温泉水を利用してオオオニバスが栽培されています。夏には大きく育った葉の上に子どもを乗せるイベントが開催されることもあり、源泉の見学とは異なる楽しみ方ができます。
また、海地獄では温泉卵が名物として知られ、足湯も楽しめます。熱湯が生み出す迫力ある景観を眺めた後、足湯でひと休みするのもおすすめです。海地獄は2009年に国の名勝に指定されており、自然景観としての価値も高く評価されています。
鬼石坊主地獄:坊主頭のように膨らむ熱泥
鬼石坊主地獄は、灰色の熱泥が次々と膨らみ、丸い形になっては崩れていく様子が特徴的な地獄です。その形が坊主頭に似ていることから、この名で呼ばれています。
泥が盛り上がり、表面が揺れながら再び沈んでいく光景は、ほかの地獄とは異なる独特の迫力があります。温泉の熱や地下の活動を視覚的に感じられるスポットです。
鬼石坊主地獄は2002年にリニューアルオープンし、別府地獄組合に加盟しました。元記事では、ナトリウム-塩化物泉の温泉を楽しめることも紹介されています。熱泥の観察と温泉入浴を組み合わせられる点が魅力です。
かまど地獄:異なる表情を持つ6つの地獄
かまど地獄は、複数の源泉を一度に楽しめる地獄です。元記事によると、かつては別の場所にありましたが、現在の場所へ移転しました。
名前の由来は、八幡竈門神社の大祭で、神前に供える御飯を地獄の噴気で炊いていたことにあるとされています。温泉の熱を日常の営みに利用してきた、地域の歴史を伝える名前です。
園内では、色や湯の状態が異なる6つの地獄を見学できます。ひとつの施設にいながら多様な源泉の姿を楽しめるため、地獄めぐりが初めての人にも見どころの多いスポットです。
また、漫画・アニメ作品『鬼滅の刃』との関連で、ファンが訪れる場所としても知られています。温泉の自然現象だけでなく、名前や地域文化、現代の作品をきっかけにした観光も楽しめます。
鬼山地獄:熱水の池とワニの飼育施設
鬼山地獄は、緑がかった白色の熱水をたたえる池と、広大なワニの飼育施設が特徴です。地獄の熱を利用してワニを飼育してきたことから、ワニ地獄とも呼ばれています。
元記事では、1923年からワニの飼育が始まり、約100頭が飼育されていると紹介されています。温泉の源泉を見学するだけでなく、ワニの姿や生態にも目を向けられるため、動物に関心のある人にも興味深いスポットです。
高温の源泉と動物飼育という、異なる要素が組み合わさっている点は、鬼山地獄ならではの特徴です。見学時には、飼育施設の案内や安全上の注意を守って楽しみましょう。
白池地獄:透明な湯が白く変化する不思議
白池地獄は、噴出したときには透明な温泉が、空気に触れることで白く濁って見える地獄です。温泉が地上に出た後に変化する様子を観察できる、科学的にも興味深いスポットです。
1931年に整備され、現在は熱帯魚館も併設されています。白く濁る温泉の景観と熱帯魚の展示を組み合わせて楽しめるのが特徴です。
白池地獄は2009年に国の名勝に指定されています。自然が生み出す色彩の変化を通して、温泉に含まれる成分や環境条件が景観に影響を与えることを感じられます。
血の池地獄:赤く染まる歴史ある地獄
血の池地獄は、池全体が赤みを帯びた色に染まる、別府を代表する地獄のひとつです。酸化鉄などを含む熱泥によって、独特の朱色の景観が生まれています。
その存在は『豊後国風土記』や『万葉集』にも記録されているとされ、古くから人々に知られてきた歴史ある地獄です。赤く染まった池と立ち上る湯けむりが織りなす景観は、初めて訪れる人にも強い印象を残します。
園内では足湯を楽しめるほか、オリジナルの土産物も販売されています。自然景観を見学するだけでなく、旅の記念となる品を探すこともできます。
血の池地獄も2009年に国の名勝に指定されています。長い歴史を持つ源泉と、独特の地質・温泉成分がつくり出す色彩をじっくり観察してみましょう。
竜巻地獄:一定の間隔で熱水が噴き上がる間欠泉
竜巻地獄は、地下から熱水が周期的に噴き上がる間欠泉です。元記事では、噴出の間隔は30~40分ほど、噴き上がる高さは約50メートルに達すると紹介されています。
ただし、噴出の高さや間隔は状況によって変わることがあります。見学時には、現地の案内に従って安全な場所から観察しましょう。
熱水が勢いよく噴き上がる様子は、地下に蓄えられた熱と圧力の大きさを感じさせます。観光客の安全を確保するため、噴出孔の上部には石造りの天井が設けられています。
竜巻地獄は2009年に国の名勝に指定されました。噴出のタイミングによって見学時間が左右されるため、訪問時には待ち時間も考慮して予定を立てるとよいでしょう。
組合加盟以外にもある個性豊かな地獄
山地獄
山地獄は、岩山の山裾付近から水蒸気が吹き上がる地獄です。岩肌から立ち上る噴気が、地下の熱活動を感じさせます。
園内にはミニ動物園が併設され、カピバラやフラミンゴなどの動物が飼育されています。温泉の景観と動物の観察を組み合わせて楽しめるのが特徴です。
坊主地獄
坊主地獄は、90度を超える高温の泥が煮えたぎる地獄です。熱泥が盛り上がる様子は、地下から湧き出す自然の力を感じさせます。
元記事では、かつて延内寺という寺院があった場所とされ、1498年の日向灘地震の際に爆発が発生し、地面が裂けて熱泥が噴出したと伝えられています。地震と温泉活動が土地の歴史に影響を与えた場所としても興味深いスポットです。
金竜地獄と地獄温泉ミュージアム
金竜地獄は、別府の地獄の中でも特に多量の温泉が湧き出す場所として紹介されています。昭和7年には園地が整備され、多数の仏像や植物園などが設けられていました。
元記事によると、金竜地獄は2009年から営業を休止していましたが、2022年には地獄温泉ミュージアムとしてリニューアルオープンしました。温泉が生まれる仕組みや、別府の温泉文化について理解を深める機会として、関連施設の情報も確認しながら訪れるとよいでしょう。
明礬地獄
明礬地獄は、明礬温泉にある地獄で、岡本屋の近くに整備されています。この地域では、江戸時代から温泉の噴気などを利用した「湯の花」の生産が続けられてきました。
湯の花は、温泉由来の成分を結晶化させたもので、明礬地域の伝統産業を象徴する存在です。その生産技術は国の重要無形民俗文化財に指定されています。地獄の景観とともに、温泉資源を活用してきた地域の知恵や伝統に触れられます。
乙原地獄(観音地獄)
乙原地獄は、遊園地ラクテンチの敷地内にある地獄です。かつて観音像が安置されていたことから、観音地獄という名でも知られています。
元記事では、現在も遊覧客が自由に見学できる場所として紹介されています。周辺施設を訪れる際には、利用可能な区域や見学条件を現地で確認するとよいでしょう。
別府地獄めぐりを楽しむために
別府地獄めぐりでは、青い海地獄、赤い血の池地獄、白く濁る白池地獄、熱泥が盛り上がる鬼石坊主地獄、熱水が噴き上がる竜巻地獄など、源泉ごとの違いを比較しながら巡ることができます。
7つの組合加盟地獄を巡る場合は、共通観覧券や定期観光バスの利用を検討すると効率的です。各施設を個別に訪れる場合は、地獄同士の距離や移動時間を考慮して計画を立てましょう。
地獄の熱湯や噴気は非常に高温です。立ち入り禁止区域には入らず、柵や案内表示を守って見学してください。自然が生み出す色彩や熱気、噴出の音を感じながら巡れば、別府の温泉文化と大地の力をより深く体感できます。