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松本城

(まつもとじょう)

国宝・五重天守の漆黒の城

松本城の歴史と特徴

松本城の起源

松本城は、戦国時代の永正年間(1504-1520年)に造られた深志城がその始まりです。現存する天守は国宝に指定されており、城跡は国の史跡としても認められています。日本に現存する12天守のうち、国宝に指定されているのは松本城を含む5城のみであり、他には姫路城、犬山城、彦根城、松江城が含まれます。松本城と姫路城の天守は、五重天守として特に有名です。

外観と建築様式

松本城の外壁は、初重から最上重まで黒漆塗りの下見板で覆われており、その黒と白のコントラストが背景に広がるアルプスの山々と見事に調和しています。松本城は、現存する12天守の中で唯一平地に築かれた城(平城)であり、本丸、二の丸、三の丸がほぼ方形に整地されている点が特徴です。

天守の構造

松本城の天守は、5重6階の大天守を中心に、大天守の北面には乾小天守が接続され、東面には辰巳附櫓(たつみつけやぐら)と月見櫓(つきみやぐら)が連結された複合連結式の天守です。これらの櫓は江戸時代に増築され、赤い欄干が配された風雅な雰囲気を持つのが特徴です。

松本城公園と四季折々の風景

松本城公園の整備

松本城の周囲には、本丸庭園を含む都市公園が整備されており、年間を通じてさまざまなイベントが開催されています。公園内では四季折々の美しい風景を楽しむことができ、春には満開の桜、初夏には藤の花が咲き誇り、夏には涼しげな濠の風景、秋には紅葉、そして冬には雪に覆われた北アルプスの峰々とともに、豊かな自然を堪能することができます。

松本城の別名「烏城(からすじょう)」について

烏城という呼称の起源

松本城は別名「烏城(からすじょう)」と呼ばれることがありますが、この呼称については議論があります。松本市教育委員会松本城管理事務所は、「烏城」という表現は歴史的な文献には見られないとしており、この呼称は誤りであるという見解を示しています。

一方で、地名辞典『日本歴史地名大系』や学習参考書『長野の地理ものがたり』には「烏城」という表記が見られ、市川健夫の著書にも「壁を黒く塗ってあるので、烏城とも…」との記述があります。1966年に発行された書籍『信州の歴史と旅―人と旧跡―』に烏城という表現が初出として見られ、この呼称は姫路城の「白鷺城」との対比で用いられた可能性があるとされています。

烏城の今後

烏城という呼称について、今後も全国の城を巡る旅行者や地元の人々の間で残り、継承されていくであろうという見解が示されています。松本城が「烏城」と呼ばれるかどうかは議論が続くものの、その名称がもたらす独特の魅力は今後も注目されることでしょう。

松本城の天守とその構造

天守群の構成

松本城の天守群は、大天守(だいてんしゅ)・乾小天守(いぬいこてんしゅ)・渡櫓(わたりやぐら)・辰巳附櫓(たつみつけやぐら)・月見櫓(つきみやぐら)の五棟で形成されています。これらの天守群は、昭和4年(1929年)に制定された「国宝保存法」により、昭和11年(1936年)4月20日に国宝に指定されました。戦後、昭和25年(1950年)に制定された「文化財保護法」により、昭和27年3月29日に再び国宝に指定されました。

天守の特徴と歴史

松本城は標高590メートルの盆地内平地に位置しており、現存する12天守の中で唯一の平城です。城郭は三重の水堀と土塁・石垣で囲まれ、出入り口や城門が備えられています。三の丸内には武士が居住し、防備を固めていました。

松本城の天守は、五重六階の構造を持つ日本最古の天守であり、大天守と乾小天守、その両者をつなぐ渡櫓は戦国時代末期に築造されました。これらの建築物は、豊臣秀吉の家臣である石川数正・康長父子によって文禄2~3年(1593~4)にかけて築造されたとされています。松本城は、戦国時代末期において、関東の徳川家康を監視するための城として、甲府城・高島城・上田城・小諸城・沼田城とともに秀吉側の城主が配置されました。

戦国と平和の象徴

松本城の天守群は、戦国時代と江戸時代の異なる時代にわたって築造されたものです。戦国時代末期に築造された大天守・乾小天守・渡櫓は、戦いを想定した鉄砲狭間や石落などの防御機能が充実していましたが、江戸時代初期に建てられた辰巳附櫓・月見櫓は、平和な時代を象徴する優雅な櫓として設計されています。このように、異なる時代に築造された天守・櫓が複合されている点が、松本城の歴史的な特徴の一つです。

松本城の構造と技術

軟弱地盤への対応

松本城は、女鳥羽川や薄川によって形成された扇状地の端に位置しています。天守の地盤は柔らかく、その上に1,000トンの重量を持つ大天守を築造するために、先人たちは独自の建築技術を駆使しました。16本の土台支持柱が天守台石垣内部に埋め込まれ、天守の重さを均等に地面に伝える役割を果たしています。

石垣の技術

松本城の石垣は、「野面積み」と呼ばれる未加工の自然石を使用した石垣が特徴です。また、天守台四隅には「算木積み」という、長短の石を交互に積み上げる技法が用いられています。これにより、角が整えられ、石垣全体の安定性が高められています。

滴水瓦と捨て瓦の工夫

松本城の屋根には「滴水瓦」と呼ばれる雨水が流れやすい形状の瓦が使用されており、これにより雨水の排水がスムーズに行われます。また、昭和の大修理の際には「捨て瓦」が導入され、上階から落ちる雪や氷による瓦の損傷を防ぐ工夫が施されています。

まとめ

松本城は、その歴史と技術の結晶であり、日本の城郭建築の中でも特異な存在です。戦国時代の防御機能と江戸時代の平和の象徴が見事に融合した天守群や、軟弱地盤への対応としての建築技術は、先人たちの知恵と工夫を今に伝えています。松本城は、歴史的な価値と美しい景観を持ち、訪れる人々に多くの感動を与え続けています。

Information

名称
松本城
(まつもとじょう)
Matsumoto Castle
リンク
公式サイト
住所
長野県松本市丸の内4番1号
電話番号
0263-32-2902
営業時間

8:30~17:00(最終入場は16:30まで)

定休日

年末(12月29日から31日)

料金

天守と本丸庭園
大人 700円
小人 300円

駐車場

普通車110台 大型車24台

アクセス

JR篠ノ井線・大糸線、アルピコ交通上高地線 松本駅(東口(お城口))から徒歩で約20分

JR大糸線 北松本駅(東口(お城口))から徒歩で約7分

バス:
松本駅バス停から、松本電鉄バスタウンスニーカー北コースで約10分、「松本城黒門」バス停下車

松本バスターミナルから、松本電鉄バス浅間温泉行きなどで約10分、「大名町」バス停下車

自動車:
松本インターチェンジから車で15分

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