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筑波山

(つくばさん)

西の富士、東の筑波

筑波山はその美しい姿から富士山と対比され、「西の富士、東の筑波」と称されています。古くから万葉集にも詠まれた名山であり、日本百名山や日本百景の一つにも数えられています。「紫峰(しほう)」や筑波嶺(つくばね)とも言われ、茨城県のシンボルの一つです。

筑波山は百名山の中で最も標高が低く、標高1000m未満の山としては開聞岳(標高924m)と並びます。 筑波山は筑波山神社の境内地で、西側の男体山(標高871メートル)と東側の女体山(標高877メートル)の二つの峰があり、どちらも展望が良好です。

筑波山神社からケーブルカーで8分乗車後、徒歩15分で男体山の山頂に到達します。また、つつじヶ丘からロープウェイで6分乗車後、徒歩15分で女体山の山頂に行くことができます。

筑波山神社

筑波山は石岡市および桜川市にもまたがっています。男体山・女体山山頂には筑波山神社の本殿があり、山腹には拝殿があります。『常陸国風土記』には筑波山の神が登場し、山中には多くの伝説を生んだ巨石や奇石が散在しています。これらは信仰の対象となり、現在でも「霊山」であり山の万物が「神体」とされ、山そのものが「神域」として崇められています。また、筑波山神社境内社や随神門など、県や市の指定文化財も多数存在します。坂東三十三観音25番札所の筑波山大御堂(中禅寺)が隣接しています。

富士山の景観と地質百選

筑波山からは富士山の美しい景観が眺められ、2005年には関東の富士見百景に選定されました。また、2007年には日本の地質百選にも選定されています。

筑波山は、火山と誤解されることもありますが、実際には火山ではなく、隆起した深成岩(花崗岩)が風雨で削られて形成されたものです。山頂部分は斑れい岩からなります。山中には多くの巨石、奇石、名石が散在し、それぞれに名前がつけられ、多くの伝説を生んでいます。

古典にみる筑波山

歌垣と『万葉集』

筑波山は古来より農閑期の行事として大規模な歌垣(かがい)が行われ、近隣から多くの男女が集まって歌を交わし、舞い、踊り、性交を楽しむ習慣がありました。これは豊穣を祝う行事でした。

『常陸国風土記』には、神祖尊が富士山と筑波山を訪ねた際のエピソードがあり、富士山では宿を断られたが、筑波山では快く宿を提供されました。このため、富士山はいつも雪に覆われて登る人もなく、筑波山は昼も夜も人が集まり歌い飲食をするようになったとされています。

『万葉集』の歌

『万葉集』第9巻1759番に収録された高橋虫麻呂の歌には、筑波山の歌垣への期待で興奮する気持ちが詠まれています。このように、『万葉集』には筑波山が頻繁に詠まれており、常陸国の地名歌の数が上位に含まれます。

ミカン栽培

標高140メートル付近では、ウンシュウミカンやナツミカンに加え、「筑波みかん」または「福来みかん(ふくれみかん)」と呼ばれる在来種の小型みかんが栽培されています。福来みかんは果皮が薄く、種子が大きい特徴があります。

このみかんは、唯一の日本原産のミカン科橘の一種と考えられており、『常陸風土記』にもその記載が見られるなど、古くから自生してきました。

冬季の寒さが厳しい山腹でのミカン栽培を可能にしているのは、山の中腹に存在する「斜面温暖帯(Thermal belt)」です。筑波山の標高170 - 270メートル付近には山麓より気温が3 - 4度高い斜面温暖帯が分布し、これによりミカン栽培の条件がかろうじて満たされます。1980年代頃には観光ミカン園も出現しました。

日本で斜面温暖帯を農業に利用する他の例として、静岡県の茶栽培があります。

ケーブルカー・ロープウェイ

筑波山には、筑波観光鉄道によるケーブルカーとロープウェイが運行されています。これらを利用して中腹から山頂付近まで登ることができます。また、いくつかの登山道が整備されているので、麓から歩いて登頂することも可能です。オリエンテーリングのパーマネントコースも整備されており、行楽客が多く訪れます。特にゴールデンウイークや秋の紅葉シーズンには交通渋滞が深刻なため、「筑波山周辺渋滞対策協議会」が設けられています。

ケーブルカー
筑波山神社拝殿横の宮脇駅から男体山山頂近くの御幸ヶ原まで、筑波山ケーブルカーが運行されています。宮脇駅は「筑波山神社入口」バス停から徒歩でアクセスできますが、宮脇駅に近い「筑波山神社前」への一般路線バス乗り入れが廃止されたため、バス停とケーブルカー駅の間の距離は廃止前より200メートルほど長くなりました。移動には約20分を要し、途中には土産物店やそば店、神社拝殿があります。

ロープウェイ
つつじヶ丘レストハウスに併設されたつつじヶ丘駅から女体山山頂まで、筑波山ロープウェイが運行されています。つつじヶ丘駅は「つつじヶ丘」バス停の前にあります。

筑波山梅林

筑波山の麓にある筑波山梅林(つくばさんばいりん)は、茨城県つくば市が運営する梅林です。標高200 - 270メートル付近に位置し、白梅や紅梅など約30種類、約1,000本(白梅800本・紅梅200本)の梅が4.5ヘクタールの園内に植えられています。早咲きのものは1月下旬から見頃となり、最盛期には筑波山の巨岩と満開の梅が独特の風景を作り出します。好天時には富士山や東京スカイツリーも望めます。

梅林の梅の特徴として、幹の表面に生息するウメノキゴケなどの地衣類と低い枝振りがあります。つくば市は毎年11月から1月に枝を剪定しており、剪定された枝は細かくして木の根元に撒いて再利用しています。梅まつり期間中は、梅林で収穫した梅を梅酒や梅干しなどに加工して販売しています。

筑波山梅林は標高250メートル付近にあり、白梅や紅梅など約30種類、1,000本ほどの梅が約4.5ヘクタールの園内に植えられています。木道やあずまやも整備されており、最盛期には筑波石の巨岩と満開の梅が独特の風景を作り出します。また、好天時には富士山や東京の高層ビルを望めます。

毎年2月中旬から3月中旬に開催される「筑波山梅まつり」では、ガマの油売り口上、甘酒・梅茶のサービス、茶会などが催されます。

登山

人気の高い山

日本経済新聞がYAMAPを使用して集計した「2023年に登頂回数が多かった山」ランキングでは、女体山が全国5位、男体山が全国12位を記録するなど、筑波山は登山者に非常に人気の高い山です。山頂方面へは7つの登山コースが指定されており、いずれも岩場や急勾配の箇所があります。遭難防止や自然保護の観点から、指定登山道以外への立ち入りは市、県、地権者、警察署等の協議により原則として禁止されています。

御幸ヶ原コース

筑波山神社の西側からケーブルカーの筑波山頂駅までほぼ直登するコースで、高低差があり勾配はやや急です。途中でケーブルカーのすれ違いが見られることがあります。所要時間は登り90分、下り60分で、距離は約2.5km、標高差は約610mです。

白雲橋コース

筑波山神社の東側から女体山側へ登るコースで、登山道入り口前にある白雲橋からは土木学会選奨土木遺産に認定された筑波山千寺川砂防堰堤群が見られます。山頂近くでは「弁慶の七戻り」「高天原」「胎内くぐり」「出船入船」などの奇岩、巨岩が見られます。急勾配や岩場もやや多いです。所要時間は登り110分、下り95分で、距離は約2.8km、標高差は約610mです。

迎場コース

つつじヶ丘から白雲橋コースの麓近く、酒迎場分岐まで行くコースで、岩場が少なく、標高差もそれほどない比較的楽なコースです。所要時間は登り40分、下り35分で、距離は約1.6km、標高差は約190mです。

おたつ石コース

つつじヶ丘から尾根伝いに登り、白雲橋コースと弁慶茶屋で合流する短いコースで、筑波山ロープウェイのルートに沿っており、木々の間からゴンドラが見えます。つつじヶ丘側は木が少なく見晴らしが良いです。所要時間は登り40分、下り35分で、距離は約1.0km、標高差は約200mです。

深峰遊歩道

「ユースホステルコース」とも呼ばれ、中腹にあった筑波山ユースホステルは廃業して解体されましたが、森林管理署図版では「旧ユースホステルコース」とも記載されています。関東ふれあいの道の茨城県コースNo.10「筑波山頂めぐりの道」の一部でもあります。登山道は整備されていて幅も広く、登りやすいです。所要時間は登り40分、下り35分で、距離は約1.2kmです。

薬王院コース

西側の薬王院と男体山の自然研究路をつなぐ長いコースで、途中にはつづら折りの階段があります。距離は約2.5kmです。

キャンプ場・女体山コース

北側の筑波高原キャンプ場から女体山へ登るコースで、利用者が少なく、道が一部整備されていない箇所があります。

山頂付近

御幸ヶ原
男体山と女体山の間の男体山寄りにある開けた場所で、ケーブルカーの筑波山頂駅があります。駅の横にはレストラン・展望施設のコマ展望台があり、売店や食堂も並んでいます。登山道の御幸ヶ原コースの終点でもあります。

山頂連絡路
男体山頂から御幸ヶ原を経て女体山頂までの登山道で、御幸ヶ原からは男体山側へ登るほうが距離が短いですが、やや急になっています。御幸ヶ原から女体山方面へ向かうと、カタクリ群生地やせきれい茶屋、ガマ石を経てロープウェイの女体山駅のすぐ上を通り、女体山頂へつながっています。所要時間は御幸ヶ原から男体山頂・女体山頂までどちらも15分で、距離は御幸ヶ原 - 男体山頂が300m、御幸ヶ原 - 女体山頂が550mです。

自然研究路
御幸ヶ原からスタートして男体山頂を見ながら一周するように設けられています。途中の展望台では関東平野が一望でき、多少の標高差があります。所要時間は60分、距離は約1.5km、標高差は約70mです。

筑波山温泉

筑波山の標高約300メートルの中腹には、6軒の温泉宿泊施設と温泉を引かない宿泊施設が1軒存在します。

Information

名称
筑波山
(つくばさん)
Mt. Tsukuba
リンク
公式サイト
住所
茨城県つくば市(八郷町・桜川市)
電話番号
029-869-8333
アクセス

TXつくば駅つくばセンターから筑波山シャトルバスで40分 *筑波山神社下車
TXつくば駅つくばセンターから筑波山シャトルバスで50分 *つつじヶ丘下車

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